第20話 巨大廃墟
その後も数度小型の機械獣と遭遇しただけでその日の夕方に最初の野営地となるD4地区とD5地区との境目あたりにある廃墟についた。そこは高い建物はなく瓦礫が積まれている場所でここなら装甲車のレーダーでもフルレンジで探索が可能だ。
装甲車を瓦礫の壁に隠す様にして止めると全員が装甲車の後部に移動してきて各自で食事を取る。
「D4地区を走っている時に大型機械獣と会わなかったのはラッキーだったな」
「今日だけだろう。明日からは忙しくなりそうだぜ」
リンドウがランディに答えるとそうだろうなと言いながら水を飲むランディ。酒好きとはいえ流石にミッション中にも飲むほど間抜けではない。
食事を終えると交代で睡眠を取る。最初の見張りはリンドウとランディ。2人は雑談をしながらもレーダー画面を見ていて周囲を警戒している。
「外で見張りをしなくていいだけマシか」
「そうだな」
そうして途中でエリンとルリに交代して2人は車の中で仮眠を取った。
翌日朝食事を終えたメンバーは昨日と同じポジションに座ると廃墟からD5地区に車を入れる。時速40Km程度で地図をみながら巡回する様にD5地区を左右に走りそして前進するとまた左右に走りながら探索を進めていく。
「廃墟の数が多いわね」
廃墟があるとリンドウが車の屋根に上がって警戒しながら近づいていき1つ1つチェックしていく。エリンは地図にマッピングをしながら適宜都市と交信して状況を報告する。
いくつか目かの廃墟をチェックして何もないのを確認し次に行こうとした時、装甲車の屋根の上で周囲を哨戒していたリンドウの視界のずっと先でキラっと光ったのが見えた。
『右2時の方向の先で何かが光った。機械獣かもしれない』
『レーダーには写ってないわ』
『エリン、この廃墟で戦闘した方がいいだろう』
『OKよ。ここで迎え撃ちしましょう』
リンドウの報告を全く疑っていない他のメンバー。直ちに装甲車の中で戦闘準備に入る。
リンドウは天井から車内に降りてロングレンジライフルのケースを持つと再び装甲車屋根の上に上がってそこで銃を組み立てる。そしてバイポッドを屋根の上にセットして射撃準備を整えた。
『敵発見。大型機械獣3体、小型もいるわ4体、いや5体ね。距離4,000メートル』
リンドウ以外の全員が車から降りると廃墟の壁に近づいて銃を構える。
『小型は任せるぞ』
『もちろん』
『任せろ』
ルリとランディから同時に返事がくる。
スナイパー銃を覗くリンドウ。ゴーグルのスクリーンに敵の距離が表示される
『足が早いタイプだな』
じっとスコープを覗いていたリンドウ。敵との距離3,200メートルで屋根の上から1発目を発射、数秒後大型機械獣の1体の頭部が爆発して動きを止める。続けて2発目、3発目と発射したリンドウ。全ての大型機械獣を倒した時には敵との距離はまだ2,000メートル以上あった。
『あとはよろしく』
そう言うとロングレンジライフルを置いて狙撃銃に持ち替えたリンドウ。
小型の機械獣が5体疾走して近づいてきた。1,000メートルになったところで壁に隠れていた3人の銃が火を噴いてあっという間に3体倒し、続けて2体の身体が砕け散った。
「遠距離砲があると楽ね」
ルリが車に戻ってくるなり言うとランディも頷きながら車のエンジンをかけて倒した小型獣の方に車を向ける。
「それにしてもレーダーレンジの外のを見つけてくるなんて流石ね」
エリンが車内に装備されているレーダースクリーンから視線を上げずに声をかけてくる。
「太陽に反射して金属が光ったのが見えたからな」
小型機械獣に近づくとリンドウを屋根に立てて車から降りるとその残骸をチェックする3人。
「見て!武器よ、これ」
エリンが見ていた小型機械獣の下には確かに武器が装備されていた。その武器を取り外して車に持ちこむとエリンは早速その武器を調べ始める。
「連射できるタイプじゃないわ。銃弾も10発しか入ってない」
端末でその武器を撮るとハンター支部に送信する。すぐにツバキから連絡が入ってきた。
『画像を見たわ。武器を装備していたのは1体だけ?』
『小型機械獣5体の内1体のみ、装填されていたのは10発、装備場所は胴体の下部分。ただし銃は発射されていない。発射前にこちらの攻撃で倒したから。これから大型機械獣が倒れている場所に向かいます』
『了解。また報告して』
大型機械獣は200メートル程の間隔をおいて3体が荒野の上で倒れていた。結局大型にはどれも武器は装着されてなかった。エリンがその内容を支部に報告する。
装甲車が再び事前に決めたルートで巡回、探索を開始すると車の中でルリが、
「どうして大型には武器を装着してないのかしら」
「俺にはわからないぜ」
運転しながらランディがすぐに言う。エリンはリンドウの顔を見る。
「俺の推測だが、おそらく大型機械獣の通常攻撃の方が攻撃力が高いからだろう。小型の機械獣、特に足の早い奴は人間に飛びかかっていくだけの戦法だ。俺達で言うところの突撃銃の様なモノなんじゃないか?」
「なるほど」
「あくまで俺個人の推測だ。それに今のところは銃を装備していても脅威にはならないが、その内に威力のある銃を作れる様になると小型のみならず大型にも装着されるだろうな」
「物騒な話だぜ」
ランディ。
「ああ、全く物騒だ」
その後は戦闘もなく廃墟に車を止めて野営する一行。その後もD5地区をゆっくりと巡回しながら廃墟をチェックし時には機械獣と戦闘をしながらもほぼ予定通りに日程を消化していった。
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