会敵32 バーにて補給
「レオ、ねえ? 聞いてる?」
「あ? ああ」
聞いていない。すまん全く聞いていなかった。クロエの事だ。あいつは何者なんだ?そんな思いばかりが俺の思考を支配して目の前の腹ペコゆるふわ金髪の話など全く入ってこなかった。
「もう、聞いてよ」
ミアがある程度、補給が進んだんだろう。次第に息を吹き返してきている。
いつものバーで夕食中なのだが、
「なんだ? ミア」
俺が怪訝な顔で聞いたのだと思うが、やっとかみ合った会話に少し拗ねながらミアが、
「クロエの事よ」
「もっと早く言えよ」
「言ってたよ。聞いてなかったのはレオじゃない」
「何だよ?」
俺は途中をすっ飛ばして答えを求めたので、はぁ?とキレかげんのミアは、
「クロエの着替え見たんだけど」
「あっちの方が胸が大きいとかいうのなら知っている」
「死にたいの? ナイフか? 12.7mmか選べ。どっちも急所を一撃する。これまでのお礼よ。苦しませないわ」
キレかげんに火を注いだ俺が悪かったが、でも、その言い方……
「最後だよ。ホントに。ちゃんと聞かなきゃ、もう話さない。どうする?」
マジ顔で俺に詰め寄ってきたので、
「すまない、頼む」
決め顔で答えた。
一つ舌打ちした俺を睨むミアが、
「身体に酷い傷の痕があったの……青あざ見たくなっていたり……」
「拷問か?」
「普通じゃないよ、普通にしてたら全身に傷なんてつかないでしょ? それが、身体の前も後ろもよ……」
ミアは詳細な内容を言うか言わないか迷いながら話をついでいる。
「普通じゃないわ」
普通を強調することで、異常な事だとでも言いたのだろう。
「ミアどうした?」
普段、目にしないミアの憤ったような暗い瞳の様子から、俺は、ミアに説明を求めたのだ。
「……いいよ、知らなくて。女の子の事だから、聞かないで」
強張った表情から、それ以上の会話を継げなかった。
俺はバーの天井から下がるランプと電灯が織りなす照明の揺れ具合を見ながら出るはずも無いクロエについて思いを馳せていた。
「それとね……レオ」
ミアが何か言いかけた。しかし、
「……
そいつは突然、俺の後ろに立った。
食べる事に夢中だったミアが、いつの間にかハンドガンを抜いて狙いを定めている。
俺達は必ず正対して椅子に座る。俺の目は残念ながら真後ろを見ることが出来ない。だから、その死角をおれはミアに預けている。逆もそうだ。しかし、自国領内のホームではあまり、ここまでの警戒をする事は無いのだが、ミアは今夜に限って何故かハンドガンをテーブルの下にテープでホルスターごと貼り付けていた。
そして、それは正解だった。
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