第621話 誰だ ブリジア視点
「わ」
「おつかれ」
落ちてきたシャイナを受け止めたのはエリーラの操作する水だった。バハムートにぶつけた時とは違い、柔らかくした水はシャイナを何度もバウンドさせて優しく受け止めた。
「無茶し過ぎよ。でも、良くやったわ」
「でしょ。ありがと」
エリーラはそう言いながらエリクサーをシャイナに飲ませた。すると、布のようにぷらぷらしていたシャイナの両腕が元に戻った。
こうして、妾達は犠牲者を出すことなく、バハムートを討ち取ることができた。しかし、まだ役割が全て終わった訳では無い。
「ヒュドラはどうなったのじゃ?」
まだヒュドラがどうなったかが分かっていない。だからまずはそれを確認しなければならない。
「ヒュドラはもう終わっているわ。バハムートが終わるまで待っていたのよ」
「女王…」
エリーラが女王と呼ぶエルフがヒュドラの首を数十本浮かべながら歩いてきた。その斜め後ろに他のエルフも居て、さらに後ろには魔人の側近達が揃っている。どうやら、ヒュドラでも犠牲者を残さず終わったようだ。
詳しく聞くと、毒に気をつければそこまで大変な相手ではなかったそうだ。
「これからどうするんだ?」
全員が揃ったタイミングでベクアが全員に向けてそう言った。確かに妾達の役割は終わった。しかし、まだゼロスやソフィアがどうなったかは分かっていない。
「誰も何も言わないから俺から提案だ。俺はこの場にソフィアかゼロスが来るまで待機しているべきだと思うぜ」
誰も話さないので、言い出しっぺであるベクアがそう言った。
「何を言っているのよ?手伝いに行った方がいいじゃない」
ベクアの発言に反発したのはエルフの女王だった。
「ゼロとソフィが戦っている相手は今苦労してやっと倒したバハムートよりも強い。そんな相手に1人で戦っているゼロとソフィのところに行って足でまとい以外の何ができる?」
「くっ…」
そんな女王の反論を行ったのはシャイナだった。
「まず、バラバラになるのは論外。とはいえ、かなり消耗している私達が手助けもできない。だったらゼロとソフィを信じてこの場で纏まって居た方がいい」
そして、シャイナは続けてそう言った。確かに、正直妾達はバハムートを相手にかなり疲れてしまっている。こんな調子でバハムートよりも強いその魔族やイムと戦えるかと言ったら無理だろう。
「そうだとしても私1人は行かせてもらう」
全員がシャイナに納得している雰囲気だったのをぶち壊す発言をしてのはリュウだった。
「そもそも今回は私の元仲間であるイムの起こした事だ。それを自分では無理だとしても解決する瞬間くらいにはその場で立ち会わないといけない。足でまといだとしてもそもそも私は敵なのだから死んでも問題ない」
「言ってることは正しいけど、もしその場に来て危険な目にあったらゼロスは助けようとすると思うわよ?まあ、ソフィアはそんな事しないだろうけど」
エリーラの言った通り、確かにゼロスなら敵であったリュウだろうと助けてしまうような気がする。
「それにそう言っておきながらそっと逃げる可能性を私達は無くせないのよ」
「そんな事…いや、私がそう言っても信じられるわけが無いな」
エリーラの言ったことをリュウは否定しようとしたが、元々敵なので何を言っても説得力がないと諦めたようだ。
「っ!?」
「っ!」
話が堂々巡りでなかなか進まない中、リュウとシャイナが急に飛び退いた。さらに、リュウは拳を握り、シャイナは鎌を握った。
「「「「っ!?」」」」
それに遅れて妾とドレリアとベクアとエリーラが同じ反応をし、それにさらに遅れて他のものも反応した。
「誰だ!?」
リュウがそう言ったタイミングで木々の隙間から闇が現れた。それは光を全く反射していない少し縦長の漆黒の塊で、少しずつ近付いてきているが、生き物かどうかすら分からない。見ているだけで思わず寒気と共に全身が震えてしまうほどの未知の恐怖を感じている。ほんの少しでも余計な動きをすれば即座に殺されるという考えが頭の中をぐるぐる回って身動きすらできない。
「「……」」
「「「「「っ!?!」」」」」
その塊の上部分の1部が消え、その塊から顔が見えると、シャイナとリュウを除いた妾達は驚き過ぎて言葉がでなかった。
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