第497話 強大な魔物の正体
「ソフィ!今の聞こえたよね!?」
「はい!」
俺が部屋を飛び出ると、廊下には既にソフィも居た。ソフィも俺と同じく、サイレンとアナウンスを聞いて起きたようだった。
「どうする?」
「状況確認のためにもまずは指示通り冒険者ギルドに行きましょう」
「そうだね」
まだアナウンスを聞いただけなので、詳しい状況が分かっていない。だから指示通り冒険者ギルドに行くしかないだろう。
「じゃあ急いで着替えてくる」
「私もそうします」
俺とソフィは自室に戻って、寝巻きのような服から普段の戦闘時の服に着替えた。
「おい、ゼロス!」
「あ!ベクア達はどうする?」
着替えて居間に行くと、そこには俺と同じように戦闘時の装備をしたベクアとエリーラとキャリナが居た。
「ゼロス達には迷惑をかけるかもしれないが、俺達も一緒にギルドに連れて行ってくれないか?」
「…いいぞ」
俺は少し考えてベクア達をギルドに連れて行くことにした。冒険者ギルドに登録すらしていないベクア達を連れて行ったら少し面倒なことになるかもしれないが、それでもベクアとエリーラとキャリナという戦力を無駄にするよりは全然いい。
「お待たせしました」
俺が居間にやって来てベクア達とそう話していると、すぐにソフィもやってきた。
「じゃあ、行ってくる」
「お気を付けください」
屋敷の人間に声をかけて俺達はギルドに向かって走り出した。
「人が多いな」
「ですね」
ギルドに着くと、そこには人が多かった。受付の奥の方で人がてんやわんやと動いているのが確認できる。周りから聞こえてくる会話でまだ集められた理由は話されていないようだ。
「Dランク以上の方は訓練所に向かってください!」
俺らが着いてすぐにそのような声が受付の奥にいる受付嬢から発せられた。それから集まった人達は訓練所へと流れて行った。
「俺達も行くか」
「ああ」
人がどんどん移動していき、訓練所への道が空いて来たので、俺達も訓練所に行くことにした。
「シャナはまだ来てないみたいだな」
広い訓練所で人で窮屈ではなくなったので、少し移動しながらシャナを探したが、シャナの姿はどこにもなかった。
「静かにしなさい!」
訓練所の入口からそう女の人の大声が聞こえてくると、ざわざわとしていた訓練所がしーんっとなった。振り向いて姿を見ると、訓練所に入って来たのは闇の最上位精霊と契約しているギルド長だった。
「今から事情と依頼を話すわ」
ギルド長がそう言うと、全員がギルド長へ視線を向けた。
「まず、ここに居るほとんどの者には強大な魔物から王都へ逃げてやってくる魔物の大軍から王都の防衛を依頼するわ。魔物のランクはEランクからAランクまでと思われるけど、これは騎士達と協力して行ってもらうことになるわ。参加した報酬は1人あたり金貨2枚、討伐した魔物に応じてまた別途で報酬は支払われるわ」
金貨2枚と言うと、大体200万くらい相当だ。この場には50人以上は居るので、ギルドはかなり奮発したな。
「そして、特別に声をかけた者達は黒貨1枚の報酬で魔物が逃げている元となっている強大な魔物の相手をしてもらうわ。最悪王都から進路を変更出来れば良いわ。ただ、討伐完了時には追加で黒貨1枚を払うことになるわ」
これにはギルド内は再びざわついた。なんてったって、黒貨1枚で1億円相当だからだ。破格な金額過ぎる。
「みんなで協力して先にその強大な魔物とやらを倒せばいいんじゃないか?」
誰かからそのような声が上がった。
「それは無理よ。だって、あなた達が仮に何万人集まろうと、その強大な魔物は倒すことができないわ」
ギルド長がそう言うと、再び訓練所内は静まり返った。そして、言葉を理解して、冒険者達が文句を言い始める前にギルド長はその強大な魔物の正体を話した。
「今回、魔物達が大勢逃げる原因になった魔物はSSSランクのベヒモスよ」
ベヒモスは高さが30mほどもある巨大なサイのような魔物だ。
「耐久力が高くて生半可な攻撃だと傷すらつかないわ」
「そ、そんなSSSランクの魔物なんかに勝てるわけない!!」
「そんなのが王都に向かってるなんて、もう王都は終わりだ!」
ギルド長のベヒモスという発言にほとんどの全員が混乱状態に陥った。こうなることを見越して敢えてベヒモスという名前を最初から出さなかったのか。
「落ち着きなさい!」
ギルド長は手を叩くと、そう怒鳴った。その一言で訓練所内の注目はギルド長へ集中した。
「冒険者ギルドは無謀な依頼を出さないわ。ベヒモスに勝てるという自信があるから依頼を出すのよ」
ギルド長はニコッと笑いながらそう言った。
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