第477話 ディーネの強さ

「いや〜、ちょっとエリーラちゃんに精霊界でゼロスを鍛えるついでにボコってくれって言われたんだよね〜。でも、鍛えるのは精霊王様の方が適任だと思うの〜。だから遊びでボコってあげようかな〜ってね」


「エリーラ…!」


もしかして、エリーラが俺が行く前に静かだったのはディーネにその指示を出していたからか。


「ディーネちゃんが鍛えるのを手伝ってくれるなら嬉しいよ!ディーネちゃんにならゼロくんを完全に任せて、ユグも精霊化されてもいいからね!そのお礼に死なない程度にならゼロくんをボコってもいいよ!」


「ちょい!」


ユグは嬉しそうにユグに近付いてそう言った。そして、その後は少しディーネと話すと、俺の元にやってきた。


「じゃあユグのことも精霊化してよ。そうしたら精霊化のスキルレベルも早く上がるからね!」


「精霊化」


俺はユグの言う通りにユグも精霊化した。何気にユグとジールを2人揃って精霊化するのは珍しい気がする。いつも精霊化は攻撃をすり抜けるためにしか使ってなかったからな…。


「精霊王様も精霊化したから〜、身体能力もさらに上がってると思うよ〜。軽く体を動かして慣れさしてね〜」


「あ、ありがとう」


ユグに物騒なことを言われたから、問答無用で襲いかかってくるかと思った。だが、そんなことをなく、俺が思っていたよりもディーネは優しいようだ。



「もう慣れた〜?」


「だいぶ慣れたよ」


数分体を動かすと、また上がった身体能力にも慣れてきた。精霊王のユグだからなのか、ジールを精霊化した時よりも少し上がった量が多い気がする。


「じゃあ〜」


ディーネはそう言うと、周りの地面の草を水で刈って、その草を水で流してどかした。


「戦う範囲はこのくらいでいいかな?」


「あ、うん」


簡単そうにやった凄技に気を取られて、空返事をしてしまった。ディーネは簡単そうにやったが、サッカーコート以上の面積がすぐに整地された。


「とりあえず〜、私をここから出したらクリアってことで〜」


ディーネはそう言いながら自分の下に半径1mほどの水溜まりを作った。


「私への攻撃は全力で好きなだけしていいよ〜。その代わり〜私からも攻撃するからよろしくね〜」


中位精霊であの強さだったので、その2段階上の最上位精霊のディーネなら俺が到底適わないくらい強いのだろう。だから遠慮なく行かせてもらおう。


「アイスソード!神雷纏!」


俺は再び氷魔法で剣を作って、それに神雷を纏わせてディーネに向かっていった。


「雷縮…はっ!」


馬鹿正直に向かって正面から攻撃すると思わせて、雷縮で後ろに回って剣を振った。


「…えっ」


ディーネはその剣を振り向きもせずに親指と人差し指でつまんで止めた。


「油断してるよ〜」


「あっ…ぶね!!」


ディーネは空いている片手で水の砲弾を放ってきた。俺は神速反射に頼ってそれをもう片方の剣で斬り消した。


「ふっ…!」


未だに剣を掴まれているので、それを利用して剣を持っている腕を引いて勢いをつけてディーネの顔に膝蹴りをしようとした。蹴りをいれる時にはもう掴まれている剣から手を離して放棄した。


「え!」


しかし、その攻撃はディーネの顔の前にから現れた水の球によって止められた。

だが、今回はすぐにその水の球を剣で斬り消して、体を横に捻って、膝を伸ばして顔の横に蹴りを放つことで対応した。


「やっぱり〜接近戦はエリーラちゃんよりも上手いよね〜」


「ちっ…」


ディーネは砲弾を放った手で俺の足を掴んで攻撃を止めた。


「強さは分かったから〜、一旦離れてね〜」


「っ!?」


危機高速感知が激しく反応したので、ディーネに掴まれた足を振り払って急いでディーネから距離を取った。俺が逃げたタイミングで上から滝のように勢いよく水が落ちてきた。あれに当たってたら普通に重症になったよな…。


「じゃあ、次は近付けるように頑張ってね〜」


ディーネはそう言うと、水を鞭のように四方八方に暴れさせた。その鞭は不規則に動いているが、絶対にディーネの足元の水溜まりの範囲にはやってきていない。

そして、両手にはバスケットボールくらいの水の球を持った。


「それ〜!」


「やばっ…!?」


そして、その水の球を俺に高速で放ってきた。俺は慌ててそれを避けた。すると、地面に当った水の球はバシャンッ!という大きな音と共に爆発した。


「え…」


その爆発によって地面は大きくえぐれていた。身体能力が上がっているとしても、あれをまともに食らって生きていれるのか?


「どんどん行くよ〜」


ディーネはそう言うと、自分の周りに大量の水の球を生み出した。


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