第473話 苦行再び
「ちょっと待っててくれよ」
グラデンは突然そう言うと、溶けた鉱石を持って倉庫へと向かった。そして、鉱石を倉庫へ置いて、さらにマジックポーチをとってやってきた。
「ほっ!」
そして、マジックポーチから机の上に大量に剣のグリップをがらがらと取り出した。
「この短期間でもゼロスの身体は成長しているだろうからまたグリップ合わせから始めるぞ」
「お、おう…」
それから俺は色んなグリップを握って、握り心地が最も良いのを探した。
「何か前回よりも数が多くないか?」
「ああ。前回はこれよりも容量の少ないマジックリングだったから持って行ける数にも限界があったが、今回はあるだけ試せるから量的には3倍くらいはあるか?」
「お、おう…」
ここにあるグリップは500以上はある。確かに前回は百後半だったと考えると、3倍くらいになるかもしれない。
「あ、何も今すぐに1つに決めなくていいぞ。最大5つくらいは良さそうなのはキープでいいからな!」
「了解」
これほどの数があると微妙にしか違わないのもあるので、最終的に1つに絞りはするが、今は複数選んでもいいそうだ。
あまりの数に気が遠くなりながらも、右手と左手それぞれで1個1個しっかり握って試しに振る動作をしてチェックしながら選んでいった。
「右はこの4つで、左はこの5つだな」
「わかったぜ」
休憩も挟みながら数時間選んでいって、やっと右手は4つ、左手は5つの候補に絞ることができた。
俺がそれを伝えると、グラデンはそれぞれの番号?のようなものをメモした。
「今日は遅くなったからもう終わりだが、明日はそのグリップに剣をはめて刀身の長さと重さを決めてもらうからな」
「わかっ…ん?これにはめて…?」
普通に了承しようとしたが、少し気になることがあったから聞き直した。俺の頭の中には最悪の想定が浮かび上がっている。
「そうだぜ!それに長さが100通り、重さが100通りほどをはめて刀身を決めてもらうぜ!」
「それって長さの100通り全てに重さが100通りもあるのか?」
「そうだぞ。こんなに大量に候補を作るのには苦労したぜ。だが、役立つ機会が来て嬉しく思うぜ!」
確かに系1万の刀身を作るなんてグラデンでもかなりきついだろう。だが、グラデンは時間を見つけては一日に何本も作り、3年近くをかけて揃えたようだ。
「えっと…俺は右手4万回、左手5万回もためすってことか…?」
そんなグラデンの苦労は置いておいて、俺はこれからそのとてつもない回数を試さないといけないってことなのか?
「いや、明らかに軽いのや、短いのは試さなくてもいいぞ。だから試す回数はその半分くらいになるんじゃないか?」
「まじか…」
少し予想よりも減りはしたが、俺の嫌な予感は当たってしまった。減ったと言っても、かなりの数をやらなければならない。決めるまで一体何日かかるんだろうか…。
「明日から頑張るか…」
「おう!頑張れ!俺はその間に白鉱石を加工する方法を探すとするぜ」
俺は次の日から何回もグリップと刀身を付け替えながら剣を振り続けた。地味にグリップと刀身を付け替えられるのが凄いと思った。
それをグラデンに伝えたが、本当はこの技術は実戦で活用しようとして生み出したが、少しの衝撃で外れてしまいそうになるから耐久力が低いため、役に立たなかったと言っていた。
俺が刀身を試し始めて1週間が経過してもまだ終わらず、さらにそこから4日が経過した。
「右がこのセット、左がこのセットが最高の組み合わせだ」
「おお!ついに決まったか!」
何度も嫌になりそうになりながらも、最高の剣を作るためだと頑張り、何とか最高の組み合わせを決めることができた。不思議なことに、この決めた組み合わせで振った時には最高なのはこれだ!という謎の自信が現れた。
「よし!じゃあ剣を作り始めるぞ!闇翠と光翠はまた溶かしていいよな?」
「全然いいぞ。あっ!でも玉とその周りの少し削った刀身は俺に渡して欲しい」
「構わないぜ!白鉱石を混ぜる分、元々の剣の素材は余るからな!」
玉だけでもいいとは思うが、念の為玉の周りの剣も削って貰うことにした。
それと、普通だったら完成した剣を再び溶かして再利用するのは良くないとは思うのだが、この精霊界、獣界、悪魔界にあった鉱石にはそれは無関係ようだ。まあ、今の闇翠、光翠を作った時も元々の完成していた剣を溶かして作ったので、今回も変わらないな。
今日はもう遅い時間なので、剣作りは明日から本格的に始めることとなった。
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