第462話 アレンジ
「親方から許可を取ってきたから今から行くぞ!目立つから竜車じゃなくて、俺用の馬車を使う!昼飯は道中で適当に買って食うぞ!」
グラデンは地下から出ていって、30分後くらいに帰って来てそう言った。俺達は急かすグラデンに連れられて王城を出た。
グラデン専用という馬車は外見は地味なのに、中は竜車には及ばないにしろ、外見に似合わず広くなっていた。ちなみに、昼ご飯は行く途中で屋台で串焼きやパンなどを買って馬車の中で食べた。
「ここなら破壊してもいいと言われたぜ!寧ろ壊してほしいくらいだ!」
「…何だここは?」
グラデンに連れられて、馬車に揺られること1時間強で着いた場所は廃墟?になったような町?だった。
「ここは昔に近くの鉱山を掘るためにドワーフらが住んでいたんだが、鉱石が取れなくなって放置された廃村だ。王都からそれなりに近いから大丈夫だと思うが、盗賊とか犯罪者が住んだらまずいから出来れば撤去したかったんだ」
とはいえ、今のところ盗賊が住むような気配もなく、そもそもかなり建物が駄目になって住めるような状態でも無くなっていたので、後回しにされていたそうだ。
「ここは更地にしても問題ないぜ!こんだけスペースがあれば十分だろ!」
「多分な」
この廃村は屋根や壁が崩れているとはいえ、十数棟の建物が並んでいる。その他にも石窯のようなものもあるため、それなりの広さはある。
「大丈夫なわけないわよ。あんたは地面に大穴でも開けるつもりなの?」
「お兄ちゃんが本気でやるとするなら、最低でもここの5倍の面積は必要でしょう」
だが、エリーラとソフィ曰く、この広さでも全く足りていないらしい。
「足りない分は私とソフィアでカバーするわよ」
エリーラがそう言うと、村を水で囲んだ。更に、その上からソフィが土で囲んだ。
「これの中にあんたが入ってやりなさいよ。どうせダメージは受けないんだし」
エリーはそう言うと、俺が入れるくらいの場所の土と水を退けて入口を作った。
「えっと…とりあえず1枚の鱗に全力で魔法を放てばいいんだよな?」
「そうだぜ!幼体の小さめの鱗にお願いな!」
「わかったよ」
俺はグラデンにそう言うと、入口から中に入った。中に入ると、すぐにその入口はなくなった。
「当たり前だけど真っ暗だな」
ソフィの土で完全に覆われているので、中には光が全くない。夜目がなかったらまともに動けなかったな。
「地面まで水で覆われてるな」
俺の足首くらいまで水に浸かっている。多分この水も電気を通さない純水なのだろう。
「ここでいいかな」
俺は真ん中くらいまで歩くと、水から出ている適当な崩れた家の上にリヴァイアサンの変異した幼体の鱗を置いた。
「さて、やるぞ」
『うん!』
『おう!』
「ユグ精霊降臨、ジール精霊降臨、獣化」
俺は早速、霹靂神の準備を始めた。ちなみに、獣化をした理由は地面が崩れた時の足場を用意するためだ。念の為、今からサイコキネシスの足場で水から出て浮かんだ。
「できた」
そして、20分ほどで霹靂神がおおよそ完成した。これで3回目なので、かなり慣れてきた。
「アレンジできないかな?」
ぶっちゃけ、これ以上魔力を注ぐと、破裂しそうなのでそれはできない。だが、そろそろちょい足しアレンジをしたくなる。
「あ、神雷纏」
そこで思いついたのが、霹靂神の雷に神雷を纏わせることだ。これに意味があるのか分からないが、やるだけやってみた。
「そろそろ、いくぞ!」
霹靂神を手元に留めておくのが限界に近くなったので、神雷を纏わせた霹靂神を鱗1枚に放った。
『ピコーン!』
『【称号】オーバーキル を獲得しました』
激しい雷鳴と共に何かアナウンスのようなものが聞こえたが、耳には入らなかった。
「うん…浮かんでて良かった」
俺が霹靂神を放った場所を中心に地面はかなり凹んでいた。1番凹んだ場所は魔法を放つ前よりも5mは優に凹んでいるだろう。浮かんでいなかったら俺は転んでたな。
「見る影もないな」
我ながら威力が桁違いだ。隕石が落ちたかのようにクレーターがあるだけで、ここが廃村だったとわかるものが何一つない。
「気軽に最高威力と言ったのが間違いだったわ!」
エリーラとソフィがドーム状のバリア?を解くと、みんなが中に入ってきた。ドームの外はほとんど魔法の影響は無さそうだ。1部の地面の草が焦げているだけだ。
「それで、リヴァイアサンの鱗はどこだ?」
「あっ!」
俺は慌ててクレーターの中心地まで向かった。
「あっ!あっ…た……」
鱗も消し飛ばしてしまったかと焦ったが、鱗のようなものを見つけて安心した。しかし、喜んだのも束の間、俺は再び落ち込んだ。
「すまん、グラデン。駄目にしたかも」
俺はそこから拾った真っ黒になった鱗をグラデンに渡した。しかし、グラデンは俺が渡した鱗を見つめるだけで動かない。怒ったかと心配したところで、グラデンは顔を上げた。
「わっははは!これは凄いぞ!鱗が素材として進化したぞ!」
そんな俺の心配を他所に、グラデンはとても嬉しそうな顔でそう言いながら笑った。
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