第434話 問題
「…ただ、リヴァイアサンの素材で防具を作るとなると、1つ問題がある」
「問題?」
ベクアがほんの少しだけ深刻そうな顔でそう言ってきた。そして、すぐにその問題を話し始めた。
「SSSランクであるリヴァイアサンの素材を加工できる職人が獣人国に居ないんだよ」
「ちなみに、エルフの里にもそんな職人は居ないわよ」
「多分、リンガリア王国にも居ない。そもそも人間領に居ないと思う」
「あっ…」
なんと、防具どころかリヴァイアサンの素材を加工することすらできないそうだ。こうなってしまうと、優秀な素材もただの使い道の無いゴミになってしまう。俺の知り合いに物作りに精通している者は…居た。
「グラデンなら加工できるんじゃないかな?」
「あ、そうか。グラデンは俺の中で鍛冶師っていう扱いになっていたから選択肢にすら入らなかった。ドワーフ国に居るかもとら思っていたが、確かにグラデンなら加工ができるかもな。もし出来なくてもドワーフの腕の良い職人を知ってるかもしれないな」
ほぼ未知とされている素材で俺の闇翠と光翠を作り上げたドワーフの鍛冶師のグラデンならリヴァイアサンの材も加工できるかもしれない。
「そういうことなら、早速ドワーフ国にいるグラデンに手紙を出してみるぜ」
「ありがとう」
ベクアはそう言うと、部屋から出て行った。いや、今すぐに手紙を書いて送るのかよ。別にそんなに急ぎじゃなくても良かったんだけどな。
「もう一度確認するけど、身体に異常は無いのよね?」
「うん、大丈夫だと思うよ」
ベクアが出て行くと、エリーラが俺の体調を再び確認してきた。
「なら1週間後には私と戦えるわね」
「え?あっ…」
リヴァイアサン騒ぎで忘れていたが、ここに来てからエリーラとは本気の模擬戦をやる予定だった。
「…まさか忘れてたとは言わないわよね?」
「あ、あはは…」
完全に頭から抜けていた。そんな俺の考えを顔色から察したのか、エリーラは呆れ顔でため息を吐いた。
「忘れたくても忘れられない悪夢を見せてあげるから覚悟しておきなさいよ」
「分かったよ」
エリーラは俺とイムと特訓している俺を見ていた。それなのにその言葉を言うということは、あの時の俺よりも強い自信があるのだろう。
「なら私達も1週間後でいい?」
「私はそれで構いませんよ」
「ならそれで」
俺達の会話を聞いていたソフィとシャナも模擬戦の話をしていた。
正直言うと、俺はシャナではソフィに敵わないと思ってしまう。理由はシャナの戦闘スタイルは俺と似ているからだ。シャナは上手い隠密と心眼を合わせて近距離戦と遠距離戦を上手い具合に合わせて戦っている。これでは、イムの二の舞いになってしまう気がする。シャナはどうやってソフィに勝つ気なのだろうか…。
「グラデンに手紙を送ったぞっ!」
「早いな…」
なんてソフィ対シャナの結果を予想していると、部屋にグラデンにもう手紙を送り終えたベクアが入って来た。
「何かあったか?」
「いや」
バチバチとした険悪な雰囲気を察してかベクアがそう聞いてきた。実際に何かはあったのだが、喧嘩した訳でもないし、大丈夫だ。
「ベクア兄様!」
「ん?」
状況を理解できずにきょとん?とした顔をしているベクアにキャリナが話しかけた。
「私達も1週間後に模擬戦をしましょう!」
「ん?あー…なるほどな。分かったぜ。受けて立ってやる」
キャリナの「私達も」という発言でベクアはこのギスギスした雰囲気の理由を察したようだ。ベクアはニヤッと一瞬笑ってからキャリナの提案に了承した。
「対戦順は先鋒、俺とキャリナ。中堅、ソフィアとシャイナ。大将、ゼロスとエリーラ。でいいか?」
ベクアのその意見に誰からも反対意見が出なかった。そのため、対戦順はこれで決定した。
「なら明日から特訓をするぞ!」
「なら俺も…」
「お兄ちゃんは今日明日は絶対安静にしててください。明後日も激しい運動は避けてください」
俺もベクアと共に特訓をしようとしたが、止められてしまった。
その後、みんなは俺の安否を確認できたので、もうリヴァイアサンが居ないか、イムが居ないかを見に行った。ただ、一応イムがここに来た時のためにソフィだけは残った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます