第423話 温泉での2人の会話

「今何時だと思ってるんだ?」


「えっと…6時過ぎ?」


俺達が宿に帰ると、ベクアが宿の前に待ち構えていた。3人でいるのを見て緊張が抜けたホッとしたような顔を一瞬したが、すぐに呆れ顔に変わった。


「はあ…もうすぐ飯だ。先に風呂行くぞ」


「了解」


俺はベクアと一緒に宿の中に入って、そのまま2人で温泉に向かった。



「じゃあ僕達も温泉行く?」


「どこからその「じゃあ」が出てきたのですか?どうしてあなたと一緒に温泉に入らなければならないのですか。私はあなたが今行くと言うなら後で、後で行くと言うなら今から温泉に入ります」


「冷たいな〜」


後ろからそんなやり取りが聞こえてきたが、無視しておいた。反応してもイムの標的がソフィから俺に変わるだけだろうしな。




「あの様子からして仲は少しは良くなったみたいだな」


「良いとは言えないが、最悪ではなくなったな。お互いに内心ではどう思っているか分からないけどな」


温泉に浸かると、ベクアが俺に話しかけてきた。



「で、やっぱり模擬戦をさせたのか?」


「ああ」


ベクアが帰ってすぐ温泉に案内したのは、今日の様子を聞くためだろう。貸切である宿の男湯なら誰の耳に入る心配もないからな。


「で、どっちが勝ったんだ?」


「ソフィだ」


俺がそう言うと、ベクアは少し驚いたような顔になった。


「なら、ソフィアに勝ったゼロスでも勝てるな」


「戦いがそんな単純じゃないことをベクアもよく分かってるだろ」


「まあーな」


一応戦闘スタイルとかで相性があったりする。だからソフィがイムに勝ったからと言って、ソフィに勝った俺がイムに勝てる訳では無い。


「しかし、よく勝てたな」


「ソフィは俺対策で生まれた大量の没案の1部を使ったらしいぞ」


「なるほどな」


ソフィはイムには聞こえないところで没理由も含めて俺にそう教えてくれた。

ソフィはイムを宙に浮かして、空中で潰していた。さらに、落ちてきた破片も地上でさらに細かくなるように潰した。

あれは地雷のように地面に設置した反射でイムを上に飛ばす。さらに、イムの最大到達点付近に囲むように反射を用意しておいて四方から潰す。さらに、地上1m付近に広範囲で設置した反射でさらに潰したらしい。

俺に同じことをやろうとしても、地面の反射を発動する瞬間に危機高速感知が反応して、神速反射で避けられる。それは空中に設置する反射も同じだ。また、地上に広範囲で設置しても雷縮で高く飛ばれたら意味が無い。



「相性が悪かったんだな」


「まあ、そうなるな」


今回に限っては策を大量に用意してあったソフィの方が有利だった。しかし、それを考慮してイムが行動していたとすると、相性が良いとは言えないかもしれない。



「じゃあゼロスなら勝てたか?」


「分からない」


イムもリュウやベクアと同様に魔力を纏うくらいできるだろう。だが、イムとの接近戦は今日のソフィとのやつを見た限りでは負けないと思う。ただ、イムが自ら俺の戦力アップを提案するということは、現時点の俺には絶対に勝てる「何か」があるのだろうと思ってしまう。



「ただ、殺し合いではまだ絶対に勝てないと思う」


イムはあの神雷Lv.1を避ける、防ぐ、耐えるのどれかができたから今生きている。そんなやつ相手に殺し合いをしても仕留めきれない気がしてしまう。



「味方だと心強いんだがな…」


「そうだな……」


今回は一応味方としてリヴァイアサン討伐に協力してくれる。とはいえ、油断したら背中からブスっと刺されました!なんて事も有り得なくはない。



「そろそろあがるか」


「ああ」


今日3人であったことを一通り話し終えたので、俺達は温泉からあがることにした。

そして、その後はなぜか一緒にいるイムも含めて夕食を取って眠った。ちなみに、イムは寝る時は帰っていた。

そして、朝になったらまたやって来て、再び3人で特訓に行った。それで帰って来て、また昨日と同じくベクアと2人で温泉に行った。


これと似たサイクルを王都からの部隊が到着するまで続けた。ちなみに、特訓にはシャナとエリーラやベクアとキャリナも一緒に参加する時があった。


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