第415話 脅威
「シィヤ!!」
「ぶくっ!」
睨み合いはすぐに終わり、子供であろうリヴァイアサンが1匹俺へ向かってきた。リヴァイアサンが速いのと、水中で動きづらいので、噛み付きを剣で受け流すのが精一杯だった。
もうさっきの気の緩みはない。いくら精神的に疲れているからといって、こんな生死が別れる状況でも気が緩んでしまうほどこの世界で穏やかな生活はしていない。
「サンバーバースト」
(避雷針除外)
ソフィの大きな声が水上から聞こえてきた。その瞬間に俺は避雷針の称号を外した。これにより、ソフィの雷は広範囲に落ちた。もちろん、俺は雷吸収があるのでダメージは無い。
(今のうちに…!)
雷を食らった隙に俺は泳いで海から出ようとした。
「シャア!」
「
ソフィのかなりの魔力が込められた雷を食らったはずなのに、大人の方の2匹は平然と俺に向かってきた。あれで麻痺らないのかよっと慌てながら雷龍を放った。
「
なんと、俺の放った雷龍は噛み消された。もしかして、こいつらは雷耐性か魔法耐性が異常に高いのか!?
そして、水中で大人が2匹同時に来られたら両方受け流せる自信が全く無い。
それなりの傷を負うことを覚悟したが、水がいきなり集まって可視化できるほど圧縮されて拳のような形になった。それが2匹をぶん殴った。
「おっ…!」
その瞬間に俺の周りから海水が無くなった。
「さっさと上がりなさい」
「雷縮」
エリーラが海に穴を空けたように、俺の周りだけ海水が無くなるように操ってくれたようだ。俺はすぐにサイコキネシスの足場を使って雷縮で一気に海から出た。
「おい!どんだけ俺を逃がしたくないんだよ!」
空中に出た瞬間に下から水の砲弾がやってきた。
「魔法解除」
しかし、俺が斬ろうとする前に、その砲弾はソフィが魔法解除で消してくれた。
「連携も上手いな!」
砲弾のすぐ後ろには大人が1匹隠れていた。変に避けてまだ見ぬ攻撃されたくないから、あえて剣で少し衝撃を受け流しつつガードした。そして、真上に吹っ飛ばしてもらって距離を取った。
「お兄ちゃん、撤退します」
「え!?…まあ、そうだよな」
ソフィ言うことに一瞬驚いたが、妥当な意見だった。
俺達は影の正体である1体の魔物を相手にするつもりでいたのだ。しかし、影の魔物を倒したと思ったすぐ次にSSSランクを複数匹相手にすることは想定していない。こんな魔物を相手にするには策も考えなければならないだろう。
「なぜかお兄ちゃんに対しての殺意が高いので、私達が気を引いているうちにシャナとエリーラが漁港まで逃げています。2人が帰ったら私達は転移で逃げます」
「了解」
魔力高速感知でシャナとエリーラの魔力が遠ざかっていくのがわかった。2人は俺を海中から救出してすぐに離れて行ったのだろう。
「…ん?でも、俺達が逃げても漁港まで追って来ないかな?」
「可能性としては有り得ますね」
だからシャナ達がベクアやウカクに伝えて、漁港近くにいる者に避難指示を出してもらうそうだ。
「今までの激しい攻防は漁港からも見えていると思うので、すんなり避難してくれるでしょう。もし指示に従わない者が居たのなら死んでも仕方がありません」
「あはは…」
ソフィが厳しいことを言っているが、魔物という脅威が身近なこの世界では1つの判断ミスで死ぬ事なんてよくある事だからな。
「お兄ちゃんは下がっていてください」
「分かった」
今はだいぶ上空にいたので喋っている時間があったが、痺れを切らしたのか、海から飛び出して下から向かってきた。
「サイクロン」
ソフィが下に手を出してそう言うと、後ろの俺まで吹き飛ばされてしまいそうになるほどの風がやってきた。渦上の風に押されてリヴァイアサンは落ちて行った。
「どうやら、雷ではなく、魔法耐性そのものが高いようです」
「厄介だな…」
ソフィは鱗が削ぎ落とすつもりで魔力を込めたのに、今の魔法では風ではやって来る勢いを止めることだけで、ほとんどダメージは与えられなかったそうだ。
「弱点は海中以外では攻撃手段が少ないことですね」
「その分、俺達も有効な攻撃手段が無いけどね」
上空数十mにいるせいもあって、リヴァイアサンからの攻撃は魔法が飛んできたり、本体が突撃してくるかの2つしかない。それくらいなら2人で防ぐのは簡単だ。
「魔力が感知しにくいのは俺だけ?」
「…それは私もです」
俺は海に落とされた時に2回ほど不覚を取った。それは油断していたというのももちろんあったが、それだけではないようだ。こうして防御に専念していると、魔力が感知しずらいのがよく分かる。
パンッ!
「合図です。転移します」
「了解」
俺らが時間稼ぎを初めて30分ほどで漁港の方から魔法が打ち上がった。それを確認してからソフィが転移の準備を始めた。
「転移」
そして、俺達2人は転移でリヴァイアサン家族から逃げた。
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