第407話 異世界の釣り

「念の為に改めて確認させてもらいやすが、お連れの方々の実力は大丈夫なんすよね?万が一怪我されて責任を取れと言われても、我々は責任は負えないっすよ?」


船に向かう前に、ベクアの後ろにいる獣人では無い釣り初めての俺達を見ながら乗組員は少し不安そうにそう話した。


「俺が連れてきた奴らだぞ?全く問題ない。お前らと戦っても負けることはまず無いってほど優秀な奴らだ。特に……」


「おわっ!」


ベクアは得意げな顔をしながら乗組員に話している最中に急に俺の腕を引っ張った。そして、近くに来させると肩を組んできた。


「こいつは俺を負かして今年の大会で優勝した奴だぜ」


「あっ!この方がゼロスなんすか!獣王と契約していると聞いていたので、てっきり獣人の方だと思ってやしたよ!」


首都から遠いここにも大会の結果などは伝わってきているみたいだが、その伝言は完璧には伝わっていないようだ。大会の優勝者である俺のことも獣王と契約している獣人として伝わったようだからな。



「でも、なら安心すね。ここのところ少し不安になる話がちらほらと上がってきてやすし」


その不安話とは海中にいるかもしれない巨大な魔物のことだろうな。



「では!行きやしょうか!」


俺達7人は乗組員の案内に従って海賊船のような漁船に乗り込んだ。


『ピコーン!』

『【称号】海の漢 を獲得しました』



「あっ…」


俺が船に降りた瞬間に新しい称号を獲得した。この称号の効果は船の上でのステータスが1.1倍、海中でステータスが1.2倍になるのと、船酔いしなくなるのと、水中での行動補正と息が長く続きやすくなることだ。

まだ全く海の漢では無いけど、この称号は有難いのでセットしておいた。効果も多いし、強いで海の上ならかなり良いものだろう。




「お頭!全員乗りやしたで!」


「やっとかい!お前らは長話が過ぎるんだよ!」


船の上でお頭と呼ばれた獣人はなんと女性だった。とはいえ、背は170cm以上はあり、右腕には大きな1本の斬り傷がある。多分だが、国王の護衛並みには強いだろう。ただ、海賊帽子のようなものを被っているので、何の獣人かまでは分からない。



「それじゃあ、出航だー!」


「おぉーー!!」


その女船長の言葉で船に帆を張って、船は漁港を出発した。魔力と魔導具でメイン動くが、ここまで船が大きいと帆とかも動力源にしなければならないそうだ。



「それじゃあ、釣りの説明をしていきやすよ?」


出航してから1時間ほどで釣り場に着いたそうだ。これから釣りの説明をしてもらう。

ちなみに、ベクアにまず話しかけた獣人でもある、今から釣りの説明をしてくれる獣人はこの船の副船長らしい。



「まず、これが竿でこれが糸と針だ」


そう言って、2mくらいの太い竿とワイヤーよりも太いであろう糸と顔くらいある針を見せてくれた。


「この針を付けた糸を竿に固定して…」


副船長はその糸を竿に付け始めた。どうやら、リールなどはなく、そのまま固定しているようだ。


「そして、この肉を付ける」


その次はシャナの胴体くらいの大きさの肉塊を針に付けた。


「そして、槍を抜いてこれを投げるぅ!」


左手で背負っていた槍を抜きながら、右手に握った竿を振って餌を遠くに投げた。



「魔導具の効果が50m位まではあるから、それ以上投げるといいっすよ」


ボトンと遠くの方で餌が海に落ちるのを見ながら副船長はそう言った。


「それで、餌をしますが落ちるとすぐに…」


副船長がそう言った途端に、竿がものすごい勢いでしなり始めた。


「…この時に油断していると、体が海に落ちたり、竿が落ちたりするから注意が必要っす…!」


副船長は竿をギュッと力強く握きながらそう教えてくれた。


「そして…この竿を…らあぁぁぁ!!!」


副船長は叫びながら竿を引っ張られている方向と逆方向に振った。すると、海から魚が勢いに負けて船の上の方までやってきた。


「あとは降ってくるこいつを…はあ!」


そう言いながら上から落ちてきた魚のエラ付近を槍で串刺しにした。


「これが釣りっすよ」


槍から釣り上げた3m弱ほどの魚を抜きながらいい笑顔でそう言った。うん…やっぱり俺の知っている釣りではなかったな。



「別に殺す方法は剣でも魔法でもいいっすからね。慣れるまでは見てますから安心してくだせえ」


売ることを考えると、あまり余計な傷をつけなくて済む槍が最適らしいが、別に売るわけでもないし、まだ初心者?な俺達は使い慣れた自分の武器でいいそうだ。



「じゃあ、早速やってみな!」


そう言いながら俺達釣り初心者4人に釣りセットを貸してくれた。ちなみに、ベクア達獣人の経験者組はもう既に釣りを始めようとしている。


「…やってみるか」


前世とは全く方法は違うが、これは一本釣りの亜種のようなものなのだろうか?何か少し楽しそうなので、早速見よう見まねでやって見ることにした。


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