第391話 次の予定
「…これ仕舞っていいかな?」
「そうだな。仕舞うか」
俺とベクアは俺達以外誰も居ない治療室までの通路で重くて大きいトロフィーをマジックリングに入れた。貰ってから退場するまで仕舞うのはダメだろうが、もう誰の目も無いからいいだろう。
「表彰式お疲れ様です」
「キャリナ、大丈夫?」
「大丈夫か?」
治療室に入ると、キャリナはもう起きていた。まあ、試合が終わってから俺達が来る間に1時間は無いにしろ、かなり時間があったから起きていてもおかしくはない。
「はい。聖女さんの治療室で元気よくなりましたよ」
「ならよかったよ」
キャリナは俺みたいに重症という訳でもないので、もう完璧に完治したようだ。
「いい試合だったよ。今日のベクアの初戦なんて、考え事してたらいつの間にか終わってたんだから」
「おい!ゼロス!俺の試合をちゃんと見てろよ!」
「あはははっ。ありがとうございますっ」
別にベクアの最初の相手も本戦に勝ち上がっているくらいなので、弱い訳では無いだろう。しかし、ベクアとの実力差がかなりあり、瞬殺だった。
しかし、そんなベクア相手にキャリナは一時とはいえ攻めてすらいたのだ。数ヶ月前までのキャリナではベクアの初戦以上に瞬殺されていただろう。だから数ヶ月とは考えられない程の成長速度だ。
「話は変わるが、ゼロスは学園には言ってここに来たんだ?」
「えっと…確か獣人国の大会の観戦って理由だったな」
ベクアが急に話を変えて質問をしてきた。
獣人国の大会に参加すると言っても信じられなそうだからそうしたはずだ。
「要するに、獣人国の観光ってことだよな?」
「まあ、そうなるかな」
獣人国の大会の観戦ということは、つまり、獣人国の観光でもあるはずだ。
「なら、明後日…明明後日からは海に行こうぜ!知ってはいるだろうが、見たことないだろ?」
「まあ、見たことはあるはずないな」
獣人国に来たのが初めてなのに、海を見たことがあるはずがない。まあ、前世では見たことがあるけど、異世界の海と前世の海が同じとは思えない。
「…それにしても話が急だな」
「まあ、魔族問題がどうなるか分かっていなかったから言えなかったんだ。もちろん、海に行くというのは前から考えていたがな!」
確かに魔族の行動次第では海に行くことなんてできなかったな。大会が無事に終わった今だから、海に行くことを話したのか。
「キャリナは海に行ったことがあるんだっけ?」
「はい!とっても綺麗で大きくてしょっぱかったですよ!何度行ってもいいものですよっ」
どうやら、キャリナは海に行ったこともあり、海に行くことには賛成のようだ。かなりテンションが上がっている。
「これに関してはソフィ達に相談してみないと分からないな」
まあ、次の予定も特にないので、多分断るとは思えない。しかし、俺の独断で決める訳にはいかないから、3人の意見もちゃんと聞かないとな。
「キャリナもう歩けるか?」
「……はい、大丈夫そうです」
ベクアの質問にキャリナはベッドからトンっと出て、少しぴょんぴょんと跳ねて確かめてから返事した。
「なら、これから3人にも聞きに行くぞ!」
「お…行動が早いな」
ベクアはそう言うと、さっさと治療室から出て行った。
「見失わないうちに俺達も行くか」
「はい」
ベクアに取り残された俺とキャリナもベクアについて行くために足早に治療室から出た。
「それで、海に行こうと思うんだが、どうだ?」
俺とキャリナがベクアに追い付くと、その時にはもうベクアはソフィ達3人を見つけていて、海に行こうと誘っていた。
「魚は食べれますか?」
「もちろんだぜ!新鮮で美味しい魚が大量にあるぜ!」
ベクアの返答にソフィは目を輝かせながら俺の方を見てきた。そういえば、前世でソフィは肉料理よりも断然魚料理の方が好きだったな。
俺達の人間領では海は無いので、魚は食べられない。もちろん、川魚はいるにはいるのだが、それを食べる習慣が無い。一応取って食べてみたことはあるが、臭みが強くて食えたもんじゃなかった。ソフィはどうにか臭みを抜く方法を探していたが、どれも失敗に終わって諦めていた。
「シャナとエリーラはどう?」
「魚は1度食べてみたい」
「私はあんたの行くところについて行くだけだから任せるわよ」
シャナは賛成、エリーラはどっちでもいいってことだな。みんなの意見を聞いたところで、みんなの視線が俺に集まっていた。あ、最終的な結論は俺が決めるんですね。
「俺も美味しい魚食べたいし、海も見てみたいから連れていってくれるか?」
「おう!任せろ!海の楽しみ方ってやつを俺が教えてやるぜ!」
ベクアは嬉しそうにそう言った。その後、ベクアは海への旅行?の準備をすると言って、急いで王城へ帰って行った。忙しいやつだな…。
その後は俺達も宿に帰った。
こうして、次の予定がベクアの提案で海に決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます