第390話 大会終了

『3位決定戦の決勝を始めます!選手は入場してください』


そのアナウンスでベクアとキャリナが入場してきた。2人とは昼食を取って闘技場に戻ってきてからすぐに別れた。2人ともそれぞれの控え室に向かったのだ。



『試合開始!』


2人が獣化と獣鎧を行って試合が始まった。



「しゃ…おらっ!」


そんなベクアの叫び声がここまで聞こえてきた。ベクアは俺の時とは違って地面に氷は張っていない。その代わり、俺の時とは違ってベクアは試合が始まってすぐキャリナに速攻をしかけた。


キャリナはベクアの攻撃を防ぐことで精一杯なのか、受けに回り続けている。その受けにしてもベクアの攻撃を完全に防ぐことはできていない。急所は避けているようだが、時々攻撃を食らっている。



「氷ダブルハーフエンチャント」



「おっ、使ったな」


キャリナはとうとう俺が貸した氷魔法でのダブルハーフエンチャントを使った。

リュウとの試合では俺は雷電魔法でのトリプルハーフエンチャントを貸していた。キャリナはそれによる急激なステータス上昇に体がついていけていなかった。だから攻撃時とかもその威力に体が流されていた。

その反省を活かしてか、今回キャリナが俺に言ってきたのは、使いこなせるくらいのエンチャントを貸してほしいということだ。だから、俺とキャリナは2人でどこまでのエンチャントなら使いこなせるのかを試していた。その結果、氷ダブルハーフエンチャントがぎりぎり大丈夫だった。トリプルになると少し難しそうだった。氷エンチャントは攻撃、防御、敏捷の3つが全て均等に少しずつ上がるからキャリナ向けだった。

もし俺が闇魔法を取得していたら、1番それがキャリナにはあっていたかもしれない。なぜかと言うと、キャリナが使っている獣鎧は闇鎧だからな。今度、ユグに教えてもらいながら闇魔法を取得しようかと考えている。



「はあっ!」


キャリナが氷ダブルハーフエンチャントを使ってから攻守が逆転した。今度はキャリナが攻めて、ベクアが守っている。ただ、さっきと違うのはベクアにはかなり余裕があるということだ。

キャリナの急なステータス上昇に慣れきて、だんだんと再び攻守が交代し始めた。

ベクアはキャリナが氷ダブルハーフエンチャントをしてからは倒すように攻め始めた。ベクアの性格上、多分エンチャント中に仕留めたいのだろうな。


体感で、残りエンチャントが数十秒もつかどうかのタイミングで、キャリナの隙をついて、ベクアは腹目掛けて拳を振り抜き、場外まで吹っ飛ばした。



『試合終了!勝者ベクア!これにより、3位はベクアに決定しました!これから表彰式の準備を始めます。表彰される者は舞台に上がってください!』


気絶したキャリナは担架で運ばれて、ぴんぴんしているベクアはそのまま舞台へと残った。


「では、行きましょうか」


「はい」


そして、俺と2位の獣人はベクアの居る舞台へと向かって移動した。



「ナイスゲームだったな」


「ありがとうよ。起きたらキャリナにも言ってくれよ」


「もちろん」


なんて事をベクアと話しながら表彰式までの時間を潰していた。



『準備が整いました。これより、表彰式を始めます』


そのアナウンスと共に国王様と王妃様の2人が舞台へと上がってきた。



『1位、ゼロス』


「はい」


表彰式の流れは事前にベクアから聞いていたので、スムーズに行うことができる。俺はアナウンスを聞いて国王様の前に向かった。


「魔族達との激戦をよく勝ち進んだな。ウカクもその実力を認めていたぞ。それで提案なんだが、我達と同じ王族に加わる気はないか?キャリナあたりでどうかな?」


「えっと…」


この流れはベクアから聞いていない。ベクアからは褒め言葉を一言もらって終わりと言われていた。なんて答えれば失礼ではなく断れるのか…。


「軽い冗談だからそんな深刻に考えなくていいわよ。まずはキャリナに落としてもらうのが先だもの。ですよね?」


「ああ、そうだな」


「あはは……」


後半に言ったことのせいでどこか冗談に聞こえなくなってしまった。


「ともあれ、魔族による被害が0だったのはゼロスのおかげだ。感謝しているぞ」


「ありがとうございます」


最後に国王にそう言われて2m近くもある金色のトロフィーを貰った。トロフィーがめちゃめちゃ重いから、全部金属でできていそうだな…。普通に物として価値がありそうだな。


『2位……』


俺が元いた場所に戻ると、今度は2位の護衛と3位のベクアも俺同様に国王様の元まで行って、トロフィーを貰った。


『これにて表彰式を終了します。賭けの代金のお支払いは今日から1週間です。お勝ちになった方はお忘れないように』


このアナウンスと共に表彰式は終了した。

重いトロフィーを持ってキャリナのお見舞いにベクアと一緒に向かった。

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