第373話 vsリュウ 2
「はあっ!」
「ふっ…!」
神雷ハーフエンチャントのおかげでリュウと競り合えるようにはなったが、力負けしている現状は変わっていない。だから俺はリュウの攻撃を受け流すことに集中していた。そして、隙を見つけた時だけ攻撃を仕掛けていた。
「ん…?」
俺が少し違和感を持ち始めた。しかし、その違和感の正体が何か分からない。
『ゼロくん!リュウと長時間打ち合うのはだめ!』
俺はそれを聞いて、とりあえず隙を見つけてリュウから距離をとった。
『どういうことだ?』
距離を取った間にユグに何が言いたいのかを確認した。
『リュウがだんだんゼロくんの動きに慣れてきてる!現に最初よりも隙ができにくくなっている』
『…そうか』
俺の感じていた違和感の正体は隙ができるペースが落ちている事だったのか。だんだん俺の攻撃回数が減っていることに対する違和感だったのだ。
『ゼロくんの動きに完全に慣れないうちに神雷エンチャントに切り替えて!』
『いや…逆に慣れさせるってのは?』
今の俺の動きに慣れたのに、急に神雷エンチャントに変えたら、リュウでも俺の動きに着いて来れなくなるのでは?
『それは難しいな。どんなにステータスが上がっても、人それぞれのテンポや癖が無くなるわけではないぞ。だからってそれらを無理に変えようとしても動きが悪くなってしまうだけだ』
俺のそんな考えを読んでジールがそう言った。
『だけど…』
確かにジールの言う通り、デメリットも大きい。しかし、メリットもある。俺はジールにそのメリットを話した。
『…なるほど。それが目的なら確かにいい作戦だ』
『ありがとう!』
ジールからお褒めの言葉を頂けた。
俺はリュウに俺の動きを慣れさせるために、今まで通り接近を続けた。
「くそっ…」
やばい。予想以上にリュウの慣れる速度が早かった。慣れさせようとしてから数分程度で俺がリュウの攻撃を掠る程になった。
もう慣れさせるのは十分だろう。隙が生まれずらくなったリュウの隙を集中して探した。
『『そこ!』』
「神雷エンチャント!!」
「ぐっ…!」
ユグとジールが揃って思わず声を出す程、俺は隙を待ちわびていた。何度もリュウの攻撃を耐え忍んでやっと現れた隙を俺は見逃さなかった。俺は神雷ハーフエンチャントを神雷エンチャントに切り替えた。そして、全力でリュウの左脇腹を斬りつけた。
「やっと1撃」
俺がジールに示した動きを慣れさせるメリットは、確実に一撃を入れられるというものだ。急に動きの速度が変わったら、慣れているほど反応が遅れるだろう。だから、鱗が完全に現れる前に斬れたのだ。
「ん?」
リュウの傷は決して浅くもないが、深くもないだろう。だからまだ普通に動けるはずだ。なのに、リュウは傷口を押さえているわけでもなく、傷口を見て固まって動かない。俺は一体何のスキルを封じたのだろうか?
「おいおいおい……」
リュウはそのまま無言で全身に鱗を纏い始めた。もうさっきのような不意打ちはできなくなった。
「………」
「………」
リュウが全身に鱗を纏ってから、少しの間、俺達は睨み合っていた。そして……
「はや!」
リュウがいきなり突っ込んできて攻撃をしてきた。神速反射のおかげで何とか避けれたが、リュウは今まで以上に全ステータスが跳ね上がったように感じる。
「くっ…!」
攻撃を受け流すことを許さないようにか、リュウは何度も俺の剣を掴もうとしてきた。俺はそんな腕を弾きながら、何とか掴まれないように戦っている。
「はあっ!」
俺はリュウの顎に剣を下から打ち付けた。しかし、リュウは少し上を向くだけで全くダメージが入っている様子がない。
「ちっ…!」
その後も何度も攻撃をしたが、全く効いていないように見える。
「こうなったら……」
『ゼロ。少し待て。様子がおかしいぞ』
『ん?』
更なる一手を打とうかとした時にジールから話しかけられた。
『今まで以上にリュウのステータスは跳ね上がったのに、なぜ今はゼロの攻撃がリュウに当たっているんだ?』
『それは俺のステータスも上がっ…確かにおかしいな』
俺が神雷エンチャントに変えた時のステータス上昇よりも、今の全身に鱗を纏う姿にリュウが変化した時の方がステータスは上昇している気がする。
だから普通なら、これの攻撃は当たらず、リュウの攻撃を食らってしまうだろう。そうはならないにしても、俺が何度も攻撃をできて、リュウの攻撃が1度も当たらないなんてことにはならないはずだ。
『それに!何だか動きが野生っぽい……というか魔物っぽい?』
『ああ…』
俺はリュウの攻撃を受け流しながら、よく観察してみた。すると、先程のような俺の動きを予想するようなことはしていないことがわかった。今のリュウは俺の動きに合わせて全力で攻撃してくる魔物とあまり変わらない。
俺は一体、リュウのどんなスキルを封じてしまったのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます