第371話 3位決定戦
『これより!3位決定戦を行います!選手は入場してください』
「ゼロスはどっちが勝つと思う?」
大会最終日である今日、これから3位決定から始まろうとしている。俺とベクアとキャリナの3人はいつも通り、観戦スペースでその試合を見る予定だ。
「護衛には悪いけど、デュラが勝つと思う」
俺はベクアの質問にそう答えた。3位決定はデュラと昨日の試合でリュウに負けた国王の護衛との戦いだ。正直に言うと、この護衛がデュラに勝てるとは微塵も思えない。
「だよな。俺もそう思うぜ」
どうやら、ベクアも俺の意見と同じのようだ。
「…仮にも国王の護衛何だろ?それがこうも簡単に負けてていいのか?」
一般の獣人は魔族が参加していることは知らなくても、護衛が参加していることくらいはわかるだろう。そんな護衛達が魔族に簡単に負け続けているが、いいのだろうか?
「まあ、良くはないが、ウカクが負けたわけじゃないから護衛の面子は保てているな」
ウカクとは国王の護衛兼側近の最強の獣人だ。ウカクが負けていないということだけで面子が守れるほどにウカクという獣人は強いようだ。
「まあ、ここまで負けてたら、大会が終わったあとに護衛達はかなりきつい訓練が待っているだろうけどな」
やっぱり、護衛の面子が守れているからって、ここまで負けるのはダメなようだ。
『試合開始!』
なんて事を話していると、3位決定戦が始まった。
デュラは試合が始まった瞬間にあの黒い斬撃を相手に放った。その斬撃が避けられなかった相手は斬撃に押される形で場外の壁に激突した。
『試合終了!勝者デュラ!』
試合は1分も経たないで終わってしまった。
今の斬撃はどうやら切断能力は持っていなく、ただ場外まで押すために放ったのだろう。現に、護衛の胴体は切断されていない。
「…獣人の大会なのに、1位から3位までに獣人が1人も居ないことについて一言どうぞ」
「…ノーコメントだ」
ベクアに少し意地悪な質問をしたが、答えは返って来なかった。
「次に不甲斐ない試合をしたら、お前も観客からブーイングが来るぞ?」
「…頑張るわ」
ベクアが俺の発言の仕返しをするようにそう言ってきた。
今の試合が呆気なさ過ぎて、一瞬ぼーっとしていた観客はデュラなさっさと退場したのとほぼ同時に、場外でのびている獣人にブーイングをしていた。
まあ、せっかく大会の最終日という高い競争倍率を勝って、お金を払って試合を観戦ができたのに、こんな試合では文句はあるよな。それに、普通はここまで勝ち上がったはずの4位と3位でこんなに力の差があることは無いだろうしな。
俺の試合ではそんなブーイングが起こらないように頑張ろう。
「さすがに今から飯は早すぎるよな…」
試合が早く終わったせいで時間が余ってしまった。
「適当に時間を潰すか」
「そうだな」
「はい」
特にやることもないし、のんびり時間を潰してから、早めに昼食を食べに行った。
「俺はもう控え室に行くわ」
「まだまだ早すぎじゃねえか?」
あと試合まで1時間以上もある。確かに普通ならまだ早すぎるだろう。
「ちょっと用事があるんだよ」
「そうか。じゃあ、頑張れよ」
「頑張ってください!」
「おう!」
ベクアとキャリナに見送られて、俺は控え室ではなく、治療室に向かった。
「聖女、今ちょっといい?」
「ゼロス様!怪我でもされましたか!?」
本当は朝に聖女を見つけようとしたのだが、見つからなかった。だから試合前に聖女に会うために早めにベクア達と別れたのだ。
「いや、怪我はしてないから安心して。ただ、体力を回復してほしいなって思ってさ。大丈夫かな?」
「全く問題ありません。メガリフレッシュ」
聖女はそう言って俺の体力を回復してくれた。特に実感は湧かないが、何となく少し体が軽くなったような感じがする。
「ありがとう」
「いえ。この程度いつでもやりますので、仰ってください」
やはり聖魔法は便利だよな。俺も聖女の称号が欲しくなってきた。女装して誰かを救ったりすれば聖女の称号が手に入るかな?
「じゃあ、控え室に行ってくるよ」
「頑張ってください!応援しております!」
「ああ」
聖女とも別れて、俺は今度こそ控え室に向かった。
控え室に居なくて捜索する時間も考えて早めに来たのだが、思ったよりも簡単に聖女が見つかってしまった。だからまだ試合まで40分以上あるが、その間は体を休めながら目を閉じて精神統一をしていた。
『これより!決勝戦を行います!選手は入場してください』
「…よし、行くか」
そのアナウンスを聞いて、俺は舞台へと上がって行った。
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