第331話 パーティ終了
「やっと挨拶回りが終わったね」
「そうですね」
「いや〜大変だったね」
「そうですね」
「…この後の流れってどうだったっけ?」
「そうですね」
挨拶回りが終わって、数分間だけだが、休憩の時間が与えられた。その時間内でソフィの機嫌をどうにかしようとしたが、難しそうだ。
「……すみません。今回の件に関してゼロ兄様に何の落ち度も無いことは分かっています。こうしてゼロ兄様に八つ当たりすることがどれほど理不尽であることかも…。少しだけ1人にしてください。この休憩時間でいつも通りに戻りますから」
ソフィはそう言って俺から離れて部屋から出ていった。
逆の立場になってみたらソフィの気持ちが少し分かる。ソフィに勝手に婚約者が居ることになっていたら、俺はかなりイラッとくるだろう。
とは言っても、シャナは俺ともソフィとも仲がいい。そして、ソフィは俺に男女としての好意を抱いている。この時点で俺は本当の意味では逆の立場になっても気持ちを共感することはできないのだろう。
「2人ともそろそろ…あれ?ソフィアはどこいった?」
「えっと…」
ジャドソン兄様が休憩時間の終わりを伝えに来てくれた。ソフィがここに一緒にいない言い訳がぱっと浮かんでこなくて、なんて言おうと焦っていたら、部屋にソフィが戻ってきた。
「すみません。化粧直しをしていました」
「揃ったことだし、じゃあ行こうか」
部屋に戻って来たソフィは怖いくらいいつも通りだった。いや…むしろいつもよりも笑顔だった。
「ゼロ兄様、どうかしましたか?行きますよ?」
「あ、ああ…」
そんなソフィを不気味に思いながらも、2人について行って、再びパーティ会場に入った。
「この度は私共主催のパーティにご参加ありがとうございます」
そして、パーティ会場に戻るとすぐに、父様と母様がステージに登場して話し始めた。
「今回、パーティを開催した理由は皆様ご存知とは思いますが、ここアドルフォ領の領主を長男であるアンドレイに交代しようと思います。理由は色々ありますが、アンドレイになら任せても大丈夫だと確信しています」
その後に母様も軽く話して2人はステージから降りた。そして、今度はアンドレイ兄様はステージに現れた。
「アドルフォ領、第6代目領主となるアドルフォ・アンドレイです」
アンドレイ兄様が現れてそう挨拶をすると、皆はグラスを持ち上げた。
「この私のお祝いの席にこのように沢山の方々が集まってくれたことに感謝します。では、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
アンドレイ兄様はもっと話す予定だった気がするけど、緊張して言葉が抜けてしまったのだろうか?父様も心做しか顔を顰めている。
ステージに父様と母様が戻って行き、グラスに入ったお酒を一口飲んだ人達が次々にアンドレイ兄様に挨拶をしに行った。これにも俺の時と同じように順番があるらしい。ちなみに、1度俺達が挨拶したから行かなくていいのでは?と思うのだが、それはまた別らしい。
「ゼロス様、少しお話よろしいでしょうか?」
「はい。何でしょうか?」
ステージに挨拶をしに行って帰ってきた同年代の女子?から話しかけられた。
俺達が先に挨拶に行った理由としては、ゼロスとソフィアもこのパーティに参加していますと伝えるためらしい。
「ソフィア様、少しお話よろしいですか?」
「はい」
そして、父様と母様からきつく言われているのが、話しくらいなら断らず付き合ってあげなさいとのことだ。今回はアンドレイ兄様のためのパーティで、関係ないところで不快感も持ち帰って欲しくないそうだ。だから2人には悪いけど、愛想良くしてくれと頼まれた。
それからはソフィとは話すことがなく、パーティが終わった。何度か女子の方から家に招待されたが、のらりくらりと了承はしなかった。はっきり断っても角が立ちそうだし、だからといって了承してしまうとこの場で日取りまで決められそうな勢いだった。だからどう躱すかが難しかった。面倒なダンスとかが無かったのだけは助かった。
コンコン…
「ソフィ、起きてる?」
俺は夜中にソフィの部屋をそっとノックした。本当はもっと早くソフィとの時間を作りたかったのだが、パーティ後ということもあってなかなか時間を付けるのが難しく、夜中になってしまった。
「起きていますよ。何でしょうか?」
「少し2人っきりで散歩に行かない?」
「…良いですよ」
俺はソフィと2人で暗い夜の散歩に出かけた。
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