第327話 提出
「意外とすんなりといったね」
学園への書類の提出自体はかなり簡単に終わった。
書類には「そこに行く目的」という欄があったが、それにはただ、大会観戦のためと書いておいた。獣人の大会に参加するって書いても無駄に面倒くさいことになりそうだからな。
「それにしてもテストが免除されたのはありがたいな」
「それで助かったのはお兄ちゃんだけですよ。私もシャナも今からどのテストをやっても合格できるだけの学力はありますよ」
書類を提出した時にたまたま居合わせた学園長と話をした。
「これからの学園でのテストについては全て免除しておきましょう。対校戦で特にご活躍された御三方だけ特別処置にしても反対する生徒は居ないでしょう。
3人はゆっくり獣人国観光を楽しんで来てください。ただ、学園の行事がある場合には王都に帰ってきてくださいよ」
その時に学園長からそう言ってもらった。
この話は今に始まったことではなく、元から教員たちの間で話し合っていたそうだ。その時もほぼ全ての教員はテスト免除に賛成だったらしい。
だからもうテスト免除の書類は出来ていて、あとは俺たちがそれにサインするだけだった。その書類の確認とサインで少し時間を使ってしまった。
「恐らく、学園を辞められることを懸念したんでしょうね」
「ん」
「え?」
どうやら学園長達は俺達3人が学園を辞める可能性があると懸念していたそうだ。確かに一応籍を置いてはいるが、ほとんど通ってはいない。だから辞めても問題は無い。一応辺境伯家の三男、長女として俺達は途中退学する訳にはいかないが、そんなことは学園側からしたら関係ない。
「でも、俺達が辞めても対校戦が弱くなるくらいの影響しかないよね?」
「それがそうでも無いんですよ」
「え?」
学園似通ってないんだから影響なんてそこくらいしかないだろうと思っていたが、ソフィ曰く、そうでも無いらしい。
なんでも、俺達が通っているというだけで、かなりのネームバリューになるそうだ。さらに、対校戦メンバーに選ばれたら俺達に直々に稽古を付けてもらえるという噂が広がっているらしく、それ目的に努力を積み重ねている人もいるそうだ。
なんでソフィがそんなことを知っているのだろうか?
「そんな数回俺達が稽古をするために頑張れるのかな?」
「本当の目的は稽古じゃない」
「そうなの?」
あくまで稽古を付けてもらうのはついでらしい。本当の目的は俺達に近付くためらしい。シャナは王族だし、ソフィも辺境伯の長女だ。家柄も良く、2人とも容姿はかなり整っている。シャナの顔は可愛い系で、ソフィは年々綺麗系になってきている。一応、俺もそれなりに整った顔はしているからな。シャナやソフィと同格かと言われたらちょっと微妙だけど…。そんな俺達とお近付きになる機会を作りたいが為に努力しているそうだ。
「2人ともただいま」
「あら?案外早かったわね」
「早かったですね」
俺達3人は書類も提出したので、エリーラとキャリナの待つ屋敷に帰ってきた。
「じゃあ買い物でも行くか」
そして俺達はみんなで獣人国に向かう道中に必要になってくるであろう食料や日用品などを買いに向かった。エルフであるエリーラや獣人であるキャリナはこの国では目立つので、軽く隠密をかけながら買い物をした。
「ソフィ、お土産とか持って帰った方がいいかな?」
「王都になるもので欲しいものがあったら、自分達で買ってると思います。だから特に何か買って帰る必要はないと思います」
父様達も数ヶ月に1回は王都に来ているので、わざわざお土産を買う必要はないという結論になった。
「マジックリングに入っている魔物を数体あげれば十分お土産にはなるか」
「そうですね。出す魔物と量については考えなければなりませんけどね」
「だね」
深林で狩った魔物が解体もしないで俺のマジックリングに大量に入っている。一応これらは5人のものだから勝手に全て渡すなんてことは出来ないが、数十体渡すくらいなら何ら問題ないだろう。
しかし、高ランクの魔物を何十体も渡したら、俺達の性格をある程度分かっている両親なら深林に無許可で行ったことがバレるかもしれない。これらははぐれた高ランクの魔物だと言い張れるくらいの数にしておかなければならない。
そんなこんなで買い物や獣人国に入国するための準備なんかをやっていたらあっという間に3日は過ぎていった。
「じゃあ行ってくるよ」
「いってら」
「先に行って待ってるわよ」
「お気を付けて!」
俺達は王都の外で暫しの別れの挨拶をした。
「みんなも気をつけてね」
「では、また集合場所である獣人国で会いましょう。転移!」
こうして俺とソフィは久々の家に転移で帰った。
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