第318話 話し合い

「みんな、話は聞いてたよね?これからどうしよっか?」


「どうするも何も獣人国に行かなければならないですよね?」


「そうだね」


俺はベクアに大会に参加すると言ってしまった以上、獣人国には行かなければならない。


「このまま行ったら密入国になるので、一旦王都に帰って許可書を貰いましょう」


「あ、そうだったね」


ソフィがエルフの里に来たのは完璧に密入国だ。あれは魔族達の混乱に乗じてやってきたので、ソフィに悪意なんかがあったら捕まっていただろう。普通は悪意なんて関係なしに捕まるんだけどね。

いや、そもそも俺も密入国になるよな?許可書なんて貰った記憶はない。気が付いたらエルフの里に居たんだ。まあ多分エルフの女王であるエミリーさんが何か手を回してくれたのだろう。



「シャナ、確か学園にも報告いりましたよね?」


「いる」


さすがに別の種族の国に行くには目的が観光だとしても学園にも報告がいるそうだ。ソフィとシャナは知っていたみたいだが、俺は全く知らなかった。


「エリーラは大丈夫?」


「私は女王様からどこの国に入っても問題ないように許可書を貰っているから大丈夫だわ」


エリーラは俺と一緒にいる限り、どこに行っても良いとエミリーさんに言われているらしい。ただ、エミリーさんらが呼び出した場合は応じなければならないそうだ。



「じゃあいつから王都に帰る?」


「1週間後」


俺の問いにシャナがそう答えた。そういえばシャナはあと1レベルで進化できるんだったな。なら行く前に進化しておきたいよな。


「特に反対意見がなければ1週間後にしようと思うけど、何か意見ある人いる?」


俺がそう言ったらエリーラが手を上げた。俺はエリーラに目線を移して、喋ってどうぞという意味を込めて俺は頷いた。俺の意図を察してエリーラが話し始めた。



「今のキャリナのレベルはいくつなの?」


「80まで上がりました」


たった1日で4レベルも上がったのか。レベルが高いシャナよりもレベルが上がっていないのは、単純に魔法という遠距離攻撃を取得しているかの違いだろう。魔物の中にあまり魔法を使うやつは多くなかったし、俺とソフィから借りた魔法も最初の方で使い果たしていたからな。



「今のペースだと1週間だと難しいと思うけど、2週間かからないうちにキャリナも進化できると思うわ。だったら王都に行くのはキャリナが進化するまでか、2週間経つまでにした方がいいと思うわ」


キャリナが進化しなくても2週間で終わりにするのは許可書を貰うのに手間をとって時間がかかる可能性を考慮しているのだろう。

ちなみに、ソフィとシャナによると、許可書を貰うのに1週間程度がかかるらしい。そして、キャリナに聞いたら獣人国までは馬車で1ヶ月程かかったそうだ。



「俺はエリーラの案でいいと思ったけど、反対の人いる?」


今度は誰の手も上がらなかった。

この深林にいるのはキャリナが進化するか、2週間経つまでに決まった。



「ちなみに王都から獣人国までどうやって行く?」


選択肢としてあるのはこの5つくらいだろう。

1.雇った御者に連れて行ってもらう

2.馬車を借りて行く

3.馬車を購入して行く

4.獣人国付近まで行く人の護衛として行く

5.走って行く



「まず、何か不測の事態に巻き込まれる可能性がある護衛として行くのは無しですね」


ソフィの言う通り、護衛は依頼主の都合で移動するため、遅れたりした時に急いだりはできない。また、何かあった時も依頼主の指示で動かなければならなく、自由に行動ができなくなる。

だから4の選択肢は消えた。


「馬車を借りても、購入しても帰りも馬車とは限らない」


シャナの言う通り、獣人国に馬車を置く場所くらいベクアに言えば用意してもらえるとは思う。しかし、馬車でそのまま帰るとは限らない。緊急事態の場合はソフィの転移で帰るかもしれない。

これで2、3の選択肢もなくなった。


「私達なら軽く走るくらいでも馬車よりも早いわよね?」


確かにその通りだ。本来は高価なマジックリングなんかないからこんなにの遠出では荷物が多いから馬車を使う必要がある。

それに俺達に護衛は必要ないから雇った人の荷物を持つ必要も無い。



「それに深林を外側を沿って移動するのが一番の近道ですからね」


普通なら馬車で通れない道でも歩きなら問題ない。


「話をまとめると、深林の外側を沿って歩く、または走って行くってことでいい?」


誰からも反対意見は出なかったら、移動方法はこれに決定した。深林を通るなら許可書なんていらないかもしれないが、獣人の大会に出るやつが密入国はまずいからな。あれ?魔族達は密入国になるんじゃないか?いや、そもそも魔族が街に入ることが許可されてないから、密入国なんて話にもならないか。



「じゃあこれから交代で休みながら夜まで過ごそうか」


今後の予定が決まったので、夜の為にゆっくり身体を休めるとしよう。


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