第303話 サプライズ
「あと、1日でようやく自由の身に……」
「なんかその言い方だと犯罪者みたい」
シャナから鋭いツッコミがあったが、ついに明日になったら全ての禁止事項が解除される。俺はその日を待ち望んでいた。
「別に今日は普通のスキルを使ってなら戦ってもいんだよ?」
「普通のスキルだけで終われると思う?」
「…無理そう」
今の俺が普通のスキルでの戦闘でできることは、魔法を放つか、何か物を投げるかしかできない。そんなことしかできないのなら、いっその事明日まで我慢してから一気に自由に動きたい。
「ん?」
家の外で魔力高速感知が反応した。ここには俺、ソフィ、シャナ、キャリナが居るから誰だ?
「あ、エリーラか」
よく確認してみると、その魔力の1つはエリーラのものだった。一瞬だけ警戒してたが、すぐにそれを解いた。
「お兄ちゃん…どうしてエリーラが来たと気付けたのですか?お兄ちゃんの普通のスキルにはそういった効果のものはありませんよね?あるとしたらユニークスキルの魔力高速感知ですよね?魔力高速感知は任意で発動するかを選べたはずです。何で…」
「ちょっとエリーラを迎えに行ってくるよ!!」
俺はソフィから逃げるように外に出てエリーラを迎えに行った。別に大人しくしてるんだから辺りの警戒も兼ねての魔力高速感知くらいは許して欲しい。
「おーい!エリーラ!」
「あ、あんた!起きたの…」
「ゼロス様!身体は大丈夫でしょうか!?」
「お、おん…!」
エリーラ達のところまで小走りで向かった。そして、エリーラ達が見えたところで声を掛けた。すると、エリーラよりも早くエルフの女王様であるエミリーさんが反応した。そして、文字通り俺のところまで高速で飛んできた。あまりの気迫に俺の返事が少しおかしくなった。
「ハイエリクサーのおかげでこうして助かったよ。ありがとうございました」
「それなら差し上げて良かったです。また創ることができたら差し上げますね」
「あ、ありがとう。でも、だからって無理して作らないでいいからね?」
「はい!」
ハイエリクサーがどうやって創れているかは分からないが、かなり大変だということは知っている。本当に無理してまで創らないでほしい。
「大丈夫そうで良かったわ」
「エリーラにも心配かけたみたいだな。ありがとうな。それと、エリーラも身体は大丈夫か?」
「私はあんたと比べたら全然問題ないわよ」
「なら良かったよ」
エリーラも魔族との戦いで毒を食らって倒れたとシャナから聞いた。エリーラはエリクサーを飲ませたらすぐに起き上がったと聞いていた。
「とりあえず、仮拠点に向かおうか」
「はい」
「そうね」
俺達3人は土魔法で作った仮拠点へと向かった。そして、ソフィに飲み物を出してもらって6人でテーブルを囲んで椅子に座った。
「早速本題からいきます。今回、エリーラを呼んで、さらにここに私が赴いたのはゼロス様にこれらを渡すためです」
エミリーさんはそう言うと、テーブルの上に新品のシャツ、ズボン、靴、グローブ、ローブなどを置いた。
「これらはエルフの里の職人が作った特注品です。全部ゼロス様に合うと思います。是非装備してみてください」
「え!そんなものいいんですか!ちょっと装備してきます」
俺は元々装備には拘っていなく、そこまで高価ではなくらそこら辺でも探せば普通に売っているようなものを使っていた。だからこんな良さそうな装備にはテンションが上がる。さらに、腕が消し飛んだ時にローブの袖とグローブも消滅していたからベストタイミングだった。早速俺はそれらを装備してみた。
「これ凄く付け心地がいいですね!」
俺は全身に装備をすると、居間に戻ってそう言った。
シャツは深緑色で、スボンは黒色でとても着心地が良かった。
さらに、黒い靴はワークブーツのような形で、とても軽いのにかなり丈夫そうだ。それに、サイズもピッタリだった。
そして、ローブは俺が接近戦もするのを考慮してか、そこまでダボッとはしていなく、丈が長いパーカーのような感じで、袖も剣を持つのに邪魔にならないようにほんの少し短くなっている。ローブの全体の色は黒だが、背中や袖など所々に雷のような黄色いラインが入っている。
グローブも俺の手のサイズにジャストフィットだった。握ったり閉じたりして感覚を確かめてたが、よく伸びるしいい感じだ。少し薄く作ってあるので、剣を持つ時にも悪影響はほとんどないだろう。
「お気に召したようでよかったです!それらにはあのセミの素材と精霊樹の枝をふんだんに使いました!」
「セミ?え!?セミ!?」
セミというのは、エルフの里で戦ったあとセミのことだろう。
「はい!特にそのローブはほとんどセミの羽を使って作りました。なので、高い再生能力がありますので、ローブはサイズ変更が自由です。ですので、永遠に使い続けることができます。あっ!もちろんこれよりいいローブが見つかった時は予備にしてくれて構いませんよ」
「え?こんなの貰っても良いの?」
「ゼロス様だけの特注品で作ったので、ぜひ貰ってください」
「そういうことならありがたく貰います」
着け心地が最高なので、高価なものだと分かっていてもついもらってしまった。特注品だし、返しても誰も装備する人が居ないからいいよね?
「本当は他の方々の分も用意したかったのですが、珍しい素材故に色々と試行錯誤した結果、もう素材は無くなってしまいました」
「え!?」
どうしよう…。もう貰ったことを少し後悔してきた。俺達がエルフにあげた素材を全部使ったらダメでしょ……。
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