第300話 起きる
「ん………ん…?」
「お兄ちゃんっ!!」
「ソフィ…?」
俺の意識が戻ると、もう外は明るくなっていた。そして横を見ると涙目…いや、泣いているソフィが居た。
「そうです!お兄ちゃんのソフィですよ!分かりますか!?」
「…俺のって部分以外はちゃんと分かってるよ」
「どこか身体に調子のおかしい部分はありませんか!?気分が悪かったりとかはしませんか!?」
「今のところ特に問題は無いよ」
特に痛いところとかも全くない。ソフィは俺に対して心配性過ぎるよな。俺は両手をベッドに付いて起き上がった。
「…ん?あれ?左腕?」
そういえば、左腕は神雷の時に消し飛んだはずだ。いつも通り自然に使えたから違和感がなかったが、左腕が生えている。さすがに消し飛んだ腕はエリクサーでも治らない。
「ハイエリクサーを使いました」
「あ、そっか…ありがとう」
キャリナにエリクサー系を全部出したからその時にハイエリクサーも出したのだろう。それにしても1本しかないハイエリクサーが無くなってしまった。
「そういえばエリーラとシャナとキャリナは?」
「エリーラは女王に呼ばれていたので里帰りです。他の2人はご飯になる魔物を狩りに行っています」
「里帰りって……あっ!!深林でシャナとキャリナの2人だけで大丈…あ、あれ?ここはどこ?」
今、俺がいるのは多分土魔法で作った家の一室のベッドの上だろう。部屋にある窓から見える景色はどう見ても深林では無かった。
「お兄ちゃんが眠っている間に深林から出ました」
「あ、そうなんだ」
安全のために深林から出たそうだ。深林では魔物の警戒で忙しく、ゆっくり休めないからな。
「でも、一夜でここまで色々整えるのは大変だったでしょ?」
部屋の中を見渡すと、かなり家具なんかもできている。さらに、窓から見える景色は辺りに何も障害物が無く、見渡しが良かった。これなら辺りの警戒をするのも楽でいい。こんな良い立地を暗い夜に見つけるのは大変だったと思う。
「一夜では無く、5日もありましたからね。そこまで大変という訳ではありませんでしたよ」
「え?5日?」
「はい」
「…俺が眠ってた時間は?」
「5日間ですよ」
「あっ…まじかー……」
道理でソフィがかなり心配してたはずだ。ハイエリクサーを使ったにも関わらず、5日も寝てたら誰でも心配するよな。そんなに俺は寝ていたのか…。
「何か消化に良いものを作ってきますね」
「ありがとう」
ソフィはそう言うと、水を置いて部屋から出ていった。5日間も寝ていたと聞いたら、なんだかお腹が空いてきた。
「ゼロくん!たった一撃でボロボロになってたけど、大丈夫だよね!?」
「ごめん、心配かけたみたいだな」
相変わらず毒舌のユグも心配してくれていたようだ。ユグが現れると、他の3人も現れた。
「ゼロ、意外と元気そうだな」
「まあ、ハイエリクサーを使ってもらったからな」
「妹に心配をかけるとはシスコンの名折れだぞ。同志もシスコンを超えたのなら妹に心配なんかかけるな。妹の涙で見ていいのは嬉し涙だけだ」
「ああ…気を付けるよ」
泣き出すほど心配かけたのはかなり悪いとは思っているけど、俺にはシスコンのプライドみたいなのは無いからな…。
「前にも言ったけど、何なの!あの下手くそな戦い方は!」
「うおっ!」
いきなり九尾の狐の状態のダーキに怒鳴られた。俺がダーキの方を向くと、人の姿になった。
「戦い方がなってない!まだ3人の魔族の時は良かったわよ。まだだけど。なのに!あのエンペラーリッチ?の魔族との戦いはダメダメだった!これがテストなら採点前で今すぐに補習レベルよ!何度口を出したくなったと思う!?」
獣化中は俺と話すことはできない。だから何も言えずに文句が溜まり溜まったのだろう。
「…なら解除した時に言えば…」
「あの場面になって何を言えって言うのよ!そもそもあの時はもし言ってもあれに集中して聞く耳なんか持たなかったでしょ!?」
「ごめんなさい……」
俺の言った解除した時というのは、神雷を放つ前のことだ。確かにその時に言っても色々と手遅れだ。
「何であんな自分の強みも弱点もよく分かってない剣もどきを使いたがるバカに負けそうになってるのよ!逃げようとしたら後ろに私の力を使って一瞬でも壁を作ればいいでしょ!その一瞬の隙でもゼロスなら近付くことは容易だったでしょう!?近付ければそいつに魔法を使う暇を与えないくらいはできたはずよ!」
「は、はい…」
「それにあんたは使い易い好みのスキルしか使わないわよね!?他の魔法スキルも使いなさいよ!雷電魔法すら使ってなかったじゃない!確かに威力だけなら精霊魔法には勝てなくても、使おうとすれば自分のやれることの選択肢は増えるし、相手は考えるべきことが増えるのよ!何のための多重思考よ!」
「ごめんなさい…」
めちゃくちゃ怒られている。ダーキからしたら自分の力を使いながら下手な戦い方をずっと見せられていたっていう状態だったからな…。その上、負けそうになってたんだから文句は沢山あるよな…。
「それから!」
「まあまあ、ゼロくんがダメダメなのは今に始まったことじゃないじゃん。今は病み上がり?何だからまた今度にしてあげて」
「……そうね。私も病み上がりっていう配慮が少し足りなかったわ」
ユグが俺に精神的ダメージを与えながらダーキを止めた。
「とりあえず、戦闘方法について私の中にある合格ラインいくまでは獣化はさせないから。私が常にアドバイスしてあげるわ」
「ははっ…ありがとう……」
今のような調子で戦闘中にダメ出しされるのかな?いや、さすがに戦闘中はもっと短く分かりやすく言うか。ただ、その戦闘が終わったら……うん、これは考えないようにしておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます