第274話 提案
「本来の魔族である僕の立場的にはここでダーリンを殺した方がいいんだろうね。少し弱ってるダーリンが1人でいるなんてチャンスはほとんどないからさ。でも、それをしないのは僕がダーリンを気に入ってるからなんだよ」
確かに俺が1人で居るなんて事はほとんど無いな。だいたいソフィが一緒にいる。ソフィが居なかったとしても誰かは一緒に居るだろう。
「僕はダーリンと敵に何てなりたくないんだよ。だからさ、僕のものになってくれない?」
ここで敵になりたくないから仲間になるでは無く、僕のものになれというのは魔族的な思考だからなのだろうか。
「こ…」
「あっ、聞いといてなんだけどさ、今は返事いらないよ」
「は?」
俺がイムの問いかけに答えようとしたが、先に返事はいらないと言われてしまった。
「聞いた僕が言うのもおかしいけどさ、これは絶対に断られるんだよね」
確かに断ろうとしていた。こんな提案は誰だろうと断るだろう。
「だから今は返事を聞かない。ダーリンの気持ちが変わってきた頃にもう一度聞くよ。だから頭の片隅程度でいいからずっと忘れないで考えといて」
魔族だからか、イムだからか分からないが、とても自分勝手だ。
「僕は目的も済んだし帰ろうかな。本当はもっとダーリンと一緒に居たいけど、どっかのブラコン親衛隊には見つかりたくないしね」
そのブラコン親衛隊ってソフィの事か?何かちょっと言い得て妙だな。
「あ、そうだ、これも言っておきたかったんだ」
「ん?」
イムは歩き出そうでしたが、何か思い出したのか立ち止まった。
「僕には音声は聞こえてないから分からなかったけど、勇者?達を脅してた?時のダーリンの表情はまさに魔族のようだったよ。僕はとってもゾクッとしたよ。それだけ。じゃあ、またね。頑張ってね」
イムはそう言うと、溶けたように消えてしまった。
「魔族のよう…」
その言葉に少し引っかかりながらも、イムの戯れ言と考えることにして家に帰った。そしてすぐベッドに横になって眠った。
「お兄ちゃん!ただいま帰りました!」
「……おかえり…」
…ソフィが帰ってきたようだ。あれからどのくらい時間が経った?俺はどれくらい寝られた?
「では、失礼します…」
ちょうどよく温い布団の中に何かが入ってきた。せっかく俺が温めたのに…。入ってきた何かはだんだんと俺に近付いてきた。
「って!ちょっ!」
「あんっ…!」
「まだ何もしてないんだから変な声出すな!」
俺は慌ててベッドから飛び起きた。寝ているのにベッドの中に人が入ってくるのは、その人が親しくないやつなら普通に恐怖だと思う。
「人が気持ちよく眠ってたのに、勝手に入ってくるなよ!」
「だからより気持ちよくしてあげようかと…」
「余計なお世話だよ!」
普通に起こして欲しい。二度寝しそうになってたとしても、揺すったりして起こしてよ。こんな心臓に悪い起こされ方は望んでない。
「はぁ…どうしたの」
帰ってきて俺をこんな起こし方をしてまで、確実に起こしたいのならそれなりの訳があるのだろう。
「もう夜ご飯だそうですよ」
「え?」
「はい?」
「それだけ?」
「はい」
「分かった…」
どうやら俺の思い違いだったようだ。俺達は普通にご飯を食べに向かった。
◆◇◆◇◆◇◆
「イム…この忙しい時にどこに行ってた?」
「もう!僕は僕であの5人を探しに行ってたっていうのにその言い方はひどいと思うよ?」
「………」
あちゃー疑われちゃってるな〜。まあ、これは僕の日頃の行いのせいだから仕方ないか。
「全くあいつは…まだ人間を攻めるには早いと言っていたのにも関わらず…」
「何とか人間を襲う前には止めないといけないね」
「ああ…」
さあ、この魔族達の幹部相手に僕のダーリンはどこまでやってくれるかな?部下は大丈夫だと思うけど、幹部はあの生まれたばっかりだったドラゴン魔族君とは比べ物にならないからね?ダーリン頑張ってね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます