第273話 目的
「…何の用だ?」
人が居ない路地裏まで移動してから話しかけた。
今は会いたくなかった。今はさすがに疲れが大きい。殺り合ったら負けるだろう。疲れを回復するために回復エンチャントをしたいが、その時点で敵対行動と認識されて攻撃されたら敵わない。
「用がなかったら来たらダメなの?」
「………」
「せっかく久しぶりの再会なんだから仲良く会話くらいしてよ〜」
「……」
ふざけた態度だが、全く隙は無い。
「はぁ…目的を言わないと僕とは話してくれそうもないから、目的を教えてあげるよ。僕が今日、ダーリンが1人のタイミングを狙って会いに来た目的は3つあるよ」
イムは俺が無言で見続けていると、やっと本題に入った。それにしても、そのダーリンというおかしな呼び方は何なんだ?いつから俺はお前のダーリンになったんだ。
「目的の1つ目はシンプルに優勝おめでとうって言いに来たんだよ。僕はダーリンがどんどん強くなってきて嬉しいよ」
「……ありがとう」
「えへへっ!どういたしまして!」
1つ目の目的が予想外過ぎて反応に困ってしまった。こいつらには俺の様子は見られているからどう戦っていたのとかもバレてるのか。
「2つ目の目的は警告するため」
「警告…」
「そう、警告。リュウちゃんがちょっとしくじっちゃって魔族が2つに別れちゃったの」
「2つに?」
「そう!今はまだ大人しくしている派と、今すぐにも魔族以外の知性ある種族を皆殺しにする派にね。ちなみに僕とリュウちゃんは大人しくしている派だから安心していいよ」
「………」
それはまずい。皆殺し派の魔族が何人いるか知らないが、一体だけでも街が滅ぶレベルの魔族達が本気で敵対してくるのはまずい。
「今は僕とリュウちゃんがそれに反対って理由で皆殺し派はまだ5人しか居ないけど、これからはどんどん増えてくると思うよ」
魔族が本格的に敵対してきたら、果たして俺達は太刀打ちできるだろうか?というか、魔族って今は何人いるんだ?
「そこでリュウちゃんがあること提案したんだよ」
「あること?」
「そのあることってね、「ゼロス・アドルフォの首を持ってきたら私も皆殺し派に入る」ってこと」
「ちょっと待って」
「はいはーいっ」
いや、待て。どうしてそこで俺の首の話が出てくる?単純に強い奴を消したいと言うなら、俺と共にソフィも消すはずだ。
「続きを話すよ?リュウちゃんからダーリンに伝言があるの。「お前に向かってくるその5人の魔族を皆殺しにしてくれ」だってさ」
「は!?」
いや、なんでその5人の魔族を俺に殺させようとしてんの!仲間なんじゃないの!?
「リュウちゃんと僕は立場的に反対派の魔族を殺す訳にはいかないの。反対したら殺されるっていう恐怖での支配は難しいからね。でも、面倒だから始末はしたい。
そこで僕がこの案を提案したの!ダーリンならそう簡単に負けないと思うし、私達はその様子を見れるから誰が死んだかを正確に把握することもできる。ダーリンも向かってくる魔族から逃げる訳にはいかないから戦わざるを得ない。
一応まだ表立って動きたくないから、一般人への被害は出さないようにって条件はあるから安心していいよ!」
「安心できるか!」
何で俺が5人の魔族からリュウとイムの為に狙われなければいけないんだよ…。
「5人のうち2人はあのドラゴンと同じSランクの魔物産だし、あのドラゴンの魔族よりも強いから注意してね!」
「ちょ!おい!」
今ならあのドラゴン魔族には1人でも勝てるだろう。だが、それよりも強いやつが2人に勝てるかと考えると難しい。
「…それで5人は何の魔族なんだ?」
「え?言わないよ?」
「は!?言えよ!」
「何で?僕達魔族とダーリンは仲間じゃないよね?ただ、その5人は共通の敵ってだけ。私達の立場からすると共倒れが1番嬉しいんだよ?仮にダーリン達が負けても問題ないの」
「………」
確かにその通りだ。今回、この情報を伝えてくれたのもイムの気まぐれだ。こんなふうに一見仲良さそうに話しているのは本来の俺達の関係では無い。
「そこで3つ目の目的。ねえダーリン、僕のものにならない?」
「は?」
「僕は思っていたよりも独占欲が強いみたい。ソフィアや他の人と共有するのはだめ。僕だけのものになって。そうすれば、ダーリンの仲の良い人だけは不自由なく生かしてあげれるよ」
イムはさっきまでのふざけた態度とは違い、真面目な顔で俺に3つ目の目的を語った。
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