第252話 チーム編成
「まず、皆さんからチーム分けの要望はありますか?」
対校戦メンバーでの顔合わせの軽い自己紹介の後の第一声はソフィのこの言葉だった。ちなみに一応リーダーと副リーダーである俺とソフィだけみんなの前に立って作戦会議をしている。
「私は2人または3人、計4チームでの編成を考えていますが、スキルの関係などで誰かと組みたい場合は言ってください。もちろん個人的理由の場合は却下します」
ソフィはさらにそうつけ加えた。
そしてそれを聞いて、エリーラとベクアが手を上げた。
「エリーラ、どうぞ」
「精霊を使う者同士で連携が取りやすいから私とゼロスは一緒のチームの方がいいと思うわ」
ソフィが最初に指名したのはエリーラだった。指名されたエリーラは立ち上がってから堂々と話し始めた。
「それは却下です。そんなことを言っていたら私のお兄ちゃんは3人に分身しなくてはいけません。それに、精霊同士は連携には優れますが、魔法特化のため、物理に少し弱いです。その点でも同じチームは相応しくありません」
「……」
「ちぇっ…」
それを聞いてエリーラは無言で座り直した。そしてベクアは舌打ちをして横を向いた。もしかしたらベクアも誰かと組みたいという理由がエリーラと同じだったのかもしれない。
「他に誰か言いたいことはありますか?」
ソフィがそう言うと、今度は誰からも手は上がらなかった。
「では、チーム編成を発表します」
ソフィから発表されたチーム編成はこんな感じである。
〈第1チーム〉
俺
ソフィ
〈第2チーム〉
ベクア
エリーラ
〈第3チーム〉
クラウディア
シャナ
キャリナ
〈第4チーム〉
ジョーンさん
コレンさん
モーレンさん
ちなみに第4チームは全員ほとんど初対面である。ただ、メンツは園内戦でソフィなどに負けた人達である。
「この編成は私の独断と偏見での実力順と、物理攻撃と魔法攻撃が同じになるように組ませてもらいました」
確かにこれなら物理攻撃と魔法攻撃が偏らずに上手く別れられていると思う。
「それと、似ている戦い方の人を同じチームにも入れないようにもしました」
これはベクアとキャリナのことを言っているのだろう。2人とも獣人かつ兄妹のためか、戦い方がとても似ている。もちろん獣化できるかできないかでの違いはあるけど。
「何かこの編成で質問とかありましたらどうぞ」
「何で4グループなの?去年は3グループだったよね?」
質問したのはまさかのリーダーである俺だ。今回もソフィとは特に打ち合わせをしていない。作戦などは私に任せてと言われたので、本当に任せっきりにしてしまっている。これは適材適所だと勝手に思っている。
「去年のことを考えてください。決めたグループ事に動きましたか?」
「…動いてないな」
俺は始まった瞬間に1人で走り出して玉を取りに向かった気がする。そして途中でベクアに遭遇した。
「動かなかった理由は、単純に大勢のグループということが動きにくいからです。サバイバル戦はどの国が先に主導権を握るかでその後の展開が大きく変わってきます。去年は最初からずっと私達が主導権を握っていましたよね?」
「確かにそうだな」
去年は俺がベクアを引き連れてエルフの陣地に行って、勝手に乱戦状態にした。その状態をずっとソフィが隠れて見ていた。つまり、ずっと俺らの…ソフィの手のひらの上だった。
ちらっとエリーラとベクアを見てみると、やはり思い当たる節があるのか、納得しているような顔をしている。
「その主導権を握るための攻めの行動を大勢でやっても目立つだけです。それに、お兄ちゃんのような最悪単騎でもどうにかなるような人を他の人と組ませて持ち味を消すのもダメでしょう」
俺が1人でも戦えるのは去年のサバイバル戦で分かっている。ただ、今年は勇者という不確定要素があるから分からない。
それにしても、ソフィは去年と同じようにオブラートに包んでいるが、結局は足手まといと組みたくないと言いたい気がする。それと、今のセリフはソフィなら俺の持ち味を最大限引き出せると言っているようにも聞こえる。まあ、それは確かにそうなのかもしれないけどさ。
「では、早速チームごとに戦って行きましょう」
それから試しとして、チーム同士で総当りの模擬戦をやってみた。
「全勝ですね」
「ああ」
俺とソフィの第1チームは3勝で順位的には1位だった。一応リーダー、副リーダーの組み合わせなんだから負ける訳にはいかない。
「2人ともお疲れ様です」
「おつかれ」
「お、おつかれさまです!」
何と2位は2勝1敗で第3チームだった。もちろん第2チームとは人数差もあるが、一人一人の力では第2チームの方が強い。そんな第2チームが負けたことにも理由はちゃんとある。
「何であんたがこっちに動くのよ!」
「何で俺に向かって魔法を打つんだよ!」
負けたのは息が合っていなかったからだ。初対面の相手とのチームでも。もう少し息を合わせて行動できると思うほどにダメダメだった。見ていると、お互いがお互いにやって欲しくないことをやっていたという感じだった。
「チームを変えて!」
「チームを変えろ!」
「はぁ…」
何でその言葉だけは息ぴったりで合わさるんだよ…。案外こういう犬猿の仲だったヤツらが何年後とかに突然くっ付いたりするんだよな…と思いながらどう2人を説得しようかと考えていた。すると、ソフィが俺の方を向いて何か企んだような顔をしてきた。
「確かに実力順で分けたのに、格下に負けるような2人を同じチームにして置けませんね。私の目も曇りましたね。実力順で組み合わせられなかったなんて…。お兄ちゃん、チームをどう変更しますか?」
これをソフィはあくまで俺とエリーラとベクアにだけ聞こえるように言ってきた。こんな言い方をしたらエリーラはともかく、脳筋のベクアは…。
「チームを変えるのは無しだ!おい!少し特訓するぞ!」
そう言って俺達から離れていった。上手くソフィの挑発にのったようだ。そしてこういった挑発にのってくれなそうなエリーラはと言うと…。
「……はぁ…貸1」
と、大きなため息を吐いてからそう呟いてベクアについて行った。
これで多少問題はあったが、チーム編成が決まった。これから少しの間はこのチームでの連携をとれるようにするための特訓である。あっ…もう既に連携が完璧に近い俺とソフィは何をしようか?
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