第232話 園内戦2日目

「これより2日目の第1試合を開始します!」


これから2日目の園内戦本戦が始まろうとしている。シャナに引き続き、今度の対戦相手はエリーラだ。




「第1試合!ゼロス・アドルフォ対エリーラ・アルメレク始め!」


「精霊ジール降臨、雷電トリプルエンチャント、雷電纏」


「精霊降臨」


試合が始まると、すぐにエリーラが精霊降臨をした。そしてエリーラは棒立ちで立っている。今回はエリーラはレイピアを持っていない。一応舞台内でのマジックリングなどの魔導具の使用は禁止だ。使ったらその時点で即敗退となる。つまり、エリーラがレイピアを使うことはほぼ無いだろう。



「雷縮」


武器を持ってない時点で接近戦は苦手と言っているようなものだ。だから雷縮で近付いて、エリーラに剣を振った。



「え!」


「捕まえた」


エリーラに当たった剣はすり抜けた。それもエリーラが水に姿を変えてすり抜けたのだ。精霊降臨でその精霊の属性に体を変化させられることは知っている。しかし、まだ俺はそんなこと出来る気配すらない。だからかエリーラが使えるとは思わなかった。完全に油断していた。

エリーラは水になった瞬間に水の腕を伸ばして俺の体に巻きついた。そして元の姿に戻った。

急いで精霊魔法で巻き付いている水を吹き飛ばそうとしたが、その水には雷が流れなかった。よく見ると、エリーラの周りにも薄い水の膜のようなものが張ってある。どうやら俺の雷対策は万全のようだ。これならシャナにやった雷掌握も意味をなさないな。

俺は急いで上から黒雷を落とした。しかし、それよりもエリーラの精霊魔法の準備の方が早かった。エリーラから放たれた水の塊によって、俺は吹き飛ばされた。



「いってー…」


吹き飛ばされてエリーラとの距離が空くと、巻き付いた水は無くなった。受け身を取って流れるようにすっと立ち上がってエリーラの方を見ると、苦しそうな顔をしていた。ちなみにエリーラは黒雷を躱したようだ。多分エリーラはあの体を水に変化させたやつで魔力をかなり消費したから苦しそうにしているのだと思う。なぜそう思ったかと言うと、水の膜が無くなっていて、精霊降臨も不安定になっているのが魔力高速感知でわかったからだ。



「雷龍」


精霊魔法で雷で出来た龍を3つ出した。それを一気にエリーラへと向かわせた。雷掌握を使おうかと思ったが、今はお互いに舞台の端と端にいるので範囲外だった。魔力が少なくなっていてもさっきのを見た後なので、下手に側近戦を挑むのは危険と判断した。



「水龍!」


エリーラが精霊降臨を解除して俺の雷龍の水バージョンを放った。しかし、その数は1つで、サイズも俺のやつよりも2回りほど小さかった。





「試合終了!勝者!ゼロス・アドルフォ!」


エリーラの水龍は俺の雷龍達に押し負けた。そして俺の放った雷龍を食らって舞台外へ転移した。



「ちゃんと作戦通りにいったのにダメージがほとんどないってどういう事よ」


俺も舞台から降りると、エリーラがすぐにやって来て悪態をついた。



「私も早く進化するから次は絶対に勝つわよ」


そしてそう言って去っていった。確かにもっとレベルが上がって進化していたらあの精霊魔法の威力も格段に上がるだろう。そうなっていたら危なかったのかもしれない。




「これより第2試合を開始します!」


そして俺達が退場すると、ベクアの試合が始まった。もちろん何ら問題なくベクアが勝った。それで午前の試合は全て終わった。そして午後の試合が始まった。



「これより第3試合を開始します!」


「第3試合!クラウディア・アレオーラ対キャリナ・ルキウェル始め!」


クラウディアとキャリナの試合が始まった。ちなみに俺はシャナと2人で試合を見ている。多分きっとベクアとエリーラも違う場所で見ていると思う。


試合は終始クラウディアのペースだった。魔法を上手く使ってキャリナを近付かせないように立ち回っていた。キャリナはベクアのように殴って魔法を消すことは出来ないようで魔法の対応で精一杯になっていた。

しかし、キャリナが急にクラウディアの方へ捨て身で走り出した。何回か魔法が掠ったが、クラウディアの元までたどり着いて引っ掻くようにクラウディアに攻撃した。

だが、クラウディアの周りには光魔法の結界があったのでダメージが与えられなかった。そして至近距離でクラウディアの魔法が当たってキャリナは舞台外に転移した。



「試合終了!勝者!クラウディア・アレオーラ」


そして第3試合はクラウディアが勝利して終わった。




「これより第4試合を開始します!」


「第4試合!ウルザ・ルキウェル対ソフィア・アドルフォ始め!」


そして2日目の最後のウルザとソフィとの試合が始まった。さっきの第3試合と同じような試合展開になるかと思ったが、そうでは無かった。ソフィがエンチャントをしてウルザに接近戦を挑んだのだ。メイスを巧みに動かしてウルザの攻撃を全て防いでいる。そして少しでもウルザが隙を見せれば攻撃を仕掛けていった。




「試合終了!勝者!ソフィア・アドルフォ!」


試合はずっとソフィペースで終わった。ウルザはほとんど何もすることが出来なかった。ソフィは舞台から降りる前にチラッと俺の方を見た。




「はぁー……」


読心法のせいで何を言いたいか理解出来てしまった。ソフィは俺に接近戦を挑みたいようだ。もし精霊使いが封じられたら、いくら接近戦でも長引かせられたらそこで負けだ。なぜなら、そうなると俺には魔力供給が無いからだ。でも、下手に魔法を封じられながら遠距離で戦うよりはマシな気がする。さて、どうしようかな……。

これで2日目の園内戦本戦は終了した。そしてこれからグラデンの元へ剣を受け取りに行く。俺は1人でグラデンが居る小屋に向かった。




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