第225話 神との対談2

「今回の勇者達はどこの国で生まれた?」


「神聖タグリオン、武国ガラテイン、アナタイト鉱国の3つの国からだよ。君達をリンガリア王国に転生させたのはそこだけ勇者がいなかったからだね」


俺はまず軽い質問から始めた。どうやら俺達の国から勇者は生まれなかったようだ。



「神託でもうこんな方法で勇者を探すことはしないの?」


「仮にも神である私を強く信仰している国だからこの方法で探すことは無いよ」


ちなみに勇者を探すなと神託で言っても、勇者は探していません!強い子供を探したら、それがたまたま勇者でした!何て屁理屈はいくらでもできるそうだ。そのため、今回のようなやり方で探すな!みたいに絞って言わなければならないらしい。神の言うことを聞く気無いだろ。

そしてここからは直接俺にも関係ある質問をした。



「勇者の強さは?」


「神である私が一個人のことを詳しく説明できないから大雑把に言うけど、現時点ではシャイナちゃんでも1対1なら負けないよ。でもそれはあくまで現時点だからね。勇者は戦闘中に急激に成長する時があるから気を付けて」


そんな主人公補正のようなやつまで勇者はあるのかよ…。かなりチートだな。俺も勇者の称号を獲得できないかな?



「でも、それくらいの強さで魔物達を間引くことなんてできるの?」


どう考えてもイムやリュウ達に勇者が勝てるなんて思えない。というかドラゴン単体を3人で力を合わせても勝てない気がする。



「勇者にそこまでのことは期待してないよ。ただ勇者は数が増えるような弱い魔物を多く倒してくれればいいからね。そんな突発的に現れた強い魔物や魔王をそんな称号1個与えたくらいで相手にするのは無理があるからね。あっ!でも、もちろんゼロス達のことはかなり期待してるからね?」


この神は勇者の称号を与えただけで後は放任主義のようだ。


「それにスキルレベルをMAXで与えたスキルは進化しないからね」


つまり例えば、勇者の剣術Lv.MAXを持っていてどんなにそれを鍛えても、俺の剣法Lv.1のような進化をすることが無いということだ。



「じゃあ最後の質問だ。…勇者と契約している精霊達を解放する方法はあるのか?」


俺が1番聞きたいことはこれだ。と言うよりもこれを聞くためにここに来たのだ。


「あるよ」


「良かった…」


安心した。もしこれで無いと言われたらどうしようかと思った。



「ただ解放できるのはゼロスしか無理だよ」


「俺だけ?」


「そうだよ。しかもそのためには勇者に1度でも負けてはならない。1度でも負けたら勇者はゼロスのことを格下とし見るだろう。そうなったらもう手遅れだからね」


正直この説明だけでは神が何を言いたいかがよく分からない。でも、とりあえず精霊達を解放するためには俺が勇者に負けてはならないというのは分かった。


「なら絶対に負けない」


「ああ。勇者達がどんな手を使ってきて、どんなに不利な状況になったとしても絶対に負けることだけは許されないからね」


この神に何が見えているかは分からないが、真剣な表情でそう言われた。俺はただ心の中に強くその言葉を留めながら頷いた。



「今回は精霊達には全くの落ち度は無い。私のせいでこんな事になってしまった。だからせめてもの贈り物だ」


神はそう言いながら立ち上がって俺の頭に手を置いた。


「え?なに…ぐゃああぁぁぁぁ!!!!」


そして俺に身体中を内側から書き換えられるような意味の分からない経験したことの無いような強い痛みが襲った。



「やっぱりここでも痛かったか…」


「何すんだて…!ん?」


痛みが消えて神に文句を言ったが、身体が今までよりも軽いことに違和感があった。



「贈り物は戻った時にステータスを見て確認してくれ」


「ああ……」


これでまたスキルレベルが下がっていたら絶対にぶっ飛ばす。



「あっ!時間が…!私へのご褒美の時間がない!」


神がいきなり騒ぎ始めた。発言からして俺はもう少しで元の場所に戻るのだろう。



「最後にこれは言っておく!クラウディアの姉である聖女には気をつけよ!それと、ソフィアい……」




「……ん?」


俺はそこまで聞くと、元の教会に戻って来た。最後にソフィのことについて何か言おうとしていたのか?最後まで聞けなかったから分からない。



「ふぅ…ぁっ」


立とうとしたところ身体中がさっきと同じように痛み出した。思わず蹲ってしまったが、何とか声を出すのは堪えた。そういえばあの神は「ここでも痛かったか」と言っていたな…。つまり、こっちでも痛みが来ることを知っていたな……。次会った時は覚えておけよ……。

俺は痛みが治まると教会を出た。そして心配そうに教会前に立っているソフィの元へ向かった。早くステータスを確認したいな…。







◆◇◆◇◆◇◆



「あーあ…今回は睨まれただけだったな…。罵倒も途中で止めちゃったし…。あっ!あの時に避けずにちゃんと殴られていれば……」


私はゼロスが去ったことで1人になった空間でそう呟いた。



「私の警告はちゃんと最後まで聞けたのかな?」


あれが聞けたか聞けないかで意識の持ちようがかなり変わると思う。



「これから忙しくなるな…」


ここに呼び出すだけでも他の神にバレたら大問題なのに、更にプレゼントまでしてしまった。これは隠すための作業で当分の間は忙しそうだ。


「でも、この全く休みの無い忙しさもゼロスに与えられたものだと思えば…うん、悪くないね…」


それから私はゼロスの痕跡を消す作業から取り掛かった。やはり唯一は最後の言葉だ。どうにかして伝える方法は無いか?今は忙しいから無理だけど、せめて勇者と戦う前までにはちゃんと伝えたい。


ソフィア以外は全て敵だと思って行動しろ……と。


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