第215話 剣作り1

「お、お邪魔しまーす」


「お邪魔します」


「お!来たか!こっちだこっち!」


地図でグラデンに案内されていた場所まで行くと、そこには少し大きめな古そうな小屋があった。そして小屋のサイズに不釣り合いなほど巨大な煙突も付いていた。小屋は外から見た感じでは、煤のようなもので汚れていて古そうではあるが、木造では無いし、しっかりとしていそうだ。着いたら勝手に入ってくれとの事だったので俺とソフィは恐る恐る扉をこじ開けて中に入った。すると、すぐ近くに地下に続く階段があり、そこからグラデンの声がした。俺達は階段で地下に降りた。




「広っ!」


「待ってたぞ!」


中は上の小屋の何倍もある広さだった。そして高さも低いところでも6、7mはある。辺りを見渡すと、見たことがないような機具が沢山置いてある。そして壁には工具や剣などがかけられている。



「お前達に魔力を注いでもらいたいのはこれだ」


「やっぱりこれだよね…」


地下のど真ん中に横幅10mくらいで、天井に着きそうなほどの高さをしている物が置いてあった。地下に入ってまずそれに目がいった。



「この取っ手を掴みながら魔力を注いで貰いたいんだ。2人で手を合わせることになら少し密着することになるが大丈夫か?」


「問題ないですよ」


ソフィが食い気味に答えた。元々これは複数人で魔力を込め続けるなんて想定していなかったそうだ。だから取っ手を握ろうとしても手が重なってしまうだろう。ちなみに注がれた魔力を魔導具が取り込んでそれを熱に変換するそうだ。それなら火魔法でも良くない?と思ったけど、魔導具ならグラデン達が火力を好き下げることができるからいいらしい。でも、最大火力は注がれた魔力量で決まるので、好き勝手に火力を上げることは無理だそうだ。



「それとこの地下はかなりの暑さになるが、何か温度対策できるか?」


「それは私がやりますので問題ないですよ」


グラデン達は自分だけ温度を一定にする魔導具があるらしい。一応予備もあるそうだが、剣を打っている途中で壊れた時ように出来れば自分で持っていたいそうだ。それにそれは暑さを大丈夫にするだけで熱さはどうにもならないらしい。



「それでお主の右剣に、翠剣の1本と古い直剣。左剣に翠剣もう1本と古い短剣を使うぞ?」


「了解」


ちなみに俺の好みでは、右の方が左よりも少し重く、長いのが好みだったらしい。そのため、右に大きい方の古い剣を使うそうだ。あと、同時に全部溶かして2本一気に打つ事はできないそうだ。

そして俺は翠剣と2本の古い剣をグラデンに渡した。



「では準備してくれ」


俺とソフィは溶鉱炉の横に着いている取っ手を握った。そして俺はジールに精霊界に行ってもらい、魔力を取り出せる準備を整えた。


「ソフィ?」


「何でしょうか?」


「離れてくれない?」


ソフィは取っ手を掴むと、俺の後ろに回った。そして俺の事を後ろから抱きしめた。


「溶鉱炉はできるだけ冷やさない方がいいですよね?」


「もちろんそうだ」


「なら私とお兄ちゃんはできるだけ近くに居た方がいいですよね?その方が冷気も少なくて済みます」


やられた。ソフィはこれを想定して温度管理をやると言い出したのか。



「自分の温度管理は自分で…」


「まだ魔力を取り出すことに慣れていないお兄ちゃんが魔力供給しながら魔力を注いで、さらに氷魔法のコントロールなんて出来ますか?」


「………」


確かにそれは出来ない。さらにソフィも知らないだろうが、氷魔法のスキルレベルは1になっている。スキルレベルが下がったせいで細かな魔法は使えなくなった。


「それで冷却は誰がしますか?」


「お願いします」


「そのために抱き着きますけど、もちろん良いですよね?」


「はい」


そしてソフィは俺の後ろからぎゅっと抱き着いてきた。あれ?ソフィの胸成長した?何か柔らかい感触があるんだけど……。



「夫婦喧嘩は終わったか?」


「喧嘩じゃないですよ。ただいつも通りイチャイチャしてただけですよ」


「いや、ソフィ…そもそも夫婦でも無いから」


グラデンのボケにソフィがツッコミ間違えをしてたからすぐに訂正した。



「では、始めるぞ。魔力を注いでくれ」


俺は耳にかかるソフィの息と背中に当たる柔らかい感触に若干意識が向いてしまうが、集中して魔力を注いだ。



「もっと魔力の量を増やしてくれ!」


「了解」


「わかりました」


グラデンの要望通りに魔力を注ぐ量を1.5倍くらいに増やした。これで足りないなんて言われることは無いだろう。




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