第199話 告白
「えっと…いつから好きだったの?」
何とか絞り出した言葉がこれだった。由美は少なくても、反抗期の頃は好きでは無かっただろう。ゴミを見るような目で見られてたし…。
「多分小学生の頃からだと思います。でもそれを自覚したのは反抗期が終わった時ですね」
「そ、そう…」
色々とツッコミたいことが多いけど、それを全て言っていると朝になってしまう。とりあえず次の質問で最後にしよう。
「俺の、佐藤零士のどこを好きになったの?」
今世の俺の事を好きになったというのはまだ分かる。正直、容姿は悪くないし、それなりに強い。好きになる要素はあるだろう。ただ、前世の俺の容姿は客観的に考えて中の下といったところだろう。それに運動、学問それらを取っても人並み程度だ。前世でトップクラスに優れた容姿、運動能力、学力を持った由美が好きになるのが分からない。
「自分で言うのも何ですが、前世で私よりも優れた能力を持った人を一人しか知りません。歴史上で探せばいるのかも知れませんが、昔の人の事を詳しく知る術はありません。だから前世では、その一人を除いて、私は誰よりも優れていたと思っています」
こんな事を真面目に言われても普通は鼻で笑うだろう。だが、それを納得させてしまうのが由美だ。
例えば、前世で由美がプロ野球の投手相手にバッターとして勝負したら、最初はバットがボールにかすりもしないで負けるだろう。何せ由美は野球をあまり経験していないのだから。しかし、素振りやその投手の研究をすれば、2週間ほどで毎打席ヒットを打つことは可能になるだろう。そこまで断言出来るほど由美の何でもできるという才能は凄まじかった。これは由美のことを1番近くで見ていたから分かる事だ。
「そんな私が唯一どんなに努力しても勝てないと思わせる能力を持っていた一人というのがお兄ちゃんです」
「俺にそんな才能あったか?」
前世の俺は何を取っても由美に負けていた。勝てていたところなんてないと思う。
「今世でもお兄ちゃんがよく使ってるのがありますよ?」
「今世でも…?」
今世でも使えているとしたらスキルで持ち込んだということか?それでよく使っている…。
「反射神経?」
「正解です!」
「はぁ…お前は反射神経で人を好きになるのか…」
容姿や性格で人を好きになるのは世間一般的によく聞くが、反射神経で人を好きになったって聞いたのはこれが初めてだ。
「暗算能力やジャンプの高さや絵の上手さ…別に反射神経じゃなくても良かったんです。私がどんなに努力しても越えられない物を持っていれば…」
「………」
「自分の認めたくないお兄ちゃんへの恋心と私が持っていない能力を持っているという嫉妬心で反抗期の時にはお兄ちゃんに迷惑かけた分の償いを今世ではするつもりです」
「そのことはもう許したから由美も今世で好きに生きていいんだよ」
「これは別にお兄ちゃんが許してる、許してないの問題じゃないの…。許されないと思っている私のただの自己満足です」
「そうか……」
反抗期の時は辛いこともあったが、それは前世でちゃんと謝られているから許している。だからといって、俺の妹は変なところが頑固だから無理に言っても聞かないだろう。ならもう好きにさせるしかない。
「だから私はお兄ちゃんに添い遂げようと思います」
「…ん?」
あれ?なんか少し話ズレてない?償いはどこへ行ったの?
「今世でも私は容姿端麗、頭脳明晰の才色兼備だよね?」
「それは認める…」
ソフィは容姿が優れた人が多いこの世界でも飛び抜けて綺麗かつ可愛い。そして魔法などの才能もトップクラスだ。その上、何かの作戦を考える時なんかには頭も切れる。
「そんな私の事をお兄ちゃんが大好きになってくれたら、お兄ちゃんも凄く幸せになると思います」
「おうおう……」
暴論だが、言いたいことは分かってしまうし、納得もしてしまう。
「だからお兄ちゃん…私と結婚して欲しい」
付き合うを通り越して結婚の時点で少しおかしいと思うが、ソフィの真剣な告白には俺も真摯に答えなければならない。前の時のように返事を先送りにしたりはできないし、してはいけない。
「ごめん…ソフィのことを妹として見てるから結婚とかは無理だ」
俺はソフィのことを完全に妹して見てしまった。まだ、由美=ソフィとなっていなかった時はソフィとそういう関係になってもいいかな?とまでは思っていた。少し意味合いは違うが、郷に入れば郷に従えと言うし、ソフィは兄である俺の目から見ても魅力的な女の子だから…。
しかし、由美とソフィが同一人物だと知ってその考えは綺麗に消え去った。どうしても頭の中では由美でもあるソフィと男女の関係になることを認められない。
「はい…。お兄ちゃんがそう言うというのは分かってました」
「そうか…」
「だからお兄ちゃんに私のことを妹として見ないようにしてもらうのは諦めます」
「うんうん」
「妹でもこんなに素敵な女の子なら結婚しても問題ないって思ってもらいます!」
「ほ?」
あれ?話が直角に曲がらなかったか?おかしいな…さっきまではソフィが俺の事を諦める流れでは無かったか?
「だからこれからもお兄ちゃんに愛してると言われるように頑張るからよろしくね」
「勘弁してくれ……」
俺だって男だ。妹と思っているとはいえ、手を出しても何ら問題ない超可愛いソフィに迫られてしまっては耐え続ける自信はない。まだ性欲はそこまでないからいいが、それも歳と共に少しずつ増えている。もしかしてソフィとのゴールインは時間の問題なのか…?
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