第198話 兄妹
「そうだったのか…」
ソフィが前世での妹である由美では無いか?と疑う場面は何度かあった。悪魔の2人と契約した時に転生者であるという確信が持てた。ただ、由美かどうかだけは確証がなく不安だったが、あっててよかった。
「もう…気付くの遅いよ…ばか…」
「そもそもお前から言い出してくれたらすぐに気が付いたんだ……」
「どうしたの?」
ソフィ…由美にばかと言われると、由美が反抗期の時を思い出して懐かしく感じる。あの頃は大変だったな…。そう懐かしく思いながら話していたが、途中で止めてしまった。どうしても確認したいことができたからだ。
「ソフィ…は俺が佐藤零士だと…前世の兄だと知ってたのか?」
「知ってましたよ?」
「いつから!?」
「産まれる前からだよ?」
「…え?」
なんでソフィは産まれる前から知っていたんだ?というか前世で俺が死んだということは知っているのか?
「お兄ちゃんが混乱しているみたいなので時系列順に丁寧に説明するね?」
「ああ」
「まず、お兄ちゃんが切れた電線に当たって死にました。その場所を私が訪れて、私は轢かれて死にました」
「え?電線なんかに当たってない?」
「はい。雷に打たれたんですよね?ですが、私達のところではトラックがぶつかったことで切れた電線に当たって、ショック死したことになっています」
確かに雲も無いのに落ちてきた雷に打たれて死ぬというのはおかしい。だからあの神がその辺をおかしくないように変えたのだろう。
そして由美も転生したということは、前世で俺と同じように死んだということか…。
「お兄ちゃんは落ちた植木鉢が当たって死ぬ予定だったのに、反射神経を活かして家の近くの道路までしぶとく生き残ってくれました。その結果、私の行く場所が植木鉢の落下地点から家近くの道路に変わりました。ここまではいいよね?」
「うん」
元々の予定で由美は俺の死に場所に行くことは決まっていた。しかし、俺が当初の予定通りの植木鉢で死なず、家の近くの道路で死んだ。だから由美が行く俺の死に場所が植木鉢の場所から、家近くの道路に変更になったのだろう。
「そこで私は轢かれました。その結果、私もお兄ちゃん同様に神の死ぬ予定から大きく外れたので転生しました」
「ごめん……」
つまり、由美は俺のせいで死んだようなものだ。俺がしぶとく生き残らなければ由美が死ぬことは無かったということだ。
「お兄ちゃん、次に謝ったら本気で魔法をぶつけるよ?」
「え…?怒ってないのか?」
「なんで?怒るわけないよ?」
「なんでって俺のせいで由美が…」
「はぁ……お兄ちゃんは分かってないな…」
そう言うとソフィは顔をぐいっと俺のほうへと近づけてきた。
「どのみちお兄ちゃんが死んだので、私が轢かれて死ななくても近いうちに私も後を追って死んでいたので未来は変わりません!だから死んでまたお兄ちゃんの妹として転生できたので、私はお兄ちゃんには感謝してます。怒るなんてありえないです」
「……ありがとう」
気を使って過剰に言ってくれたのだろうが、その気遣いがとても嬉しい。
「でも、これで最大の悩み事が無くなったから良かったよ」
「悩み事?」
「ソフィが俺の事を好きだって言ったやつ。あれは由美だと気が付かない俺へのイタズラだろ?」
この悩みが解決されて良かった。この事にはだいぶ頭を悩ませていた。これが解消されただけでも、ソフィに言うことを聞く権利を使った価値がある。
「…エリアロック」
「…ん?えっと…動けないんだけど…」
なんか急にソフィが過去一くらい不機嫌そうになった。そして俺の体を魔法で動けなくした。
そしてソフィの顔が俺の顔へ近付いてきた。
「ちょっと待って!」
やばい!状況が全く理解できない!とりあえずこれを解かないと!
「雷電トリプル…」
「魔法解除」
あっ…エンチャントできない…。なら剣でこの魔法を斬ろう!あ…腕も動かないんだった。ついでに剣も遠くにあるからどうしようもが無い。
「首から上は動かせるようにしています。どうしても嫌でしたら避けてください」
「あっ…」
そしてソフィと俺の唇が軽く触れ合った。そしてゆっくりソフィが離れると、魔法が解除された。というか避けてくださいから、キスをするまで3秒も無かったぞ。避けさせる気あったのかよ…。
ああ…特に大事にしてた訳でもない俺のファーストキスがソフィに奪われてしまった…。
「な、な、ななんで…」
「私はお兄ちゃんのことを異性として愛してます」
「で、でも…俺たちは兄妹だろ…?」
「兄妹でも私達は結婚できますよ?」
「そうじゃなくて前世でも兄妹だっただろ!前世では結婚はできないし…」
「あ、そういう事ですか」
混乱した頭で何とかソフィに兄妹なのにおかしいと言いたいが、上手く言えない。ソフィの柔らかい唇の感触が脳内にチラついてしまう…。
そんなしどろもどろで話す俺をソフィは不思議そうな顔で見ていた。そしてそのあと何か納得した顔になった。
「つまり、お兄ちゃんは前世でも妹のはずの私がお兄ちゃんのことを異性として好きになることがおかしい!っと言いたいんですね?」
「ああ…」
まさに俺が言いたいのはそれだ。まだこの世界で産まれ育って俺の事を異性として好きになるはまだ分かる。だが、前世でも兄妹なのに、今世で兄である俺の事を好きになるのが分からない。
「それは簡単な話ですよ?前世から私はお兄ちゃんのことを異性として愛していましたよ?」
「ちょっ…ちょちょ…ちょっと…まま待って…」
「はい。待ちましょう」
少し整理しよう。ソフィは今、兄である俺の事を異性として好き。だが、ソフィは前世でも俺の妹だ。今世と違って前世では、兄妹での結婚はできない。それなのにソフィは…由美は前世でも俺の事を異性として好きだった?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます