第185話 進化後の実力
「巨大な魔物?」
まず、蛾のような魔物がもう一体いることにも驚いた。その次にソフィにしては曖昧なことを言っていることに疑問を持った。ソフィならどのような魔物かくらいは確認するだろう。もし今回で確認できなかったとしたら、もう一度見に行くだろう。それをせずに、巨大な魔物と言っていることに違和感があった。
「姿は確認していません。いえ、できませんでしたが、10m以上の魔物がいました」
「できなかった?」
「はい。姿は全く見えませんでした。恐らく透明だと思います」
「ならどうやって確認したのよ」
「魔力感知で確認しました」
俺の後を繋いでエリーラがソフィに魔物の発見方法を聞いた。姿は見えなくても魔力は隠せていないようで安心した。それなら俺でも見つけることができる。
「魔力感知で明らかに不自然な魔力が全く無い空間があったのでわかりました」
「そういう事か…」
どうやらその魔物は魔力までも隠せるらしい。ただ、精霊樹には多くの魔力が流れているのが俺の魔力高速感知でも分かる。その大量な魔力は精霊樹の周りにも少し漏れ出ている。その漏れ出てる魔力が一部だけ全くなかったらわかりやすいだろう。でもだからこそ10m以上というだけで、詳しいサイズはソフィでも分からなかったのか…。しかし、厄介なスキルを持っていたとしても、この魔物の知能はそれほど高くはないようだ。なぜなら魔力が無い空間ができてしまうことに気付かないのだから。
それと、普通はエンペラーモスを地上に落としに行った時にそこまで周りのことを気にしないと思う。これはソフィのファインプレーだ。
「もし、そのもう一体も倒すのだとしたら、私としてはその謎の魔物をとりあえず無視して、先に蛾を倒した方がいいと思います。理由はわかりませんが、謎の魔物の方は全く動いていませんでした。変にちょっかいを出して二体同時に相手するよりも一体ずつ順番に相手した方がいいと思います」
「…わかった。それでいこう。もしそのもう一体の巨大な魔物が動き出したら、それは私達で相手をする。だからゼロス様とソフィア様はエンペラーモスを優先して殺してくれ」
「わかった」
「わかりました」
ソフィがエミリーさんと作戦の打ち合わせを素早く済ませた。謎の魔物も気になるが、まずはエンペラーモスに集中しよう。
「では、落として来ます」
ソフィが俺の方を向いてそう言うと、再び飛んで行った。精霊樹は500mくらいの高さはありそうだ。そして肝心のエンペラーモスがいるのは400mくらいの位置だ。ソフィはその位置まで30秒かからずに到着している。俺には無理そうだ…。
「キュミィィィィ~~!?」
そしてすぐにソフィとエンペラーモスが一緒に落ちてきた。さすがソフィだと思うが、落とし方がやばい。蛾と同じくらいのサイズの土魔法で作った岩を蛾に巻き付かせていた。完全な力技だ。なぜエルフを避難させたかがよく分かった。蛾は巨大な岩と共に精霊樹から20mほど離れた場所にドガンッ!という爆発音と一緒に落ちた。ちなみにソフィは途中で蛾とは離れて、俺の真上に落ちてきたのでキャッチした。
「ではゼロ兄様、お願いします」
「ああ!」
そして俺はソフィを地面に下ろしてから蛾へ向かって走って向かった。蛾に巻き付いていた岩は、落ちた時に割れているので、もう自由に動き出している。
「キュミーー!!!」
蛾は空中に5mほど浮いて羽を広げ、こちらに毒を飛ばしてきた。蛾の毒と言われて粉状のものかと思ったが、ピンポン玉くらいのサイズの球が飛んできた。しかも、羽を羽ばたかせた勢いで飛ばしている。なんか思っていたよりもかっこ悪い飛ばし方だな…。
「ほいっ」
魔力高速感知でその毒は魔力を含んでいるのがわかったので、蛾に向かいながら身体に当たりそうなのは全て斬っていく。一応危機感知の進化先である危機高速感知が結構反応しているので、当たるとやばそうだ。だが、エンチャントもしていないのに簡単に当たりそうなのは全て斬れてしまう。毒はかなりの密度で打たれているはずなのに斬るのは余裕がある。とは言っても、このままだと蛾の元に到着する時には飛び立っていそうなのでエンチャントをすることにした。
「雷電ダブルエンチャント」
いつもの雷と同じ感覚でダブルエンチャントをしてしまった。
「うおっ!」
危なかった。急に目の前に毒があったので少し焦った。まあ、普通に斬れたけど…。多分雷電エンチャントですら、ジールをエンチャントした時とほぼ同じくらいステータスが上がっている。それをダブルエンチャントしたのだから急激にステータスが増加した。そのせいで毒との距離感が合わなかった。当たり前のことだが、戦う前にしっかりと試しておくべきだった。
「キュィーー!!」
ダブルエンチャントのおかげで数秒で毒を抜けることが出来た。しかし、抜けた瞬間に蛾は触覚からレーザーを放ってきた。進化前なら慌てながら斬っていただろうが、特に慌てることも無く普通に斬ることができた。
「はっ!」
「キィーーーー!!!!」
そして飛ばれると面倒なので、ジャンプして羽の一部を斬った。右羽を3分の1ほど斬り落としたので、もうこいつは飛べないだろう。現に浮いていたのに落ちてきた。その時に斬ろうかとも思ったが、この10m近くの巨体の下敷きにはなりたくないので避けることにした。
それにしても雷電ダブルエンチャントはMPの消費が激しい。もう一体の魔物のことも考えると無駄に消費している余裕が無いので、雷電エンチャントと光エンチャントの2つに切り替えた。その時に光エンチャントでステータスが思ったよりも上がらなかった。あっ…そういえばスキルレベル1に下がったんだった……。
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