第184話 討伐開始?
「ゼロ兄様、話は聞いていましたね?」
「ああ…」
前に話していた芋虫の成長後の蛾が精霊樹に現れたというのは俺にも聞こえてきた。そしてソフィとエリーラが話していた精霊魔法が効果がないというのも。さらに魔防がかなり高いというのも全部聞こえていた。
「あれを私達で倒しましょう」
「…え?う、うん」
俺はエルフの里のために最初からそのつもりだったが、ソフィから言い出すとは思わなかった。どうソフィを説得しようか悩んでいたが、無用な悩みだったようだ。
「私も手伝うわよ」
そして俺とソフィの元へエリーラもやってきた。
「エリーラはあの3人と一緒に精霊樹にエルフを近付けないようにしてください。私とゼロ兄様が全力で戦えるようにするために」
「わ、わかったわ…」
ソフィの有無を言わさせないような強い言い方に、エリーラは少したじろぎながら了承した。
「作戦を伝えますね?」
「ああ」
エリーラは伝令のエルフに少し確認をしてからもうソフィの言う通りに行動を始めた。伝令が言うには、精霊樹の周りには多数のエルフが集結しているそうだ。それをエミリーさん、ティヤさん、ジュディーさんの3人と一緒に離れさせるために訓練場を出て精霊樹へ向かった。
「ゼロ兄様、作戦を伝えますね」
「ああ」
今訓練場に残っているのは俺とソフィの2人だけとなっている。俺は装備を付けながらソフィの作戦を聞いた。
「まずあの蛾は私が地上に叩き落とします。さらに再び飛び立たないように押さえ付けます。そしてゼロ兄様には地上に落ちた蛾を相手してください」
「わかった」
魔防が異常な程に高い蛾を本当に地面に落とせるのかと思ったが、ソフィが落とすと言うからには落とすのだろう。
「毒についても、毒による症状が少しでも出た時点で私が治療します。ただ、自分で症状がはっきり出たと自覚した時にまだ毒が回復していないようなら、遠慮せずにエリクサーを使ってください」
「ありがとう」
ソフィはそう言ってエリクサーを3本渡してきた。それを受け取ってマジックリングに入れた。
「それと、ゼロ兄様」
「ん?」
ソフィは急に両手を開いて俺の方を上目遣いで見つめてきた。
「ハグ、してください」
「え!この緊急事態の時に!?」
「緊急事態だからです」
ソフィの顔を見てもふざけている様子はない。こんな時間が無い時に言うなよ…と思いながらソフィにハグをした。
「んっ…」
こんな緊急事態にハグを要求する意味がわからなかったが、何だか心が落ち着く気がする。さらに少しだけ身体が軽くなったような気もする。不覚にも時間がある時に、長時間していたいとすら思ってしまった。
「まだか…」
「…まだ充電中です」
俺の肩に顔を埋めながらソフィはそう答えた。実際には1分も経っていないのだろうが、体感では5分くらいに感じている。
「ありがとうございました」
そこから更に倍くらいの時間ハグを行うとソフィは自分から離れた。
「では、行きましょう」
「ああ」
そして俺とソフィは走って精霊樹の元へ向かった。精霊樹が見えなくなる結界は俺が1週間の眠りから覚めた時には作動していたが、今はエンペラーモスのせいかその結界は消えていた。
「エルフはみんなできる限り精霊樹から離れてもらったわよ」
「ありがとう、エリーラ」
精霊樹に着くと、そこに居たのはあの3人とエリーラ、見知らぬエルフ2人だった。見知らぬエルフの2人も最上位精霊の契約者なのだろうか。
「ゼロス様、ソフィア様」
「なんですか?」
「…なんでしょう?」
「できる限り精霊樹を傷付けないようにお願いします」
俺とソフィにエミリーさんがそんなことを言ってきた。まあ大事な樹なのだから傷をつけて欲しくは無いよな。
「わかった」
「できる限り気をつけます」
俺はエミリーさんの方を向いて、ソフィはエンペラーモスいる精霊樹の上の方を向いてそう言った。ここからでもはるか高くにいるエンペラーモスの姿が見える。
「ゼロ兄様、準備はいいですか?」
「ああ」
ソフィはそう言うと魔法の準備を始めた。
「ブラスト」
そう唱えると、地面に魔法をぶつけて、エンペラーモスの方へ飛んで行った。地面には大きな凹みができた。
そしてソフィはこれからエンペラーモスを地面に落とすかと思ったが、何もせずに降りてきた。俺の真上に。これは俺に受け止めろと言っているのか?
「おっと…」
「ありがとうございます」
そして途中で減速したソフィをお姫様抱っこで受け止めた。だが、ソフィはすぐに俺の腕の中からトンっと降りてエミリーの方を向いて話し出した。
「…精霊樹にはエンペラーモスの他にも巨大な魔物が着いていますけど、それは知っていましたか?」
「な、何だと……」
どうやらエンペラーモスを倒して終わりという訳にはいかないようだ。
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