第180話 お見舞い?

「「「守れなくてごめんなさい!」」」


「あ、いや…大丈夫だから…」


今日は目覚めた次の日だ。昨日はご飯を持ってくるためにソフィが来ただけで、他には誰も来なかった。誰も来ないのは、病み上がりに他人に囲まれたら休まらないから来させないとソフィが言っていた。そして今はエミリーさんとティヤさんとジュディーさんが部屋に来て土下座をしている。俺のお願い?命令?のせいで敬語が使えないので、行動と言動が少しズレている。ちなみにソフィは3人よりも早く部屋に来てそれからずっとにいる。


「私たちが魔族を行かせてしまったからこんなことに…」


「本当に大丈夫だから!」


こんなこととはきっと1週間寝ていたことなのだろう。だが、それは多分進化のせいだ。普通に気絶させられたからといって何日間も寝ているなんてありえないだろう。あっ…ソフィが気絶した後のことを誰も知らないから俺がどうなったかも分からなかったのか。


「ですが…」


「いいから!」


その後は何とか説得して今まで通り普通に接してもらうことができた。そして少し話して3人は部屋から出て行った。里の状況は半壊だそうだ。家などの建物などは魔法でほぼ全て復元できているらしい。ただ、今回のことで里全体の守りが弱いことがわかったので、それら全てを改善するために動いているらしい。特に魔族相手だからといって簡単に城が破壊されるのはあってはならないとして、強度の増加を図っているらしい。ちなみにソフィが気絶した後のことは聞かれなかった。なんか無駄に気を使わせてしまったかな?今度エリーラもいる時に全部話そう。とは言っても話すことなんてほとんどない気がするが…。エリーラは元気かな?




コンコン!


「どうz…」


「お邪魔するわよ」


そして3人が部屋を出て数分後にエリーラがタイミングよく部屋に入ってきた。いや、返事する前に入ってくるならノックの意味ないじゃん…。


「良かった…。元気そうね」


「こっちこそ、腕が何ともなさそうで良かったよ」


エリーラの切られた腕は元通りに治っていた。俺のせいで隻腕になってしまったら責任を感じてしまう。


「何しに来たのよ…」


エリーラにソフィが睨み付けながら、あえてエリーラに聞こえる声でぼそっと文句を言った。


「あの時は最後まで守れなくてごめんなさい」


そんなソフィを横目でチラッと見てから、完全に無視して俺のいるベットに数歩近付いてそう言った。ちなみにエリーラが言っているあの時とはドラゴン魔族と戦っていた時だろう。


「いや、大丈夫だよ。それより腕が治って本当に良かったよ」


「ふ、ふん…」


俺がそう言うとエリーラは少し顔を赤らめて俺の方から目線を外した。


「ゼロ兄様に近づき過ぎです」


そんな俺とエリーラの間に入るようにソフィが移動して来てそう言った。近づき過ぎと言っても、まだ俺とエリーラまでベットを含めて1m弱はあるぞ。いつものソフィの方がよっぽど近い。


「あっ居たんだ。気が付かなかった」


さっきチラッとソフィの方を見てたよね?もしかしてこの2人……。


「ゼロ兄様を最後まで守れずに途中退場した人は視野が狭いですね」


「それは私の力不足を実感してるし、申し訳なく思っているわよ。まぁ…こいつを守るどころか敵に何も出来ずに、途中どころか最初に退場したどっかの人よりはマシだと思うけど」


「喧嘩売っています?」


「あら?私は特に誰とは言ってませんよ?もしかして自覚するようなことがあったのですか?ソフィアさん?」


「ふふふ…」


「ふふふ…」


この2人はがっつり仲が悪かったようだ。逆にどうしたら会ってから1週間と少しでこんな犬猿の仲みたいになれるのだろうか?


「あの日が楽しみね」


「ええ。楽しみにしてますよ」


あの日って何だ?それと、エリーラは俺のお見舞いに来たんだよな?俺よりもソフィと話していないか?これだとお見舞いよりもソフィと口喧嘩しに来たという感じだぞ?


「本当にあんたが元気そうで安心したわ。また来るわね」


「エリーラ、またね」


「2度と来なくていいですよ?」


「また来るわ」


そう言ってエリーラは部屋から出て行った。そしてソフィはちっと舌打ちをした。


「あの日って何?」


「それはですね!」


とりあえずこの空気感のまま無言は嫌だったのでソフィに話しかけた。すると、さっきまでエリーラと話していた時の不機嫌そうな顔が一変して、ぱーっというまるで花が咲いたように笑って応答した。


「ゼロ兄様が起きてから1週間後にゼロ兄様が立ち会いのもと私とあいつで模擬戦をするんですよ」


本当に俺が寝ている1週間のうちに何があったのだろうか…。一応女同士のことなので、男の俺は理由を聞いたらいけないのかもしれない。言ってはいけないことでもソフィなら構わず言いそうだし…。


「安心してくださいね?私はちゃんとエリーラを叩きのめしますから!」


「いや…まあ…頑張れ…」


「はい!」


普通に考えたら進化しているソフィにエリーラは勝ち目がないだろう。しかし、精霊魔法を上手く使えればいけなくもない?のか?でも、2人の模擬戦はちょっと楽しみだ。その後は俺も模擬戦をしてみたいな。早く進化したスキルを試したい。


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