第171話 援護
「ちっ…」
ドラゴン魔族へと走り出した時に、右足の骨にヒビが入った。さっき無茶した時よりはすぐに折れていたので、ましにはなっている。ただある程度動いたらポーションなどを飲まなければならない。そんなことを考えていたのに、俺の骨のヒビは治った。魔力感知だと、ソフィの魔力での回復魔法によって治されている。ソフィありがとう。
「それにしても熱いな…くそ…」
俺の雷電鎧とは違ってその炎自体は実体のない普通の炎だ。俺の雷電鎧のように鎧的な要素はない。ただめっちゃ熱い!剣を振っているので、直接ドラゴン魔族に触れたわけではないのに火傷するほどだ。そして火力もだんだんと増してきている。このままではまずい。
『ユグごめん、雷電鎧を使う。ユグごめん、雷電鎧を使う。ユグごめん、雷電鎧を使う。ユグごめん、雷電鎧を使う。ユグごめん、雷電鎧を使う。ユグごめん、雷電鎧を使う』
何度も心の中でそう唱えた。するとユグから投げやりな了承が出た気がした。エンチャント中にコミニケーションが取れるか不安だったが、できるようだ。これが俺の気のせいじゃなければ…。
「雷電鎧!」
エンチャント解けるな!と願いながら雷電鎧を使った。結果としてはエンチャントは継続している。ただ、ステータスの増加量が増えたので、骨や筋肉へのダメージも増えた。しかし、それらは全てソフィが治してくれている。ついでに魔力が半分以下になると、魔力が最大になるほどの雷魔法を放ってくれる。ソフィはあくまで俺にドラゴン魔族を倒させるための援護をしてくれている。ソフィは俺の援護ばかりしている気がするが、イムの相手は大丈夫なのだろうか…。
「ん…?」
「オラッ!」
ドラゴン魔族と接近戦をこうも長くやっていると、攻撃のリズムに規則性があるのがわかった。誰かに教えられたのが原因かそのリズムから外れることはほとんど無い。そしてそのリズムは切れるタイミングがある。これは大きな弱点だ。しかし、その隙に殺せるほどの力は俺にはない。ただ、もしかしたら致命傷は与えられるかもしれない。
トンットントン…トンッ
心の中で魔族の攻撃を受けながら攻撃のリズムを心の中で数えていた。そしてその時がやってきた。
トン、トトンットン。
「縮地!」
リズムが途切れる最後のパンチを縮地で躱して、ドラゴン魔族の懐に潜り込んだ。そして2本の剣をクロスして魔族に斬りつけた。
「グフッ…!」
作戦は成功してドラゴン魔族に傷を付けることが出来た。この傷はこれが原因で死ぬほど深いとは言えないが、決して浅くもない。そしてドラゴン魔族はすぐ近くにいる俺に対して、慌てて大振りのパンチをしてきた。これは間違った判断だ。近くにいるのにわざわざ大振りのパンチをする必要が無い。慌てているのが俺にまで伝わってくる。今更大振りのパンチを食らう俺ではない。それを躱してドラゴン魔族の傷の場所に剣を突き刺した。
「ガッ…」
ドラゴン魔族は歯を食いしばってそれを耐えている。鱗がない傷を狙って刺したのに、深くまで刺さらなかった。そして学んだのか、偶然か今度はジャブを俺に放とうとしている。このやっとできた隙にもっと攻撃を叩き込みたかったがしょうがない。それにこいつの近くは熱すぎる。これ以上近くにいたら火傷が酷くなる。スピードはこちらの方が上なので、ドラゴン魔族の攻撃よりも早く、俺が刺さした剣を殴り付けた。
「くそっ…」
ドラゴン魔族が俺の攻撃に合わせて後ろに強く飛んだため、あまり深くは刺さらなかった。結果としては剣を1本取られただけだ。そして後ろに飛びながらドラゴン魔族は炎を口から出そうと構えている。口から炎が漏れているからすぐわかる。剣を取りに来たところに当てる気だろう。だが、俺はあえて後ろに飛んだドラゴン魔族に向かって行った。
◆◇◆◇◆◇◆
ソフィア視点
「お兄ちゃん…すごい」
「男子三日会わざれば刮目してみよ」と言う言葉があるが、三日の64倍の期間も会っていないのだからお兄ちゃんが凄く成長している。お兄ちゃんは今まで反射神経に頼った接近戦をしていた。反射神経がいいお兄ちゃんはそれで通用していた。しかし、今では相手をよく観察して、反射神経に頼りながらも駆け引きをしている。持ち前の反射神経を最大限活かしている。私はその成長を誰よりも近くで見ていたかった…。
「ぐ、ぐぞ…」
「あら、まだいたの?」
「ぎぎ…」
僕っ子がもう人型の状態を保てないほどボロボロになっている。今では無駄に作りこんでいた綺麗な容姿は見る影もない。もうドロドロとした気持ち悪い人っぽい何かだ。
「なぜ…こんなに強い…。そしてステータスも見えない…。まさか!2回進化したの!?」
「さあ?」
「ぎゃー!」
お兄ちゃんに回復魔法と雷魔法を放ってからこいつに魔法を放った。私は別に2回進化した訳では無い。こんなに強い理由は称号のブラコンの極致に関係してるけどわざわざ教える必要は無い。
「そろそろ人形相手に遊ぶのは飽きたんだけど」
「くそ…」
頑張って人型に戻りつつあるこいつをどうしようかとお兄ちゃんを見ながら考えていたら、いいことを思いついた。
「お前を通して本体に直接攻撃できるか実験してやる」
「そんなことできる訳がはっ…!」
人形をただ痛め付けることにも飽きたので、お兄ちゃんを見ながらこいつを通して本体に攻撃する方法を探していった。
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