第152話 魔物討伐日
「今日はここから離れたところまで行くぞ」
「はい」
昨日の精霊魔法訓練が終わって寝て起きたら、もう今日は魔物討伐の日だ。今はエルフの里から出てすぐの場所だ。ちなみに魔物討伐の担当はジュディーさんのようだ。エミリーさんはエルフの女王なので何かと忙しいみたいだ。用事がない時は着いてくるらしい。
「とりあえず走っていくから、どんなスキルでも使ってもいいから着いてこい」
「あっちょ」
そう言うと、いきなり走り出した。俺は急いで雷のダブルエンチャントを行って着いていった。
「離れてきてるぞ!」
「は、はい!」
速い!離されないので精一杯だ。一応ジュディーさんは加減してくれているのか、走る速度的には俺と同じくらいだ。しかし、森の中を走るのが上手い。俺は木を避ける時に何度も減速してしまうのだが、ジュディーさんは全く減速しない。避け方が自然過ぎて、木がジュディーさんを避けているかのようにすら見える。
「おつかれ」
「はぁ…はぁ……」
そして約1時間ほど全力疾走したところでジュディーが止まった。そこで俺は渡されたMPポーションを飲んだ。
「ここら辺はAランクの魔物が出るから頑張れよ」
「…わかりました」
Aランクの魔物がいるとの事なので、ジュディーさんが止まった時に解除した雷のダブルエンチャントをもう一度使った。
「あ、そのエンチャント?ってやつは使うな」
「え……」
俺はエンチャントを使わずにAランクの魔物と戦うらしい。当たり前かもしれないが、これは俺への意地悪で言っているわけではない。
「ゼロス様は攻撃を避けることに関しては正直言うと私たち3人にも負けないくらい上手だな」
「ありがとうございます」
なんか急に褒められた。やはり褒められると嬉しいもんだ。
「だが、避けるのが上手過ぎるせいで攻撃を受け止める、受け流すのが下手だ」
騎士団長にも似たようなことを言われた気がする。俺なりに受け止めるのも受け流すのも練習したつもりだったが、あまりできていなかったようだ。
「だから強制的に逃げられないようにするために、エンチャントは使うな」
「わかりました」
確かに避けれないタイミングで攻撃が来てしまったら絶対に受け止めるか、受け流すだろう。
「あと今日のところは防御は絶対に剣で、攻撃は蹴りだけでやってもらう」
「え?」
「ゼロス様は攻撃を剣と魔法でしかやってないんだよ。せっかく足が空いてるんだから足も使わないと勿体ないだろ」
「分かりました」
確かに俺は剣を持っている時は体術なんて全く使ってなかった気がする。
「ならいくよ」
ジュディーさんはそう言うと、何かを地面に叩きつけた。するとそこからピンク色の煙が辺り一面に広がった。
「これはなんですか!?」
「虫系の魔物が好きな匂いの煙だ。いっぱい来るから頑張れよ」
そう言うとジュディーさんは空高く飛んで行った。それとほぼ同時に周りからブーンという音が聞こえてきた。煙のせいで周りが見えないので、未だあまり慣れていない魔力感知を使った。
「ぁっぶね!」
何とかこちらに突撃してくるやつを剣2本で受け止めることができた。
「ん?カブトムシ?」
俺が受け止めたのは5m位の日本でよく見る普通のカブトムシのオスだった。
「後ろか!」
だんだん煙も晴れてきて、俯瞰の目を遮るものが無くなったので、後ろからやってきている魔物に気が付いた。まだ突進しているカブトムシを抑えていたので、新しく現れた魔物には、カブトムシを抑えている剣1本を使ってガードした。
「ヘラクレスオオカブト?」
そして今度やって来ていたのはヘラクレスオオカブトのオスだった。この辺はカブトムシ系が多くいるのか?なんて呑気なことを考えているうちにまた魔物が来そうなので、先に来たカブトムシを下から蹴り上げた。
「ギッ!」
蹴りの影響でカブトムシが少し後退した。しかし、カブトムシへの攻撃に集中したせいでヘラクレスオオカブトを抑えている力が甘くなってしまった。ヘラクレスオオカブトはその隙を逃さず、角を横に振って俺の体を吹き飛ばした。
「受け止めるだけじゃなくてちゃんと受け流せよ」
「…はい」
ヘラクレスオオカブトの攻撃は剣でガードできたが、手が凄く痺れた。2体同時はなかなか大変なので、確実に1匹ずつ仕留めていこう。
「おつかれ。今日はここまでだな」
「はい…」
今日だけでカブトムシ系の魔物を15匹位は討伐した気がする。あれからもコーカサスオオカブトのオスやアトラスオオカブトのオスなど様々なカブトムシが集まった。というかオスしかいなかった。多い時だと8匹くらい同時にいた気がする。そこまで数が多いと、カブトムシ同士でも戦い始めていた。それで少しは楽できるかと思ったが、寧ろ凄く暴れるので邪魔だった。一応ちゃんと昼休憩はあった。ジュディーさんは俺をジュディーさんがいる位置まで浮かしてくれた。その昼休憩の間は魔物たち全てをジュディーさんの精霊魔法で地面に押さえつけて動けなくしていた。
「じゃあ走るから着いてこいよ」
「あっ…」
そう言うと再びジュディーさんは走っていった。俺はすっかり帰りのことを忘れていた。急いで雷のダブルエンチャントを行って着いていった。再び約1時間ほどの全力疾走が始まった。
今日も今日でくたくたになってしまった。ゆっくり寝て明日の精霊魔法訓練も頑張ろう…。
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