第131話 ドラゴン討伐3

「2人は左翼を重点的に狙ってください!」


「わかった!」


「了解したぞ!」


とりあえず飛べなくするために片方の翼を狙うことにした。ドラゴンはその巨体を翼だけで浮かせているわけではない。その辺はまだ詳しくわかっている訳では無いが、どうやら飛ぶのに魔力を使っているらしい。だからと言って翼を使っていない訳では無い。飛ぶ時の左右のバランスを保つために翼を羽ばたかせているらしい。だから片方の翼が機能しなくなったら飛べなくだろう。





「ギャガァーーー!!!!」


「嬢ちゃん、これでいいのか?」


「はい!」


そして何とかギルド長がドラゴンを押さえつけている間に左翼を機能を封じることが出来た。左翼は半場切れかけている。


「ギルド長はワイバーン達の相手をしてもらっていいですか?」


「ごくごくっ…はぁ…ありがとう…そうさせてもらうわ…」


もういつ精霊降臨が解けてもおかしくないギルド長をワイバーンの方に当てた。そしてギルド長からMPポーションを何本か貰った。


「ガァァァァァ!!!!」


そしてドラゴンは自分を地面に縛り付けていた黒い手が無くなったので、これからは自由に暴れ回るだろう。だが、さすがのドラゴンでもここまで攻撃され続けていたので、立ち上がった瞬間によろけた。確実にダメージは入っている。


「ここからが正念場です!私が隙を作ります!そこを攻撃してください!!」


「任せろ!」


「頼みますよ!」


2人がいつでも下がれる状態になったのを確認して私は魔法の準備を始めた。ギルド長からMPポーションを貰ったので、まだ転移する分を差し引いても魔力はある。私はお兄ちゃんのように雷から魔力を吸収なんて出来ないのでMPポーションを飲まなければならない。



「凍え荒れろ!ブリザードバースト!」


「ギャァァァ!!!」


「おっら!」


「ほほい!!」


「ギャガァァァァァ!!!!」


そして何とかドラゴンに攻撃されないように攻め続けた。このまま順調に勝てるかと思ったが、そうはいかなかった。



「ガァァ………」


「下がって!!」


「ガァ!!!!」


ドラゴンが上を向くと口元に炎が現れ始めた。そして下を向くと、当たり一面を炎のブレスで覆い尽くした。


「フリーズ!」


このままだとワイバーン討伐組にも炎の被害がいくので、急いで魔法を使って炎の勢いを止めた。しかし止めるのに集中してしまったことにより、ドラゴンから一瞬目を離してしまった。


「シールド!」


日に照らされていたはずなのに、急に黒い影が私を覆い隠した瞬間に何がそこにいるかを察した。急いで光魔法で私を取り囲むように壁を張った。だが、そんな急ごしらえのシールドなんてドラゴンの右前脚の攻撃ですぐに砕け散った。シールドを砕いてもまだ威力が止まらない攻撃をメイスでガードしたが、それでも何メートルも吹き飛ばされてしまった。こんな攻撃はお兄ちゃんなら避けることも簡単だっただろう……。



「早く立て!」


一瞬気を失った私が騎士団長の声で目が覚めると、目の前に今まさに火球を放とうとしているドラゴンがいた。


「うぐっ…」


何とか立つことはできたが避ける時間はない。魔法でガードしても、防ぐことは無理だろう。


「ガァッ!」


「な…」


そんなドラゴンの口を無理やり閉じさせるようにシャイナが空中に跳んで巨大な鎌を振った。ドラゴンの火球を止めることは出来たが、これではターゲットが私からシャイナに変わってしまう。


「ガァァァ!!!」


火球を止められたのにイラついたのか、シャイナに前足で攻撃を仕掛けた。空中で身動きの取れないシャイナには避けようが無いと思ったが、鎖を上手くドラゴンに巻き付けて何とか躱した。私が離れる時間を稼いでくれているのだろう。なら今のうちに私は離れないと…。


「あっ…」


私が今いる場所ならドラゴンの弱点と言われている逆鱗が丸見えである。ギルド長の黒い手に縛り付けていたときは絶対に見せなかった。だが、今は怒りによってか隠していない。それに、私が今いる場所からなら、このドラゴンの逆鱗を貫いて一撃で殺せるかもしれない。殺せないにしても大ダメージを与えることは可能だろう。私は急いで魔法の準備を始めた。



「ぐっ……」


しかし私達3人の時ですら相手をするのが大変だったのにシャイナが1人でドラゴンの相手できるはずがなかった。シャイナはドラゴンの前足で押さえつけられてしまった。そしてドラゴンは火球を放とうとしている。騎士団長やおじいちゃんに助けを求められないか視線をやったが、ブレスの怪我を治している最中だ。私はどうするか悩んでしまった。このままシャイナを無視したらドラゴンを倒せるかもしれない……。私はお兄ちゃん以外の優先順位はガバガバだ。もし押さえつけられているのがお兄ちゃんなら私は何がなんでもお兄ちゃんを助けに行っただろう。シャイナは押さえつけられた衝撃で気を失っている。お兄ちゃんならどうする?お兄ちゃんなら……助けるだろう。まだ中途半端だけど魔法を放ってシャイナを助けることにした。でも時間的に火球が放たれるのが先か、私の魔法が当たるのが先か微妙なタイミングだ。



「そのまま魔法の準備をしてていいよ。これは貸し1だよ?そう言えばお兄さんいないね?貸し1はちゃんとあなたのお兄さんに伝えておいてね。忘れたら怒るから」


「え?」


私の後ろからあの僕っ子が歩いて来た。こいつに何が出来るというのだろうか?何か異様なものを感じて鑑定したことがあるが、ステータスも極めて平凡だった。一体何をするつもりだろうか……?


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