第88話 作戦とは

「ではサバイバル戦の作戦を発表したいと思います」


次の日に練習場でソフィがそう切り出した。今日はまだ集まったばかりだが最初に作戦の発表をするようだ。


「きっとところどころ口を挟みたい場面はあると思います。しかしちゃんと説明をしますので、まずは私の話が終わるまで聞いていてください」


そんな口を挟みたくなるような作戦なのか?それよりもリーダーの俺じゃなくて副リーダーのソフィが仕切ってることに誰も何も言わないが大丈夫なのだろうか?


「サバイバル戦の多くは自軍の何かを守りながら他軍のその何かを奪ったり、壊したりする形式が多いです」


それを4校同時にやるんだからなかなか大変だ。もしどこかの学校同士が結託なんかされたら勝ち目がない気がするが大丈夫なのだろうか?


「正直言いますとサバイバル戦は相手の実力の把握が目的で、対校戦自体の勝ち負けとはあまり関係ないと思われます。あくまで対校戦のメインは総当たり戦です」


つい口を挟みそうになったが我慢した。ソフィが何かを調べていたがまさかサバイバル戦にそこまで理由がないとは思わなかった。


「しかしサバイバル戦で3位と4位を取った国が優勝したことはありません。そして他の国はそんなこと考えずにサバイバル戦もある程度全力で来るでしょう。そんな状況で私たちだけサバイバル戦を手を抜いて総当たり戦のみに力を入れて勝ったところで周りからはいい評価は得られません。なので私たちはサバイバル戦も1位を目指そうと思います」


結論をいえばサバイバル戦も1位を目指すという簡単な話だった。ならなぜそこまで遠回りしてまでこんなことを言ったのかと考えたが、きっとみんながサバイバル戦で緊張し過ぎないようにするためなんだろう。


「そこで重要になってくるのが攻めと守りに誰が何人担当するかということです」


確かにそれは重要だ。攻めや守りどちらに偏り過ぎても勝てないだろう。だからと言って両方均等にすればいいという訳でもない。


「そしてきっと他の国はまず留学生のいない私たちから先に倒そうとするでしょう」


まあ簡単に倒せるなら他の国に先に倒されないうちに倒したいよな。


「そこも考慮しまして攻めはリーダーでもあるゼロ兄様一人で担当してもらいたいと思います。そして私たちが守っている間に3つの国のチームを全て倒してもらいます」


おっと〜〜またソフィが無茶を言い出したぞ?


「おそらく留学生の1番強い者は攻めに出ると思います。そして守りは比較的弱い方の留学生が担当するでしょう」


いや、そうだとしても俺がきついのは変わらないぞ?


「ゼロ兄様は別に誰とも戦わなくていいんです。ただ相手の守っているものさえどうにかすればいいんです。それでもできませんか?」


戦わなくてもいい。それならいけると思う。ソフィは敵の攻撃を全て躱し続けてればいいと言っている。それは俺の得意分野だ。そして気が付いたがこの作戦で大変なのは俺だけではない。


「やれるよ」


「ありがとうございます。基本的にサバイバル戦の制限時間は3時間です。私たちは3時間も悠長に守るなんてしたくないのでゼロ兄様には1時間以内に終わらせてもらいます」


うわっ!俺から承諾を取った瞬間にさらに要求が厳しくなった!ソフィは良い詐欺師になれると思う。ん?良い詐欺師ってなんだ?


「私からは以上です。私の作戦に何か意見はありますか?」


ソフィがそう聞いても誰も何も言わなかった。まあそうだろうな。文句なんてできるわけないよな。


「でしたら作戦はこれでいきましょう。では特訓をしていきましょう」


パッと聞いただけではこの作戦で1番大変なのは俺だと思うだろう。しかしこの作戦で1番の要で1番大変なのはソフィとシャナの2人だろう。なぜなら俺が攻めている間は何かを守りながら留学生を複数人相手しなければならないからだ。3時間も悠長に守らないから1時間以内にと言ってはいた。しかし本音は3時間も守りきれないから出来るだけ早く終わらせてくれということだ。


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