第57話 練習

「おはよう…」


「おはようございます」


「ん」


ソフィに起こされて学園に連れてこられた。魔物を狩るのに早起きする分には平気なのに勉強するために早く起きるのは辛い。


「では授業を始めます」


そしてまた4日間の学園生活が始まろうとしていた。





「今日の授業はここまで」


「「「ありがとうございました」」」


そして今日一日の授業が全て終わり、放課後がやってきた。


「じゃあクラウディアさん行こうか」


「は、はいっ!」


そして今日から魔法などの授業も始まったので練習場が使えるようになった。今日の魔法の授業は試験と同じように的に魔法を当てるという単純なものだった。


「クラウディアさんもっと力を抜いてください」


「は、はい!」


「そこで魔力をここに集めてください」


「はい!」


「これって俺たちいらないよな?」


「ん…」


練習場でクラウディアさんに魔法を教えていた。最初は俺とシャナも教えていたが俺は伝えたいことをなかなか言葉にできないし、シャナは元々余り喋らないので教えるのに苦労していた。そしてソフィが教えるのが上手すぎた。そのためもうほとんどソフィ一人で教えている。


「ゼロ兄様!模擬刀を取りに行きましょう」


「はーい」


一旦教えるのを中断してソフィは俺と模擬刀を取りに向かった。別に模擬刀くらい一人でで取りに行けるよ?


「ゼロ兄様、ちょっとあちらに立ってください」


「この辺?」


「そこで大丈夫です」


俺はソフィに指をさされた場所に歩いて行った。ちょうどソフィ達とは10メートルくらい距離がある。


「じゃあクラウディアさん、教えた通りにゼロ兄様を的と見立てて魔法を放ってください」


「え!?危ないですよ!」


「私のゼロ兄様なら大丈夫ですよ。見ててください。ファイアアロー」


「ちょっ!おまっ!」


ソフィは俺に向かって急に魔法を放ってきた。少し焦ったが魔法を全て模擬刀で斬って消した。よりによってなんでアローの魔法なんだよ5本もあったから大変だったぞ。


「ソフィ!いきなり何するんだ!」


「魔法を放つのに的が欲しかったんですよ」


「いや!だったら魔法で作ればいいじゃん!」


「試験と同じく動く的が欲しかったんです」


「んーー!」


一応理屈が通っているので文句を言い難い。そしてさっきから無言のクラウディアさんが気になったので目線を移した。


「え…?な、なんで…魔法を斬って…え??」


クラウディアさんは混乱中だった。まぁ確かに非常識のことではあるもんな…


「このように私のゼロ兄様ならあなたの魔法では全く問題ないので遠慮なく魔法を放ってください」


「は、はい。わかりました…」


そして混乱中なのをいいことにそのまま押し切りやがった。


「ファイアボール」


「ウィンドボール」


「ストーンボール」


「ウォーターボール」


そして俺は適当に動きながら放たれる魔法をどんどん斬っていった。最初はソフィに文句を言ったがこれは案外俺の練習にもなっている。ソフィとこれと似たことをやるとソフィは必ず俺が1番欲しくないタイミングで1番欲しくない場所に魔法を放ってくるがクラウディアさんは適度にバラついてちょうどいい。


「も、もう…限界…」


そして数十分続けているとクラウディアさんがMP切れになったようだ。


「お疲れ様です」


「おつかれ」


「ん」


「あ、ありがとう…ございます」


「だんだん魔法の精度も威力も良くなってきてたよ」


「本当ですか!?」


「うん」


そして俺が直接魔法を受けることでどこが悪くてどこが良いかなども分かるようになってアドバイスができるようになった。上手く言葉に出来ない部分はソフィが通訳となって伝えてくれた。ソフィはここまで読んで俺に魔法を受けろって言ったのかな?


「今日はここまでにしましょう」


「本当にありがとうございました」


「いえいえ」


「では帰りましょうか」


「あっ俺は模擬刀を置いてくるよ」


「一緒に行きますね」


「大丈夫だよ」


「いや、一緒に行きます」


「風エンチャント」


「あっ」


ソフィを振り切るには風エンチャントまで使わなければいけない。トイレと風呂と寝る時以外は俺はいつもソフィと一緒にいる。少しはソフィも兄離れをした方が良いので一人で模擬刀を置きに行った。しかしウォレスさん達との買い物の時は素直に離れたが何が理由だったのだろうか?その理由がわかったらソフィも兄離れに近付くのだろうか?


「ふぅ…」


「アドルフォ氏」


「は、はい?」


「クラウディア氏に魔法を教えてくれていたね」


「あ、はい」


「感謝するよ」


「いえいえ」


そして模擬刀を元の場所に戻してソフィ達のところに行こうとした時に副学園長に話しかけられた。


「本当なら私たち教師が教えた方がいいのだろうが…」


「え?」


「いや、何でもない。これからも友人達と共により一層の成長していってくれ」


「わ、わかりました…」


「では私はこれで」


「さようなら…」


なんだったのだろうか?しかしそのことを考えている場合ではなかった。少しでも遅くなるとソフィに怒られてしまう。そのため急いで練習場を後にした。


「ゼロ兄様遅いです」


「ごめん」


「では帰りましょうか」


「そうだね」


そして校門前で待っていたソフィと一緒に家に帰った。


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