第23話 到着

「ふぁ〜〜」


「ゼロ兄様、だらしないですよ」


「だって暇なんだもん」


今は王都に向かって5日が過ぎた。正直オークの3、4体くらい出てきてほしいものだ。


「うーん…寝るから街に着いたら起こして…」


「膝を貸しましょうか?」


「大丈夫」


「膝を貸しましょうか?」


「大丈夫だって」


「膝を…」


「お願いするよ…」


「わかりました」


そしてソフィに膝枕をしてもらって眠りについた。というか笑っていたのがだんだん真顔になりながら全く同じ言葉を全く同じイントネーションで言うのは怖すぎる。




「やっと着いたー…」


残りの5日間も何も起きず平和に終わった。この10日間は魔物を1匹も倒せていない。ストレスだ…

冒険者に登録できるのは12歳になってからだ。なので学校に通いながら暇な時は冒険者に登録して魔物を狩る予定だ。


「ゼロス様宛に手紙が来ております」


「ありがとう」


屋敷に着くとメイドからそう言われて手紙を渡された。その手紙はあの騎士から俺宛てのものだった。早速内容を確認した。


「どうせ暇なんだろ?騎士の訓練に混ざってもいいぞ?あー…ただお前のようなお子ちゃまにはちと厳しいかもしれないなー…俺には無理だって思ったら来なくてもいいからな!」


「ほう…」


ご丁寧に場所の案内図や招待状まで付いている。これは舐め腐っている。そしてこれは俺を呼ぶためにわざと煽っているのは丸分かりだ。これでほいほい呼ばれるほど俺の煽り耐性は低くない。


「ちょっとあの騎士の所に行ってくる」


「あっ!私もついて行きます」


しかしただ舐められっぱなしというのも性に合わない。一発あの騎士の顔を殴ってやる。というか俺は一応貴族の息子なんだけどこんな口調大丈夫なのか?



「どうされましたか?」


「これを」


「はい。確認しました。ゴルディ・ジョエル様からの招待状ですね。では案内します」


「っ!」


声に出さなかったが驚いた。この国では苗字があるのは貴族の証みたいなものである。あの騎士が貴族だとは知らなかった。受付の人に案内されて騎士たちが訓練する訓練場までやってきた。


「お前ら!その程度かっ!」


「ぐっ…くっ」


「立て!」


「は、はい…!」


あの騎士が周りの騎士に稽古をつけている。え?あの騎士ってそんな位高かったの?


「ん?おう!来たな!」


「貴族だったんですか?」


「気持ち悪いから敬語は使わなくていいぞ」


「わかった」


一応貴族の息子ってだけで俺が位を持つ貴族であるという訳では無いので位を持つ騎士に敬語を使った方がいいかな?と思い敬語を使ったが無くていいと言われたので敬語をすぐとった。


「そう言えば何者なの?」


「あー…そういえば言ってなかった」


そう言うと騎士は改めて自己紹介を始めた。


「俺はリンガリア王国騎士団長ゴルディ・ジョエルだ。よろしくな」


「騎士団長!?」


リンガリア王国とは俺が住んでいるこの国の名前である。しかしまさか騎士団長とは思わなかった。


「強さ順で数えたら冒険者を除けば、この国で5本の指には入るぞ」


「まじかよ…」


俺はそんな人にわざわざオークごときを倒しに行くのに護衛をしてもらっていたのか…過剰戦力過ぎる。


「それでお前はこれを見てもまだ俺に訓練をつけて欲しいか?」


これというのはこいつの部下に当たる騎士であろう人が20人ほど地面にキスをして意識を失っている。そして4、5人は何とか膝に手をついて倒れそうなのを必死に耐えている。


「確かにな…騎士団長ともあろうお方が部下の前で無様な姿は見せられないよな…やっぱり俺は訓練しない方がいいか?」


まず勝てると思っていない。少しでも本気を出されたら俺は五分も持たずに地面にキスをしているだろう。しかし散々煽られたのだから少し位は生意気を言いたい。そんな俺の気持ちをわかっているのか騎士団長はいい笑顔だ。


「早くそこにある武器を見繕ってこい!すぐに訓練してやる!」


そしてそのいい笑顔のままそう言った。


「では私は後ろでゼロ兄様の勇姿を見ていますね」


「よろしく」


ソフィは完全な魔法型である。そんな相手に見るからに近距離専門のごりごりの物理型の騎士団長と戦えというのは酷な話だろう。俺は模擬刀の片手剣を二本、腰に携えた。


「よしっ!いくぞ!」


「こい!」


そして騎士団長ゴルディとの訓練が始まった。

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