~22~ 予兆

「……?」

 お風呂から上がったエクトルは、自分を待っていると思っていた羽琉がいなかったことに不思議そうに首を捻った。そしてテーブルの上のメモに目を止める。

 疲れた様子はなかったと思うが……。

 心配気に眉根を寄せたが、もう休んでいるのなら無理に羽琉を起こす必要はないと思ったエクトルは、また明朝起こしに来てくれるだろうと軽く考え、そのまま自室に向かった。


だがその考えは覆された。

 翌朝、定時になっても羽琉はエクトルの部屋を訪れなかったのだ。

 やはりおかしい。

 いつものように目を覚ましていたエクトルは上半身を起こし、ベッド上で表情を険しくしていた。

 昨日入浴する前までは普通だった。エクトルが上がった後から異変は起こった。いつもなら入浴後にリビングで羽琉と甘いひとときを過ごすのだが、昨夜は先に休むとの書き置きを残し、羽琉は部屋に籠っていた。明らかにエクトルが入浴中に何かあったと分かるが、その何かは全く分からない。

「羽琉の部屋に様子を見に行くか……」

 もし体調が悪いのなら早めに病院に連れて行きたい。会社を休んででも羽琉に付いて行こうと思ったエクトルは、身支度を整えるとすぐ羽琉の部屋へ向かった。

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