第8章 2 ひとりぼっちの初詣

元旦午前10時―


太陽がさんさんと照り付ける部屋で私は暇を持て余していた。


「はぁ~・・・暇だなぁ・・・。」


テレビのリモコンをパチパチいじっていたけど、お正月番組なんて何所も似たような内容しか放送していない。


「もう、見るのやめよう。」


プツッと電源を切ると、私はベッドにゴロリと横になってスマホに手を伸ばして、画面をタップしてため息をつく。


「やっぱり・・着信は入っていないか・・・。」


そしてスマホを枕元に放り投げると天井を見上げた。


「まさか・・・こんなお正月を迎える事になるとは思わなかったなぁ・・・。」


私は去年のお正月の事を思い出していた。去年は年末にお姉ちゃんと2人でおせちを作って、夜中に年越しそばを食べて・・翌日の元旦はお姉ちゃんに誘われて進さんとお姉ちゃんの3人で車に乗って有名な神社へ初詣に行って・・とても楽しかった・・。


「去年のお正月は・・・幸せだったな・・まさかこんな事になるなんて・・。きっと亮平は今頃お姉ちゃんと一緒に・・」


そこまで考えて私はベッドから起き上がった。


「ううん、駄目駄目!お正月なのに部屋で1人で過ごしているとどうしても暗い考えに囚われちゃう・・。よし、友達に連絡入れて誰か一緒に初詣に行けないか聞いてみよう!」



20分後―


「は~・・・全員駄目だったなんて・・・。」


私はスマホをテーブルの上に置くと溜息をついた。5人程の女友達に連絡を入れたけど、全員彼氏と初詣デートの真っ最中だった。


「仕方ない・・・1人で初詣に行ってこようかな?」


でも1人きりで遠くの神社に行くつもりはない。


「何所かこの近くに神社が無いかな・・?あ、あった!えっと新小岩香取神社・・。よし、この神社に行ってみようっと。」


私は早速立ち上がると準備を始めた―。



****


新小岩香取神社は新小岩駅から徒歩約13分と説明があった。バスもあったみたいだけどもどうせ暇だったし、運動不足解消の為にも私は歩いて神社へ行くことにした。


「ふぅ~・・寒い・・・。」


暖パンを履いてダウンを着てマフラーを巻いているけども、今日は格別寒い日だった。日差しはあるのに、冷たい北風が吹いているので自分の体温が奪われて行きそうだった。


「うう・・・こんなに寒いなら家にいたほうが良かったかな・・・。」


私は早くも後悔し始めていた。でも首を振ってその考えを打ち消す。


「ううん、駄目駄目!だって今から向かう神社は厄除け神社なんだから・・!弱気な事言ってられない!」


そして自分を奮い立たせ、香取神社へ向かって私はひたすらナビを見ながら歩き続けた―。



****


 神社はそれ程大きくは無かったけれども氏神様としてご近所さんに愛されているのか、境内には多くの参拝客が来ていた。私も他の参拝客に習って手水舎で手と口をすすぐと、参拝の列に並んだ。

約15分程並んでようやくお賽銭箱の前に辿り着いた私は5円玉を放り投げて鈴を鳴らしてお祈りした。勿論、私のお祈りする事は一つしかない。


「どうぞお姉ちゃんと仲直り出来ますように・・・。」


私の今の願いはただ一つ。お姉ちゃんと昔のような関係に戻って・・・あの家で元のように暮らしたい。本当はもう一つ願い事はあるけれど、それはあまりにおこがましい願いだから・・・。でもせめて、お姉ちゃんとは仲直りしたい。だってたっ2人きりの姉妹なのだから―。



 参拝した帰り・・・私は1人、とぼとぼと他の参拝客に混ざって家路に向かっていると、突然スマホが鳴り響いた。


「電話・・・誰かな・・。え・・?」


電話の相手は亮平からだった―。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る