超現実世界

十一次元 独奏

 ここまで読み進めてくださり誠に有難うございます。

 時折、妙ながあったようですが、大事に至らず、よかったヨカッタ。


 そろそろお気づきかとは思いますが、この『無色茶論』は「科学」をブッ壊して再構築したSF世界『夢幻狸の琥珀世界アンバーワールド』についてひたすら語るエッセイです。

 銀河の彼方で弦楽器・竜図リュートをかき鳴らし、に基づいた意図イトを奏でる。

 十二本の弦が時に絡まり響き合う。それが【独奏科学】。

 従来の数学や物理学とはあまり関係がありませんので、その点ご留意ください。



 さて、アンバーワールドは "Bernsteinべルンシュタイン"(燃ゆる石)とか『太陽の石』とか言われる琥珀アンバーを核とした情熱新星。

 をモチーフにデフォルメされた者たちが、"electricity "や"electron " にビビビッと動かされ、それぞれの(営み)を(鑑賞)し合う世界です。


 時々どこかの誰かに響くかもしれない感応小説。という形で記述され、することで、を生み出します。


 何かと読んだり書いたりするのが好きな彼らからすると「はSF小説に登場する」と考えられています。



   *



◉私の小説を既に読んでくださった方にはお礼を込めて

◉途中や未読の方にとっては道標となるよう

◉次作のエッセンスもひっそり忍ばせて


 そんなつもりで用意した『無色茶論』。


 どのような世界もに満ちていて、意味の有りそうなことを拾い食いしているうちに、

 そういう「科学」本来の面白姿を私は【独奏科学トンデモ小説】にしますから、物語のそのもの。トラエドコロがないと思います。一般的なSF小説は、はじめに舞台設定や世界観を提示することが多いですから、それとは逆行しているかもしれません。


 でも、そんな私のSF界カオスを歩き、面白味を見出してくれる意伝子はみんな『科学者』。<SCIENCE FANDOM;SF>なのです。アンバーワールドも、お付き合いくださる皆さまも、SFというわけです。


 とは、よくものでも懲りずに眺めのことですから。


 言いたかったのはそれだけです。


   *


 『無色茶論』は私とっても、自身の創作について落ち着いて考えてみる良い機会になりました。それもこれも集まってくださった皆さまのお陰。感謝感謝。美味しいチョコレートのお店に一緒に行きませんか、とお声がけしたいくらいなのです。


 さて、どうでしょう。


 わたしの人とナリが丸ハダカになったような、狸に化かされただけだったような、複雑な心境であれば大成功。きっと老若男女のいずれかすら判らない。

 わたしは狸。さすれば今日も毛皮を被って電竜に揺られ、流離さすらいながら、ウトウトすることが出来ましょう……




   * * *




 あ〜、そういえば、『翡翠カワセミの森』は土から顔を出したの初邂逅をした物語だったけれど、そのことは上手く隠せていたのだろうか。


 植物の芽にとって、初めて見る光は眩しくてよく解らない存在。しかしその温もりは確かに心地よく、誰をも魅了する力に満ちている。自分を色めき立たせるこの相手に陶酔してしまっても大丈夫だろうか。

 頭で考えてはみても、心はすでに導かれているのだけど……


 光にとって生まれたばかりの萌芽は祝福すべき存在。一心に愛情を注ぐことで色づき、甘い果実を実らせる。君はその甘美な可能性を秘めているんだ、何も怖がることはないんだとそっと囁くことで、まだ幼い芽に根を張り枝を伸ばさせる。

 溢れんばかりの光の愛情を受け止める準備をさせるのだ。


 いずれ植物は豊満な葉を茂らせ、赤い実を宿すだろう。

 人はそれを<SPECULATIVE FRUITS;SF>と呼ぶ。植物それ自身も、艶めいた果実も、それを食む動物も、光は万物に降り注ぎ、色を与え愛す日が来るだろう。

 あれは、だったのだから。むにゃむにゃ……








 ぷわーん……パチン! (狸の鼻提灯が膨らみきって弾ける音)







 ア? ああ、乗り換えですか。ちょっと……うたた寝してしまいました。いえいえ、大丈夫ですよ。本を読んで夜更しを少々。


 えっと、『翡翠の森』?

 ああ、あれはをモチーフにしたお話でしたね。


 『光合成』は自然界において観測される『恋愛』というの一つです。あのようなによる現象は面白いものです。


 例えば、光合成色素搭載ソーラーパネル型の電動式・葉緑体クロロプラストトロッコは光を浴びると、カタカタと高い位置まで運ばれる。それに乗ってしまえば、ジェットコースターよろしくビュンビュン走る。過ぎゆく景色からせっせと果実をもいで持ち帰り、最後にアップルパイができ上がる美味しいハッピーエンド。


 それが。ま、恋愛ジャンルの定石ですね。

 独奏科学における空即是色ごうせいの一種とも言えます。


 かの有名な創作家さっかである一石の翁かずいしがSFの異種変愛奇譚として発表した『光電効果』という物語がありまして、その中で語られた『光よ、電子に愛を注げ』というお話の二次創作です。

 



 じゃ、ワタシはちょっと、売店に寄っていきますんで。


 よいしょっと。


 ではでは。




   *




 ふう。ちょっと気ぜわしい乗り換えでしたね。


 えっと、『竜の爪』ですか? それは……まあ少しくらいなら。



 かのアンバーワールドの人達は、なんだかよくワカラナイものや、どうしようもないことを解決してしまうような機械マシンじみたものは何でも「竜」と呼んでおりまして、時折、のような扱いをすることもあります。

 要はによってが変わってくるのです。

 ソラを翔んだり走ったりするような、ワケのワカラナイものも全部ぜんぶ「竜」。

 ソウイウ意味では、一体、といった視点で眺めてみるのもオモシロイかもしれません。


 と、言いつつも「竜」には混沌カオスとか、自然の驚異オモシロミとか、その他もろもろ複雑に意味・象徴を絡めておりまして……色んな姿をしていると言いましょうか。

 ユングの心理学的な見解では、西洋を中心としたドラゴンを退治をしてお姫様と結ばれる英雄のお話は、「オトコノコが母親(竜)の呪縛から逃れて自らの配偶者を見つけるストーリー」という考え方もあるようで、『竜の爪』もそういった寓意のようなものも無くはないです……




(……今、の話をしてしまった気がしますね……)




 皆さま! こちらの『オブリビエイ糖チョコ魂C』はいかがですか? 


 遠慮なさらず、どうぞお一つ。

 口にしましたならば、すぐさま体温に溶かされ全身に散逸し、カロリーによってが燃え尽きますので、スッキリしますよ。

 ええ。白銀狼ウルフたちは、こういったものを発明するのが得意ですから。




 ともかく、登場人物は象徴だったり、をモチーフにしていることが殆ど。例の白黒の四人は一蓮托生のみたいなものですし、あの双子もある自然現象をモチーフにしているので、なのです。

 ソウイウ意味では、八次元の『男女区別』のお話もなんとなくお察しいただけるでしょうか。アンバーワールドでは曖昧な概念なのです。


 私の趣味? ま、自然現象のを嗜むことでしょうか。


 ならば、ついで……ですけれど、太陽はで表面活動が活発になる(黒点が増えたり、フレアやバーストといった爆発が頻繁に起こる)ことが知られていて、ソウイウ時は太陽風が激しく吹き出します。

 で、太陽風のような電離気体プラズマが地球の磁場とドンパチすると、激しい磁気が起きることもありまして。そうすると、だとか人工衛星ドラゴン通信機器いでんしがブッ壊れるとか、起こっちゃう。

 は十一年をカウントするのようなものですけれど、そういったもまた、「竜」の仕業ではないかと噂されてしまうのです。

 ま、こんなことは小説には書きませんね。なぜなら、真面目に科学を眺めると全部ぜんぶファンタジーですから。不思議な話にしかなりませんよ。



   *



『只今〜四月〜四月を通過しております。次の停竜駅は〜五月〜五月。それを過ぎればまもなく〜GW〜GWを通過します。運が良ければ〜宙翔ぶ魚を観測できるでしょう。皆さま〜お誘い合わせの上、お手元の窓にお集まり下さい』



   *



 ああ、そうなんですよ。このSF世界には、宙を泳ぐが棲息しているそうで。それっての一種でしょうか。親子で一緒に泳いでいることが多いそうで。ペンギンも宇宙ソラを翔ぶみたいですし、なんとも不思議なものです。

 そういったがいることも、やはりなんですね。


 ワタシも有名創作家さっか一石の翁かずいしを見習って、SF好きの人には勿論、そうでない人にも入りやすい雰囲気のSFを提供するべく筆をにぎにぎしております。

 とはいえ、どんなものを入りやすい、読みやすい、オモシロイと感じるかは人それぞれ。


 だから結局のところ、自分がオモシロイと思ったことを面白がって書けば、少なくとも一人を確保できるので、それでよいかとの結論に至りました。「好きにやっておしまいなさい」という天啓を得たのです。

 ま、こんなことは典型的な話でしたね。

 


 ワタシの執筆目標は『噛めば噛むほど旨味の出る小説』を書くことですから、後からでも、あの時のアレはアレだったのではないかと気になってしまうような、そんな作品を目指して精進しております。


 どゆこと? を楽しんで貰える筆力をマスターしたい。


 エッシャーの絵みたいな小説を書きたいなあと夢想しつつ、そんな奇想建築を創って人を陥れるのはヤメロという理性の鎖に捕らわれています。あれは外から眺めるからこそ、オモシロく正気で居られる世界でしょうから。

 そもそも、あんな緻密な設計は難しいので、全くできる気はしませんが、のです。


 世界の片隅で種を蒔いて樹を育て、<SPECULATIVE FRUITS;SF>に手を出す誰かをひっそりと待つ。


 『有り得ないけれど、在るかもしれない世界』を構築し、可能な限りの狭間を低空飛行します。

 「こういう奇想空層レイヤーを垣間視た」という現実世界のの一片として、どこかの誰かにすれば万々歳。



   *



『皆様〜、本日は〜、十一次元までご乗竜くださいまして〜、誠に有難うございます。改めて、心より御礼申し上げます。

 まもなく〜、十二次元〜、十二次元へ跳躍いたします。これより先は〜。十二次元は創作する者のに点在しております。

 この先〜無数の『十二次元』に邂逅する可能性〜あり。

 どうぞ〜お誘い合わせの上、五次元超越ください。

 優雅な旅のお供には〜ささやかな〜チョコレート、チョコレート〜などはいかがでしょうか。ブラック〜、ビタ〜、ほろ苦〜。ご入り用の際は〜通りすがりの狸に、お気軽に〜お声がけ下さいませ〜』



 それでは、よい旅を。





 














 あ、そうだ。


 皆さん。岩石クッキーでも食べますか? ええ、さっき売店で買ったんですよ。見た目はゴツゴツしてますけどね。チョコチップ多めのサクサク系です。もう少しで終着駅ですから、それまでツマんで……

 


 コーパルと蒼翠そうすい



 何ですか、それは……皆さん、化かされてやいませんか? 私はこの無次元列竜で、一駅目から、ずっと皆さんと…………


 人を騙すポンコツ狸ロボットはお前だろって……ええ!? 


 そ、それは誤解では?


 私は……この重八次元切符で、皆さんと無限軌道の旅を……


 は、話が長い? 無限増殖する狸に付き合ってられない?


 ちょっ……待ってください! 皆さん! 無次元はすぐそこですよ!


 降りちゃうんですか? ここで?


 そんな! 


 待っ……



 塵リリリリリリリリリリイリリ入りりりリリリィン


 プシュー…………




*ヂ・エンド*





---------------------

最後にもう一話。この物語の『夢幻狸の琥珀世界アンバーワールド創世記』を記して完結とします。





【参考文献*インスピレーションの原泉】

◉池内了 著, ヨシタケシンスケ 絵. 『時間とは何か』講談社. (2008)

◉茂木健一郎 著. 『感動する脳』PHP研究所. (2007)

◉ジェイムズ・グリック 著, 夏目大 訳. 『タイムトラベル「時間」の歴史を物語る』柏書房, 東京. (2018)

◉マーカス・チャウン 著, 長尾力 訳. 『奇想、宇宙をゆく 最先端物理学12の物語』春秋社, 東京. (2004)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る