出世はしてる
「……」
夕食を食べ終えた後、結局ティールは酸のモンスターを生み出して護衛を任せることはなく、結界を張って見張りに参加していた。
(分かってはいたけど、もの凄く暇過ぎるな)
現在、ティールはボルガとソニアと一緒に見張りを行っており、時間になればラストたちと交代する。
火は着けたままなので、周囲はそれなりに見える状態。
いきなりモンスターが襲い掛かってきたとしても、一度はティールの結界が耐える。
そしてよっぽどの強敵出なければ、ティールの瞬足で追いつき仕留められる。
ボルガたちはティールが結界のスキルを持っていると知った時は、再度驚かされたがティールが普通の少年ではないということは既に把握済みなので、結界の強度は信用している。
ただ……それでも見張りを交代するまで、退屈なことに変わりはない。
体を動かして時間を潰す……なんてことを一瞬考えたが、もしもの時にスタミナ切れで動けないなんてことになれば、アホ過ぎて笑えない。
早く時間が経たないかと考えてるティールの元にボルガがやって来た。
「はは、やっぱり見張りの時間は退屈だよな」
「そうだな……暇だ」
「なぁ、ティールは好きな人がいるのか?」
「……唐突な質問だな」
「そうか? 単なる会話の種の一つだろ」
ボルガの質問には、そこまで深い意味はない。
意味はないが、ティールはそこら辺の十二歳よりも他方面で優れている。
それを考えると、期待出来る答えが返ってくるのではと思えた。
「ん~~~~~……子供の頃に、って言うのはおかしいか。今もまだ子供だし。ただ、まだ村を出る前に……多分
、好きな子がいた」
「多分ってのはどういうことだ?」
「本当にまだ幼かったんだ。好きな理由も……単純に近くにいる存在で、可愛かったから……そんな感じだったと思う」
「幼馴染って奴か……まぁ、その感覚はなんとなく分からなくもないな」
ボルガは貴族の令息だが、初恋は歳がそれなりに近いメイドだったことを覚えている。
ただ、その初恋は呆気なく散った。
「でも、その子は同じ幼馴染? のやつに惚れてたというか、好きになってたというか……想いを伝える前に終わってたな」
「ティールならその子を振り向かせたんじゃないか?」
「俺だって最初から色々と出来たわけじゃない。そいつは俺よりカッコ良かったし、実戦的な意味では俺の方が強くなったかもしれないけど、そいつだって真面目に努力し続けてた……それに実力云々でそう簡単に相手の気持ちを変えられないだろ」
「まぁ……だな。そしたら、世の中顔とか関係無しに実力がある奴だけが異性から好かれることになるな」
「でも、顔は良くないからせめて実力だけでもって理由で強くなろうと思った部分はある」
部分というよりも、強くなろうと思った動機はそれが全て。
だが、さすがにそれだけが理由で頑張って努力し続けたと言うのは恥ずかしいので、若干言葉を濁して伝えた。
「……はは! ティールって結構単純なところあるんだな」
「子供だからな。そりゃ単純なところがあってもおかしくないだろ」
「別に馬鹿にしてないって。そういえば、その好きだった子とかカッコいい幼馴染とかは今どうしてるんだ?」
「村に大きな都市の学園に所属してる教師が来て、学園に入学する実力があるかどうか子供たちにテストして、それに受かったから今は学校で勉強して……いや、今の時間だともう寝てるか」
「へぇ~~。それは大出世……するかもしれないな。学園で優秀な成績で卒業したやつはいきなりDランクで冒険者としてスタートなんだよ。あっ、でもティールは既にDランクだったよな……圧倒的にティールの方が大出世してるな」
「ま、まぁ出世してると言えば出世してるかもな……とにかく、恋愛には今のところあまり良い思いではないかな」
交代までずっと恋愛について話し続けたティールとボルガ。
二人の会話は少し離れた場所で見張りをしていたソニアに聞こえており、意外とそういった話が好きなソニアは会話に参加したいと思いつつも、男二人のそういった会話に割って入るのは良くないのではという思いがあり、交代までずっとモヤモヤし続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます