二人にとっては珍しくない

「……結構な量だな」


「そうだな……ただ、俺たちが倒したモンスターの数を考えれば、妥当ではないか」


目の前に置かれている素材の量を見て、ティールは驚いたがラストはいつも通りの表情。


しかし、内心では少々驚いていた。


(しかし解体された素材の量を見ると……改めてあの戦いで、多くのモンスターを倒したのだと実感させられるな)


普段から遭遇したモンスターは全て倒すスタイルでやっている二人だが、前日の戦いで倒したモンスターの数は圧倒的であり、一日で倒したモンスターの数を余裕で更新していた。


「俺たちも久しぶり一度に大量のモンスターを解体したぜ。今二人の目の前にある素材たちが、言われた通り二人が倒したモンスターの分だから安心してくれ」


討伐を終えた後、どのパーティーのメンバーがどのモンスターを倒したのか。

その認識を確認し合い、きっちりと別けられている。


基本的には止めを刺したパーティーが死体の所有権を持つ。


このルールを悪用する愚か者が偶にいるが、先日の討伐戦でその様なあくどい真似をする者は一人もおらず、確認は一悶着起こることなくすんなり終わった。


ただ、立場上はルーキーである二人が多数の死体の所有権を得る結果となり、現状に至る。


「まっ、全部売るってんなら余裕で白金貨は超えるな」


「大金ですね」


「おう、超大金だぜ。美味い酒がどれだけ呑めることやら……二人みたいなルーキーがそう簡単に手に入れられるような金額じゃねぇんだが……そういえば、二人はヴァンパイアも倒したんだったか?」


「俺は召喚されたレッサーヴァンパイアを倒しただけですよ。ヴァンパイア本体を倒したのはラストです」


「はっはっは! そうだったのか……二人なら、そこまで貰ってもおかしくない金額かもしれねぇな」


解体士の考えは正しく、現にティールはブラッディ―タイガーを倒した報酬として白金貨数枚を貰っている。


まだまだ受けた依頼の報酬として白金貨を貰うことはないが、街の外に出て狩ったモンスターの素材を売った金額であれば、数日分を合算すれば余裕で届いてしまう。


「余計なお世話かもしれねぇが、リザードマンジェネラルの素材とスカーレットリザードマンの素材や魔石は二人が持っておいた方が良いと思うぞ。中々手に入らない素材だからな……それに、そう簡単に倒せるモンスターじゃないからな」


「はは、確かにそうですね」


「あぁ、その通りだな」


解体士の言葉に二人は完全に同意。


もう一度Bランクモンスターを倒せと言われて、絶対に倒し切れる自信はない。


「リザードマンジェネラルとスカーレットリザードマン、あとはコボルドジェネラルの素材は全部ください。それ以外は売却という形でよろしくお願いします」


「了解! それじゃ、持って帰るやつは今入れてくか?」


「はい」


必要な素材だけ亜空間の中に放り込み、後は全て冒険者ギルドに売却。


三体分とはいえ、かなりの量ではあるがティールの亜空間の中には余裕で入ってしまう。


(分かってはいたが、容量がとんでもないな。それに肉とかも売らずに入れるってことは……そういうことなんだろうな)


解体士のおっちゃんは改め、ティールの強さ以外の部分に感心した。

そして少し心配でもあった。


(まだまだ若い年齢にも拘わらず、大量のCランクモンスターとBランクのモンスターを倒してしまう実力……それに加えて大容量で時間停止? の空間収納スキル持ち……大手のクランに勧誘されるのも時間の問題か)


その時、いったいティールたちがどのような判断を下すのか、解体士のおっちゃんには分からない。


ただ……今まで多くの冒険者を見てきた経験から、何事もなく勧誘をスルー出来るとは思えなかった。


二人の将来を心配をしながら、おっちゃんは受付嬢に買取の量を伝えて素材の保存作業を始めた。

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