問題二つ

「そう……なのか?」


クール系のイケメンではあるが、ラストには恋愛経験が一切ないので、あまり理解では出来ない。


しかし己の考えがティールと同じではないということは解っているので、その考えは否定しなかった。


「まぁ……それにほら、付き合うってなると……色々と問題があるよなと思ってさ」


「問題、か。いったいどんな問題だ」


あまり冒険者に着いての知識は、その辺りの知識が足りてないラストにとって、何が問題なのかいまひとつ分からない。


「俺はこれから……というより、昔から冒険者になったら世界中を旅したいと思っていた。勿論、その旅の途中で好きになった人と一緒になれたら良いなとも思ってる」


「ふむ。では、ニーナとそこら辺で合う、合わないの問題が発生するということか」


「まずはそこだな」


「その口ぶりだと、一つだけではないのだな」


ニーナたちもどこかの街を拠点にし、活動するタイプの冒険者ではない。

一定期間が経てば、街を転々とするタイプ。


だが、ティールの旅は国内だけには留まらない。

ニーナたちも他国に興味はあるが、まだその段階ではないと考えている。


「あぁ、その通りだ。もし……もし仮にの話だぞ」


「仮にの話だな」


「仮に……お、俺がニーナさんと付き合えたとしてだ」


「おめでたいというやつだな」


「そ、そうだな。確かにおめでたい……って、そうじゃない!!! おめでたいんだがそうじゃない!!!」


私的にはおめでたい結果。

だが、本当にもしそんな結果になったとすれば……その後が問題となる。


「仮に俺がニーナさんと付き合えたとして……もしかしたら、ニーナさんたちのパーティーと組むことになるかもしれないんだ。まぁ、向こうの方が冒険者歴が上だから俺たちが吸収されるって感じだけど」


「……戦闘では邪魔になるな」


「おい、あんまりそういうこと言うな。周りに誰もいないからいいものを」


確かに言葉はあまりよろしくない。

しかしラストの言葉は決して間違っていない。


ティールは幼い頃から積み重ねてきた努力が完全に実り、それに加えて奪取≪スナッチ≫というある意味他者の才能を奪うギフトを得た。

これにより、現時点でも驚異的な戦力を持ちながらも、まだまだこれから成長していく。


そしてラストは言わずもがな、人族ではなく竜人族。

身体能力は全体的に人族よりも高い。


加えて、ブレスや竜化など殆どの人族が習得不可能なスキルを習得している。

竜化に関してはまだ制御できる時間が短いが、同年代と比べて暴走せずに活動出来る時間が圧倒的に長い。


ブラッディ―タイガーの素材から造られた斬馬刀とソードブレイカーを瞬時に実戦で扱えた点を考えるに、相当高い才能を有している。

となりに立つ者……マスターであるティールが自分よりも格上の存在であるという点が、彼の向上心に火を付ける。


この二人は冒険者……だけではなく、戦闘職全体を見渡してもトップクラスの将来性を持っている。


「だが、決して間違っていない。レッサーヴァンパイア程度であれば即座に倒せる力を持っているが、五人がかりでもヴァンパイア一人が相手では、勝つのは難しいのではないか?」


「それは……そうかもしれないな」


ラストの様にほぼ無傷で勝つのは不可能。

最悪、数人が重傷を負うか死亡……もしくは全滅という可能性もある。


「そうだろう。ニーナたちも現在の年齢を考えれば、まだまだ上に登れるとは思うが……俺たちと限界点が違う」


傲慢だと思われるかもしれないが、それは紛れもない事実。


ティールに関しては使える手札が延々と増え、尚且つ考える頭を持っているのでただ力をぶん回す馬鹿にはならない。


「戦闘に関しては俺が接近戦をメインで行える。ブレスもあるから、一応遠距離攻撃も行える。そしてマスターは俺以上に接近戦ができ、魔法の技術に関しては……宮廷魔術師? というのと同等レベルだろ。正直なところ、基本的には俺たちだけで戦闘の手札は揃っている」


「…………うん、そうだな」


褒められているということもあり、この言葉に関しては全く否定出来ないティールだった。

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