張り忘れてたが

グリーンウルフは比較的に脚が速いモンスターだが、ティールの素の身体能力には敵わない。


(同時に跳んできたのは良くなかったな)


タイミングは多少ズレているが、三体とも宙を跳んでいる。

反応速度も速いティールは咬みつきや爪撃を躱し、まずは一体の頭部に触れ……衝撃を送った。


「ッ!!??」


外を傷付けず、体内に衝撃を送るという攻撃が来るとは思っていなかったため、防ぐ間もなく撃沈。


攻撃を躱された二体は風の爪撃を飛ばす。

直接攻撃を軽々と躱され、ティールに対する警戒心が上がった。


「おっと」


攻撃方法を瞬時に変えたことには驚いたが、スライディングで風の斬撃を躱し、一気に接近。

そして地面から手刀を放ち、首をズバッと切断。


「グルっ!?」


二体の仲間が一撃で殺されたところを間近で見たため、さすがに衝撃を受けて声が上がってしまった。

慌てって後方に跳んで距離を取ろうとするが、距離を空けずに詰め寄られる。


「もう終わりか?」


グリーンウルフの風に対抗する為、腰から抜かれたロングソードには風の魔力が纏われていた。

そしてその刃が届く距離まで近付き、死を感じて爪に同じく風の魔力を纏わせてティールの攻撃にぶつける。


その結果……風を纏った手は見事に弾き飛ばされてしまった。


「もらった!!」


二つ目の爪撃を打つ前にロングソードが振り抜かれ、頭をスパッとバターの様に斬れた。


「相変わらず良い感じに動けてるな」


グリーンウルフの素材はそれなりの値段で売れるので、綺麗に三体の死体を解体していく。


「よし……こんなもんで良いか」


売れない素材は掘った地面に埋めた。

そして再度ヤドラスの遺跡に向かって出発……はせずに、その土の魔力を使っ即席の椅子を生み出し、腰を下ろして昼飯を食べ始めた。


「ヤドラスの遺跡まで一回も襲われずに行けるかも、なんて思ってたけど幻想に過ぎなかったな」


刺激がない旅路も偶にはありかと考えていたが、そんな幻想はあっさりとグリーンウルフの登場によって壊された。

ただ、ブラッディ―タイガーの様な強力なモンスターではなく、余裕を持って倒せる……言い方を悪くすれば、雑魚。


Cランクのモンスターが数体程現れたとしても、倒すのに大した時間は掛からない。


(スキルを封じる何かを使われたりしたら結構不味いとは思うが……さすがにモンスターがそんな技を持ってたりしないよな)


特殊なスキルを持つモンスターは存在するが、ティールが考えている様なスキルを持つモンスターは限りなく少ない。


ただ、マジックアイテムの中には対象の人物がスキルを使えないようにする効果を持つ物もある。

今後そういった者と遭遇して敵対するかもしれないと思ったティールは、とあるスキルが欲しいなと思い始めた。


(……こういったスキルがあれば、相手を弱体化するような技から身を守れるだろうな)


戦闘に関してはかなり役立つスキル。

しかし、それは魔法や武器などのスキルとは違い、頑張って身に着けられる能力ではない。


「それをあんまり過信するのは良くないだろうけど、手に入れば衝撃と同じく戦闘で大いに役立つだろうな……よし、そろそろ行くか」


再び走りながらヤドラスの遺跡へ向かって出発。


途中でいくつかの街を抜け、その日は外で野宿することにした。

普通なら安全面を考えて日が暮れる前に到着した街の宿屋で泊まるが、ティールは自分が生み出した酸のモンスターを信用している。


故に、街の外でテントを設置して中でぐっすりと寝られる。

空間収納がハイレベルなこともあり、夕食には困らない。


「……そろそろ、朝かな」


体内時計が正しければ、夜が明けて太陽が昇っている。

テントの中から外に出ると、酸のミニドラゴンが立っており、周囲には十体近くのモンスターがしたいとなって倒れていた。


「そういえば、昨日結界を張り忘れてたな……でも、ミニドラゴンがキッチリ倒してくれてたみたいだし、問題無しだな」


水で顔を洗い、早速魔石と売れそうな部位を解体していく。

朝から血生臭い場面に遭遇したが、その匂いにはもう慣れきっている。


使えない部分はいつも通り地面に埋め、朝食を作り始めた。

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