ちょっと待ってくれよ

「ブラッディ―タイガーが現れたから多少は減ってると思ったんだが……全くそんなことはなかったみたいだな」


森の中で探索を始めてから約三時間。

ティールに襲ってくるモンスターは決して少なくなった。


既に三十匹以上のモンスターがティールに襲い掛かった。


殺気を放ちながら歩けば弱いモンスターは襲い掛かって来ないが、特に雑魚との戦闘を控える気は無い。

そもそも殺気を漏らしながら歩けば、森の中で生活しているモンスターの殆どが襲ってこなくなる。


それはティールにとってつまらない状況なので、わざわざ楽しみを潰す様な真似はしない。


「グリーンキャタピラーって確か魔石以外にも買い取れる素材があったよな」


暇なときに本屋で買ったモンスターの解体本を見ながら、丁寧に捌いていく。


(やっぱり襲ってくるのはCランクのモンスターが限界だよな……そんなにホイホイとBランクのモンスターが襲ってきたら確実に死ぬんだけどさ)


Cランクのモンスターであれば身体強化系の力を使えば、無理することなく倒すことが出来る。

偶に厄介だと思うモンスターと遭遇することもあるが、酸を使ってしまえば大抵のモンスターには有効打になる。


ブラッディ―タイガーと戦った時も、酸を使っていれば有利に戦闘を進められた。


「って、おいおい……解体してる時ぐらいは来ないで欲しいんだけどな」


「「……」」


ポイズンスネークが二体、グリーンキャタピラーを解体しているティールを狙い、じりじりと距離を詰めて来る。


文字通り毒を持つ蛇。

ただ、普通の蛇とは違って体長は三メートルから、大きいのであれば五メートル。


モンスターらしく俊敏な動きが出来る。

そして毒で攻撃するだけではなく尾を使った打撃、加えて体全体を使った締め技も恐ろしい。


しかしその毒は斥候や弓使いに好まれており、毒袋から専用の毒を作って戦闘に使用する。


(面倒だな……サクッとやるか)


うねうねと体を動かし、点の攻撃であれば素早く躱す。

だが、線の攻撃を躱すのは難しく……爪撃の遠距離攻撃によって二体のポイズンスネークは三つに切り裂かれてしまう。


「……そういばしっかりと焼けば、毒は消えるんだったな。腹も減ってるし、ポイズンスネークの肉を昼飯にするか」


解体が終われば昼飯。

そう考えるとやる気が溢れ出し、解体の速度は一気に上がった。


そして数十分も経たずにポイズンスネークを含めた解体が終了。


売れない素材は地面に穴を掘り、そこに突っ込んで匂いがなるべく周囲に伝わらないように埋める。


「どれぐらい焼けば良いのか知らないけど……まっ、なるようになるだろ」


鑑定は極めていけば、対象の保存状態なども正確に解るようになる。


強火で焼かず、中火でじっくりと焼いていけば焦がすこともない。


(解毒のスキルを持っていれば一発なんだけど……まだ持ってないから、じっくり焼いていくしかないな)


ポイズンスネークは肉に少々毒が入っている。

全く耐性のない者がそのまま食べれば、毒に侵され……放っておけば死に至る。


だが、肉に含まれている毒はそこまで強くない。

通常の火でも十分に消毒することが可能。


ただ……仮に毒耐性のスキルを持っていたとしても、そのまま食べるのはお勧めできない。

毒耐性のスキルレベルが低ければ、腹を壊すことだってある。


街中であれば直ぐにトイレに駆け込めば良いのだが、森の中だとその場でする以外、方法はない。


森の中で用を足す……それはモンスターたちに隙を晒すというあり得ない行為だ。

パーティーメンバーが傍にいるなら話は別だが、ティールの様にソロで行動している者が冒険中に腹を壊すなど、自殺行為でしかない。


「……だいたいこんなもんか。毒も消えてるし、大丈夫そうだな」


安全を確認したティールがポイズンスネークの焼肉にかぶりつく。


「……なるほど、悪くはないな」


何も味付けをしていない状態だが、金を払って食べる価値はあると感じた。


(料理人ならもう少し何か味を加えるんだろうけど……俺は塩か胡椒で十分だな)


幸いにも調味料はある程度持っているので、味の変化を楽しみながら完食した。

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