街を救った英雄
ギルドマスターと話を終えてギルドの一階に戻ると、直ぐに一人の受付嬢がやって来た。
「ティールさん、もうお怪我は大丈夫なんですか」
「はい、多分浅い斬り傷や打撲の傷が殆どだったんで」
ブラッディ―タイガーとの戦いでティールが食らった傷は斬傷と打撲、それと骨に少々罅が入っていた程度だったので、治癒にそこまで時間は掛からなかった。
だが、強敵との戦いで神経擦り減らしていたことあり、ティールは目覚めるのにいつもより長い時間が必要となった。
(そもそも実戦で怪我を負うのだって久しぶりだったよな……というか、戦いが終わった直後に気絶するのは良くなかった)
今回は幸いには直ぐにガレッジたちが見つけてくれたお陰で、無事に街に帰ってくることが出来た。
だが、仮にガレッジたちの到着が遅く、その間にブラッディ―タイガーの血の匂いに惹かれたモンスターが現れれば、ティールの命はそこまでだったかもしれない。
「そうでしたか……あの、本当にブラッディ―タイガーを討伐して頂き、有難うございます。ティールさんが倒していなければ、街は無茶苦茶にされていたかもしれません」
「いや、その……俺は友人を助けたくて色々と夢中になって……あの、とりあえず頭を上げてください」
「ティールさんにとっては自分の思いの為に必死に戦ったかもしれませんが、結果として私達は救われました。本当に、ありがとうございます」
再度受付嬢が頭を下げると、その場にいたギルド職員達が全員揃って頭を下げた。
「そうだぞ、坊主が倒してくれなきゃ正直ヤバかったぜ!!」
「兄ちゃんはこの街の英雄だ、もっと胸を張れ!!!」
「主役が目を覚ましたんだ、今日は宴だ!!!!」
その場にいた冒険者達もティールの功績を称える。
ブラッディ―タイガーを倒そうと、多くの冒険者が集まった。
しかし本気のBランクモンスターが相手では、Cランク以下の冒険者が大勢集まったとしても、倒せる可能性は決して高くない。
上手くことが運び、倒せたとしても多くの犠牲が生まれる。
そんな相手を一人で冒険者が倒した。
それが例え、まだ冒険者になって半年も経っていないルーキーだとしても、十二歳の子供であったとしても……褒め称えるべき功績だ。
本当に一人で倒したのか疑う者もいた。
だが、ブラッディ―タイガーの死体と気絶したティールだけがその場に残っていた。
傷だらけのブラッディ―タイガーとティール……それを見れば誰がBランクモンスターを倒したのかは一目瞭然。
その実力に嫉妬する者はまだいるものの、現場に向かった冒険者の中でティールがブラッディ―タイガーを倒したという事実を疑う者はいない。
「ど、どうも」
「これから何かご予定はありますか?」
「いえ、特にないです」
「それならブラッディ―タイガーの解体は既に終わっていますので、ご覧になりますか?」
「そう、ですね……見させてもらいます」
ブラッディ―タイガーをソロで倒したので、素材は全てティールの物となる。
解体所まで案内され、中に入ると……そこには綺麗に解体されたブラッディ―タイガーの素材と魔石が並んでいた。
「おっ、その坊主が街を救ってくれた英雄か」
「あの……恥ずかしいんでその呼び方は止めてもらってもいいですか」
「ん? まぁ、構わねぇが……随分と謙虚なルーキーだな。坊主が達成した功績を考えれば、もっと胸を張って良いんだぜ」
「そうかもしれないですけど、俺としては倒すことに夢中だったんで、あんまりそういう感覚がないんですよ」
「……はっはっは!!! そうかそうか、こりゃ本当に大物みたいだな。まっ、とりあえず解体が終わった素材をじっくり見てくれ。売るにしても、装備の素材に使うにしても全部一級品だ」
Bランクモンスターの素材や魔石となれば、どれも実用性がある。
毛皮、牙、爪、眼球、内臓、肉、魔石、どれも価値にある素材だ。
ただ、大体の冒険者は武器の素材として使えそうな牙や爪だけを残し、あとの素材は売ってしまう。
しかし……亜空間の時間を止められる空間収納を持つティールは一味違う。
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