熱くなり過ぎている
疾風瞬閃と豹雷は既に属性魔力を纏って切れ味を向上させている。
並みの魔物であれば一撃で戦いは終わるだろう。
だが、相手はBランクのブラッディ―タイガー……ティールの全力の攻撃が紙一重で躱されてしまった。
(今のを完全に躱すのかっ!?)
完全に決まらずとも掠りはするかと思っていた一撃だが、全く当たらなかったことに驚き、思わず顔に出てしまった。
しかしブラッディ―タイガーもティールの斬撃を軽々と避けたわけではない。
躱せるか否か……一気に悪感襲ってくるような斬撃であった。
(これならどうだ!!!!)
二刀の魔剣から連続で斬撃刃を放った。
その数は全部で百近く……まさに集中砲火と言える連撃だった。
「……クソッ!!!!」
ブラッディ―タイガーは自身に飛んでくる斬撃刃を全て爪撃で迎撃。
爪撃のスキルレベルが六を超えており、前足には炎が纏われていた。
ただの斬撃刃よりも強力な風と雷の斬撃刃だが、その全てが炎の爪撃によって掻き消されてしまう。
(まだ魔力は大丈夫だ。でも……今の攻撃で全く血を流してないってのは流石に堅牢過ぎないかっ!?)
幾つか斬り傷を与えられるだろうと予想していたが、最悪の形で裏切られてしまった。
それでも全く収穫がゼロという訳ではなく、ブラッディ―タイガーの前足の骨はズタボロになっていた。
普通ならばその瞬間が好機になるのだが、再生のスキルを有しており、数秒程度で元の状態に戻ってしまう。
だが、そんな数秒の隙を逃す程ティールは甘くない。
直ぐに地面からウッドランスを発動していた。
体の下からの攻撃に咄嗟に反応するブラッディ―タイガーだが、やや反応するのが遅れてしまい、顎をかち上げられる結果となった。
(刺さらないのかよ、クソッ……生半可な攻撃じゃダメージを食らわないってことかよ)
ティールのウッドランスは甘い攻撃ではない。
オークなら腹を綺麗に貫く。Cランクモンスターの地を走るドラゴン、リザードの腹だって抉る……だが、ウッドランスはブラッディ―タイガーの体を抉ることはなかった。
全くのノーダメージという訳ではない。
顎に攻撃を食らったので頭に衝撃が響き、脳が揺れた。
その数秒の間にティールはブラッディ―タイガーの側面に移動し、二つの剣に槍状の魔力を纏わせて思いっきり突きを繰り出した。
この攻撃であれば流石のブラッディ―タイガーも皮膚が斬れ、抉れて大きなダメージを与えられる。
しかし咄嗟の行動の速さはティールに負けておらず、一瞬で右前足に火の魔力を纏って風と雷の槍を弾き飛ばしてしまった。
「なっ……嘘だろ、今のを弾くのかよ」
ティールの攻撃が全て弾かれ、不利な状況に見えるかもしれない……だが、二つの槍を弾くために行った爪撃はブラッディ―タイガーにとって痛手であった。
爪撃スキルを会得することで覚えられるブレイククロウ。そして火力を上げる為に咄嗟に大量の魔力を消費して轟炎とも呼べる炎を纏ったのだ。
ティールと同じく、まだ魔力に余力はあるが放たれた風と雷の槍は本人が思っている以上にブラッディ―タイガーにとって脅威であった。
しかしそこからはお互いに一歩も譲らない戦いが続いた。
だが、ティールにとって厳しい戦いだった。
ブラッディ―タイガーは炎を纏った前足で直接斬り裂くのは当然で、斬撃を放つ。
そして腕に回転を加えながら突きを放つ。
この遠距離攻撃が森で戦っているティールとしては無視出来ない攻撃なのだ。
木々に移れば火災となって余計な後始末が増える。
なので何としてでも相殺しながらも攻勢に出る。
そして戦いが進むにつれてティールとブラッディ―タイガーの体には斬傷が増えてきた。
出血多量で意識を失ってしまう様な傷ではないが、いつ抉り焼くような爪や牙が己の体を正確に捉えるか解らない。
(……ふぅーーーー、俺の攻撃が効いていない訳じゃない。当たりさえ……当たりさえすれば倒せるんだ)
本来なら酸や拘束などのスキルを使えば隙を突いて上手く戦いを運べるのだが、ティールの心はいつもと違って熱くなり過ぎている。
上手く倒す、ではなく絶対にぶっ倒すという気持ちが強く溢れている。
だが、そんな熱くなる過ぎているティールでもナイスなアイデアが脳裏に浮かんだ。
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