悩む提案
「なるほどな、なぁ……確かにそれは人によっては踏み込まれたくない領域だな。ただ……あれだ、そんなにも凄いのか?」
あまりズケズケと踏み込んではならないと自分でも解っているのだが、それでもティールの様な異才を放つ冒険者が持つギフトというのはやはり気になってしまう。
「そう、ですね。凄いという言葉は当てはまります。俺としては、かなり恵まれたギフトを得たかと」
「そうか……よし、これ以上は訊かないでおく。そのギフトを持っていようが持っていまいが、お前が強いという事に変わりは無いからな」
ベテランの域に達する戦闘経験数、一般的には考えられない投擲による遠距離攻撃の威力。
メイン武器は長剣であれど、体術やその他の武器の扱い。魔法の腕前に関しても並ではない。
だが、そこに奪取≪スナッチ≫の力が有ると無いとでは話が変わってくる。
それ程までに奪取≪スナッチ≫の力は他人には真似出来ないオンリーワンの能力だ。
「偶にそういう奴がいるってのは聞くが……確かにギフトで聖剣術を得た奴とかは本人の意志関係無しに、国が保護するってのを聞いたことがあるな」
「そんな事が……でも、とある貴族や教会とかがでは無く、本当に国がそれを行っているのなら……止めることは出来ませんね」
国の意見に逆らうという事は、その国暮らしていけなくなる事に等しい。
(当然、五歳の子供を親から奪おうとするのだから、それ相応の何かを渡すのだろうけど……それに対して親がどう反応するのか、そしてそれを知った子供は親をどう思うのか……そこら辺を国は何にも考えていないんだろうな)
バースの話が本当かどうかはティールも解らない。
だが、その話が本当であればティールが国から狙われてもおかしく無い状況に遭遇する可能性がある。
「まっ、噂だけどな。にしてもパーティーが組めないってなると……ダンジョン探索はちょっと厳しいな」
「いや、別にそんな事は無いですよ」
「でもよ、ダンジョン探索をするなら中で野営することになるのは確実だぜ……もしかしてだが、そういう事情もなんとかなるのか?」
ティールが持っているギフトがどんな内容なのかは知らないが、それでも利便性が高いというのはティールの反応から解った。
「……一応、なんとかなると思いますよ」
「マジでか。けどよぉ、やっぱり一人で潜るのはなぁ……お前が自分の秘密をどうしても他人に話したくないのなら、戦闘用の奴隷を買うって手もあるけどな」
「奴隷、ですか」
リースから奴隷という存在は聞いたことがあるが、実際に見たことはない。
ただ、ティールは奴隷を持つという事にあまり良い印象は持っていなかった。
「その顔は奴隷を買うのに抵抗があるって感じだな。そもそも冒険者が奴隷を仲間にして活動している例は少ないけど、いない訳じゃ無いぞ」
「……そうなんですね。てっきり買うのは貴族や商人ばかりかと思っていました」
「基本的に値段が高いから貴族や商人が買う場合が多いが、稼げば冒険者でも十分に買えるぜ」
奴隷は銀貨数十枚から白金貨数枚の値段まで幅があり、偶に銀貨数枚程度の値段の奴隷もいる。
容姿や奴隷が持つ能力によって値段は変化していく。
戦闘用の奴隷に関しては確かに値段が高い場合が多いが、者によっては安く手に入る場合もある。
「ん~~~~……正直、悩みどころですね」
冒険者として恋愛的な事情も求めているティールにとって、傍にいる奴隷が吉と出るか凶と出るかは予測出来ない。
(仮に奴隷を傍に置くとしたら、男にしろ女にしろ容姿の良い人が好ましい……でも、それが今後の冒険に、人生にどう影響するのか……全く解らないな)
買うか否か、悩む内容だがそもそも今のティールにはそこまで上等な奴隷を買えるほどのお金がない。
「一応頭の片隅に置いておきます。とりあえず、今は冒険に集中したいと思います」
「そうか……お前にとっては重要な事だからな、ゆっくりと考えて結論を出すと良い」
バースとの会話はそこで終わり、ティールは店を出て早速刀に慣れるための実践、使っていなかったスキルの確認に向かう。
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