第三部 第十話 国王との謁見 その3
「まずは第一功、皇燈第八神将。前へ!」
「御意」
国王に呼ばれ、燈が一歩前へ出る。
「やはり燈殿下が第一功か!」
「天斬剣が強奪された際はどうなるかと思ったが、よもや……」
「さすがは最年少で十二神将に選ばれた御仁ですな」
おおおおお、と群臣たちからどよめきが起こり、謁見の間が少し揺れる。
「そなたの功績は先ほど申した通り。また、決勝戦にて乱入した妖への的確な対処により、国民の死傷者をゼロに抑えた。まさしく十二神将にふさわしい活躍であるとし、第一功を授ける。ご苦労であった」
「ありがたく」
燈は国王の前で膝をつき、国王から宝石のついた短剣を受け取った。
「燈第八神将には金百封を授ける。他に何か望むものはあるか?」
「では、私を再び対天主極楽教捜査本部に加えていただけないでしょうか」
燈は片膝をついたまま、謁見の間に響く声で告げた。
「三か月前の天落作戦にて教主を捉えて以降、対天部の規模は縮小傾向にあります。しかし、
「うむ」
「つきましては、私を再び対天部に所属する許可をいただきたく」
宗次郎が少し顔を上げると、燈を見つめる国王はどこか悲しそうにしていた。
燈が天主極楽教にこだわるのは、『初代国王を超える王になる』という夢の為だ。それは妹である眞姫と交わした約束でもある。
だが、父親である国王はそう思っていない。燈の母、穂花がテロによって殺され 眞姫も体を弱くしてしまったため、復讐に駆られていると思っているようだ。
燈の復讐を止めたいが、天主極楽教は放って置けない。そんなもどかしさを含んだ声で、国王は認めようとうなずいた。
「国王の名において、皇燈第八神将を対天主極楽教対策本部に配属することを決定する。第四神将、母良田巌と共に励むがよい」
「ありがたく」
「聞いての通りだ。天主極楽教は我が国を蝕む病原菌である。速やかに排除すべく、諸卿らも惜しみなく協力するように」
最後に国王が謁見の間全体に呼び掛け、群臣たちが平伏する。
天主極楽教は皇王国における最大のテロ組織だ。どうじに、以前燈がとらえた教主は首都に暮らす貴族だったという。
━━━つまり、この中に甕星と繋がっている奴がいる可能性も……。
「続いて第二功、雲丹亀玄静!」
「御意」
疑念が渦巻くよりも先に、宗次郎の隣にいた玄静が進み出る。
「玄静殿が第二功か」
「皐月杯での決勝は見事な戦いぶりでしたからな」
「私はてっきり、彼は雲丹亀家始まって以来の出来損ないと思っておったのですがねぇ」
燈のときと同じく群臣がざわつく。その反応は喜びというより、意外な反応に近い。
「長き皐月杯の歴史の中で、術士として初めて出場。並み居る強豪を押しのけ、決勝では剣士である穂積宗次郎とごかくにわたりあった。此度の決勝戦はまさに歴史に残る、伝説の戦いといえよう。妖の乱入においても、討伐のきっかけを作り出す見事な働きを見せた。次期雲丹亀家当主、そして陸震杖の主としてふさわしい活躍であるとし、第二功とする」
「ありがたく」
玄静も燈と同じように片膝をつき、国王から宝石のついた短刀を受け取った。
「そなたには金十封を授ける。他に望むものはあるか? 土地であれば
「……」
玄静は膝をついたまましばらく考え込んだ。
「では陛下。治水工事の許可をいただけないでしょうか」
「ほう?」
「雲丹亀家の領地には
玄静は謁見の間に響くほどの声を出している。中庭が見える謁見の間は声が響きにくい。決して大声ではないのだが、通る声をしていた。
「
「よかろう。光翠川の治水工事の許可を与える。必要ともあらば援助も出そう」
「ありがたき幸せにございます。陛下」
もう一度深々と頭を下げる玄静。
玄静は非常に面倒くさがりな性格をしている。皐月杯が終わってからはそうでもないが、それまでは宗次郎を監視する役目をことごとくサボっていた。
領主として最低限の責務を果たして、あとはのんびり暮らしたい。そう発言する通り、自分の領民のために行動しているわけだ。
━━━こういうところはしっかりしてるよなぁ。
「では最後に、穂積宗次郎」
完全に油断したところで、国王に名前を呼ばれた。
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