第5話 大柄な男

さて、今18;00で晩御飯までまだ時間がある。その間に温泉に浸かることにしよう。俺はパンツとバスタオル、それとあらかじめ部屋に置いてあった浴衣を持って浴場に向かうことにした。スリッパを履き、部屋の鍵を掛け、浴場は1階で今俺がいる部屋は2階、そこまで向かうため階段を降りる。その階段を降りる途中のことであった。反対側、階段を上がってくる人間に驚愕した。その人間は信じられないほど大きな図体の大柄な男であった。横幅は俺を尺度とすると俺3人分。身長は俺が175センチメートルだがおそらく彼は210センチメートルあるんじゃないか?それにこれほど大きいと単に太っているのではないかと一瞬思ったが、彼の場合脂肪の揺れがないので全て筋肉のようだ。それに浴衣の襟の隙間から見える肌には傷跡があった。何者なんだ彼は?まさかヤクザの一員という可能性もある。頭もスキンヘッドで目つきも鋭いしな。ここはネットでも載っていない秘境だからヤクザの人間からしたら都合がいいのかもしれない。そんな憶測をしていても男とすれ違うので俺はできるだけ目を合わせないようにした。3メートル、2メートル。俺は下を見たまま階段を降りる。だが、勘違いではなく間違いない。視線を感じる。男が俺のことを凝視しているのがわかる。その視線はあまりにも殺意に満ちていて俺の本能が危険を察知し、体が震え冷や汗が流れた。なんなんだ?この無言の威圧感は?とてつもない恐怖で今にも体がすくみそうだが、おかしな行動をしたらそれはまた危険なのでなんとか平静を装う。そして男は階段を上りきり、俺も階段を降りきった。それから階段から見て死角になる廊下に出た途端、俺は腰が抜け、呼吸をすることを忘れていたのか息を荒げた。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ・・・」

そのまま壁に凭れ掛かり頭の整理をする。こんな経験初めてだ。初めて見た人間にこれほど恐怖を感じたのは。あの男は危険すぎる。なぜだか俺の脳みそが勝手に判断した。

「いや、待て待て!」

俺は自分に言い聞かせた。先入観だけで人を判断するのはよくない。もしかしたらとても頼もしい警察官の可能性だってあるわけだ。そうだ。そうに違いない。

俺は性善説的な感覚の理性で自分の本能による理解を強引に折り曲げた。

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